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12月31日菜の日

 なんだか不調だなと思ったのは今週に入ってからだった。

 どこここが痛いと言うわけではないが、とにかく全体がぼんやりとしているようである。例えば、朝起きてすぐにため息が出たり、歩いているときに、自分が思っているよりも足があがっていなかったり、そのせいで蹴躓いたり。

 時々咳も出るし、若干のどが痛かったりもする。頭が痛い日だってあるから、単純に風邪なのかもしれないけれどそうじゃないかもしれない。

 だから私は、不調だなぁと思っては眉間にしわを寄せるのであった。

「疲れているんじゃないの?」

 母と電話をして軽く現状を伝えると、そう言われた。まぁ確かにそれはあるかもしれないけれど、そんなに自覚はない。

 二年ぶりに職場復帰をしてみれば世の中の変化に伴い職場環境も変わっていて、浦島太郎状態である。仕事の勘(そんなものは元々ないのかもしれないけれど)は3ヶ月経っても戻らない。そのせいか、仕様もないミスをする。ちゃんと作成したつもりが抜けていたり、理解が間違っていたり、日々心配事で頭の中が埋め尽くされる。

 だから私は、嫌だなぁと思っては眉間にしわを寄せるのであった。

「疲れているのよ」

 母は再度言う。

「だから元気を出そうと思って日々肉を食べているんだけどね」

 時々は魚も、と付け加えながら言う。

「野菜が足らないのよ、野菜が」

「えー。野菜食べても元気にならない気がする」

 私が軽く反抗してみせると、母は軽く笑った。

「昔から野菜が苦手なだけでしょう」

 私は密かにぎくりとした。

「まず、人間には太陽の光が必要なのよ。会社か家の中でばかり仕事をしていたらそれが摂取できないでしょう。その太陽の光を存分に浴びて栄養素を蓄えて育つのが野菜なのよ」

 そもそも野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維なんかの体にとって不可欠な栄養素が豊富である。抗酸化作用があるものも多いので病気を防ぐのだと母は続ける。

「でも私どちらかというと今はメンタル面が弱っているような」

「『健全な精神は健全な身体に宿る』ってよく言うでしょう。まずは健全な身体にならなきゃいけないのよ」

 そう言われ、確かによく聞くなと私も思う。

「じゃあ私の好きな小松菜を食べるようにするよ」

「1つじゃなくていろんな種類を食べなさい。それもできれば350g、ご飯2膳くらいの量かな。それぞれに栄養素が違うんだから、いろんな野菜を食べればそれだけ色んな栄養素がとれるでしょ」

 良い年をした娘に今更何を教えているのかと母は笑った。

 良い年をしていても、娘は娘であり、いつまでも父と母の子供なのだ。野菜が大事だなんて重々承知していても、甘えたいときがある。

「どうしてもつらくなったら帰っておいで。でもまずは今年ももう今日で終わりだから、身体を整えて新年を迎えましょう」

 よいお年をと言い、母は電話を切った。私も同じ言葉を返す。

 不調の数だけ野菜を食べるなら、果たしていくつ必要だろう。そんなことを思いながらも、頭の片隅では遠方の家族に会えないことに寂しさを思う。

 今日は母がよく作ってくれた豚バラと白菜たくさんの鍋でも食べて温かな新年を迎えよう。

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【今日の記念日】
12月31日 菜の日

「1日5皿分(350グラム)以上の野菜と200グラムの果物を食べましょう」と呼びかけて、食育活動などを行っている一般社団法人ファイブ・ア・デイ協会が制定。野菜中心の健康的な食生活を広めるのが目的。記念日名は野菜の「菜」からで、日付は31を野菜の「菜(さい)」と読む語呂合わせから毎月31日に。月末を「カラダの決算日」として継続的、定期的な取り組みを行う。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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