見出し画像

1月24日ブルボン・プチの日

 去年はいろいろと我慢が多かったなぁとふと思う。

 昨年の春先から感染症ウイルスの流行が言われ外出自粛を余儀なくされた。

 昨年の春はいつもの桜祭りにも行っていない。

 夏、海はもちろん夏祭りにも行けなかった。

 秋の子供の運動会は保護者の観覧がNGだった。

 冬の子供の幼稚園発表会も中止になってしまった。

 そして新しい年になった今年のお正月は、夫の実家にも私の実家にも帰省はしなかった。じいじばあばに会えない子供たちは寂しがり、久々に両親に甘えたかった私も(きっと夫も)悲しんだ。

「去年は我慢が多かったね。さて、今年はどうなるかねぇ」

 私が温かくした麦茶をすすりながら夫に聞くと、子供を膝に乗せたままうつらうつらと眠りかけていた夫がゆっくり目を覚ます。

「どうなるかねぇ」

 ぼんやりとしたオウム返しに私は笑った。

 そう、笑ったのだ。

 本当にどうなるのかと心配でたまらないのであればきっと私は笑えなかった。けれど穏やかな彼の様子が何だか大丈夫なのではないかと思わせた。

「去年は我慢もしたけど、なんだかんだ充実していた気がするよ」

「・・・・・・例えば?」

 私が聞くと、彼はようやく目をパチリと開き、内側に抱く子供の頭を撫でながら答えた。

「外出自粛が言われた春はさ、君と子供とたくさんの時間を家で過ごすことが出来たよ。地味に嬉しかったのはお菓子の家を作ったことだね」

「あ!楓もちゃんと覚えているよ!楽しかったよね、また作りたいなぁ」

 家で出来ることをたくさんやろうと言って、種類の多いブルボンプチでお菓子の家を作ったのだ。それは楽しかったし、お菓子の家を作ってみたいという私の小さな夢も叶った。

「夏は結局お祭りもなかったから、ベランダでミニプールに水を張って足をつけながら、ビール片手に焼きとうもろこし!」

 余程おいしい思い出なのか、何とも嬉しそうな顔をする。
 私はその日を思い出し、気づく。

「焼きとうもろこし味のブルボンプチ、ね」

「えんどうまめのプチもね」

 思い立ってなんちゃって縁日を開催したのだった。近くのコンビニでお祭りっぽいお菓子を買って。

「秋は食欲の秋とか言ってさ、プチシリーズ24種類全部食べ比べしていたし、この冬は冬で・・・・・・」

 そこまで言うと、膝に座っていた楓をどかせて夫はその場を立った。台所に向かい、がさがさと音を立ててはすぐに戻って来る。その手にソレを持って。

「ふふふ、これこれ。キムチ鍋のプチ!」

 新発売のプチを持ち出し満面の笑みである。

「楓はまだキムチ鍋を食べないし、君も妊娠中だからあまり刺激のあるものは避けておきたい。だから僕はこの冬、このキムチ鍋で乗り越える!」

 何の決意表明だかわからない宣言をし、なぜだか楓もそれに同調している。

「なんか、思い返すと去年はプチに助けられた1年だったね。24種類もあれば色々使えるものだ」

「ほんとだね、プチ様様だよ」

 私がお腹をさすりながらそう言うと、夫も楓もお腹に触れた。

「プチシリーズにボーロとか出ないかな」

 割と真剣な顔で夫が言うので、私も笑った。
 自粛プチ生活も幸せなものである。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 

【今日の記念日】
1月24日ブルボン・プチの日

新潟県柏崎市に本社を置き、数多くの人気菓子を製造販売する株式会社ブルボンが制定。同社が1996年から販売する「プチシリーズ」は手軽に食べられる大きさのビスケットや米菓、スナック類など24種類。そのバラエティ豊かな品揃えと、色とりどりの細長いパッケージで人気の「プチシリーズ」をさらに多くの人に楽しんでもらうのが目的。日付は24種類にちなんで毎月24日に。同社は「ブルボン・プチの日」の愛称を「プチの日」としている。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?