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6月20日 イケダンの日
「旦那さん、スポーツ選手だったよね」
昔よく会社の同僚から言われたものだった。これにつき、社内で何か私が大きく公表したわけでもない。けれど、近しい同僚に言い、飲み会では上司に話し(その上司は格闘技好きだったのだ)、写真を見せ、格好良いでしょう、などとにやついて話すうちに、私を知る人の多くがその事実を知っていた。
ただ、まぁ、スポーツをやっている彼が格好良いのはその通りだが、その実、ふにゃりと笑ったその顔のかわいらしさを知る人はほとんどいないのだった(当たり前である)。
そしてその笑顔は健在で、私や子供達に振りまき続けて早57年。すでに穏やかなおじさんになっている。今も昔も私の中の彼は変わらず格好良くて優しい夫である。そのため、彼のことを聞かれて答える私の様は、昔と一つも変わらないのだった。
「俺、剣道部に入ろうと思う」
長男の秦が高校の部活を決めたらしく、それを教えてくれた。高校から剣道か。
「うん、良いと思うけどさ、きっと周りは剣道経験者の人ばかりじゃない?気後れしてつらい思いしないかな」
私自身、小学校から高校の途中まで剣道を続けていたため、初心者と経験者の違いというものはそれなりに大きくて深いものだと言うことを知っているつもりだ。やりたいのならもちろん歓迎する。ただ、その事実を伝えておかなくてはならない。
「するかもしれない」
秦はそういって眉間にしわを寄せる。そうして続けた。
「気後れとか、焦りを感じる、かも知れないし、感じないかも知れない。それはわからない。前者な気はするけれど。でもそういう感情があるからと言ってやりたい気持ちはまた別だとも感じているから」
そういうと、意外にすっきりとした顔でそういった。
「そっか、じゃあ問題ないね。どうかな、あなた」
それまで静かに聞いていた夫に顔を合わせて聞いてみる。
「じゃ、俺も入るわ」
スパっとそう言った。
「え?秦と一緒に?」
高校の部活だと言っているのに、そんな訳がない。まして彼は剣道などしたことはないはずだ。
「地元の剣友会に入るんだよ」
「おお!いいじゃん父ちゃん一緒にやろうぜ」
「ええっ。何を二人とも急に言ってるのよ。あ、由樹、ちょっと聞いてよ」
部屋からリビングに来た次女に話を伝えると、まさかの反応が返ってきた。
「いいじゃん!秦はまあともかく、お父さんも久々に運動したらいいのよ。剣道って結構高齢のかたもやっている印象あるから今からでも充分時間あるでしょ」
すごくスムーズに後押しをしており私は一人驚いた。
「そう考えると、父ちゃんより40歳も下の俺なんだから、気後れも焦りもいらないよね」
なんと楽観的な。どこかくらくらしながらも、夫のその顔を見て仕方がないなと私は笑うしかないのだった。
出会ってから30年近く経つ。格好良さや優しさ、その笑顔は昔と変わらないそれだけど、彼のこんなワクワクしてまぶしい表情は久々なのだった。
「もー、じゃあ、私もやりたい」
私はついでに手を挙げる。すると聞いていた由樹も同じく手を挙げた。
「私も二十歳になった記念でやってみようかな」
いいねいいねと少年のようにはしゃぎ始めた夫がやっぱり可愛い。
こうなったら長女にも話して家族で始めようかな。
またもうちの夫が体を鍛えてイケダンになるのかと思うと、私もどうしたってワクワクしてしまう。
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【今日の記念日】
6月20日 イケダンの日
アンチエイジングのリーディングカンパニーを目指す株式会社ポーラが制定。女性だけでなく男性の「美しくイキイキとした生き方」を応援したいとの想いが込められ、イケてる男性、イケてる旦那さんから「イケダンの日」と命名。日付は男性や旦那さんのシンボル的な記念日である「父の日」にちなんでいる。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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