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3月12日育児の日
「ママ、怒ってる?」
最近3歳の娘、『蘭』が良く言うのだ。怒っている人に怒っていますかなどと大人は聞けない。だから、聞かれる度に私は毒気を抜かれてしまう。
私が怒る理由が大したことのない場合にはそれで私も笑って終わるのだが、例えば怒る理由が彼女にとって危険であるためだったり誰かを傷つけてしまうようなことであれば、なぁなぁで笑って終わらせることができない。だから私は少し怖い顔を続ける。
でも、私の注意はなかなか伝わらない。
娘は私の顔を覗きこみ、くしゃりと顔を緩める。
「蘭ちゃん、痛くないよ」
ソファの背もたれの上から飛び降りた。私がやめさせるより早く彼女は飛んだために支えることもできなかった。身長が100cmもない彼女からすれば身長以上の高さであるソファは十分に高所だと思う。たまたま柔らかいマットの上に着地できたから良かったものの、あと30cmもずれていれば固いフローリングの上だった。足首を捻ったり、バランスを崩せば頭を打つこともある。危ないし、危険、痛いと言うことを私は教えたいのだ。
「でもね、こんなに高いところから飛ぶと、転んで痛いってすることもあるんだよ。今日は蘭も痛くなかったけど、次に飛んだら痛くなるかもしれない。だから止めようね」
私はできるだけ丁寧に、かつ想像できるようにと子細に説明する。時には身振りや手振りも加えて、分かるようにと注意を払って教えたつもりだ。けれど、彼女の口から出てくるのはそんなことではないのだった。
「うん、ママ怒ってる?」
まだ3歳児だ。私の言うこともなかなか理解できないだろう。それはいくらかみ砕いて伝えてもそうかもしれない。例えば理解はできるけれど、聞こうとしていない、とか。
私は軽く息を吐き、口元を緩める。
「大丈夫、もう怒ってない。でも」
だからといって笑顔にもしない。
「でも、蘭にちゃんと教えたいの。危ないことと痛いことはママちゃんと言わなきゃならないの。そうじゃなきゃ、蘭が痛いってなる。そしたらママとても悲しいよ」
先日児童館に行ったとき、「YOUではなくIで伝える」と聞いたので、ちょこちょこそうして伝えてみるのだが、効果のほどは分からない。
「ママ悲しいの」
「うん、蘭ちゃんが痛いってしたらママ悲しいよ」
ちょっと効いているのか。私はここぞばかりに続けた。
「ママが痛いってなったら蘭ちゃん悲しい?それはママも一緒だよ。蘭ちゃん痛いってなったら、ママが悲しい」
私が妙に達成感を感じながら言うと、蘭はニンマリと笑った。
「ママ、一緒だねぇ」
違う、そうではないのだ、娘よ。これでは怒っていた意味がなくなってしまう。
「ママと蘭ちゃんは同じだから・・・・・・」
何かに気づいたようで、彼女はまた表情を変えてみる。眉間にこれでもかというほどの皺を作り、目は細く、頬をプーッと膨らませる。
「蘭、怒っているの?」
思わず私が聞いてしまった。
「怒ってる!蘭はおにさんなの!」
私よりも怖い顔で彼女は鬼になっていた。
こうして、今日も私の注意は伝わらない。
彼女に伝えることも重要だが、それより何かあったときに急いで駆けつけられるよう、私の脚力とスピードを鍛える方が賢明かもしれない。
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【今日の記念日】
3月12日 育児の日
社会全体で子育てについて考え、地域が一体になって子育てしやすい環境づくりに取り組むきっかけの日にと、兵庫県神戸市の株式会社神戸新聞社が制定。日付は「育(いく=1)児(じ=2)」と読む語呂合わせから毎月12日とした。株式会社神戸新聞社は第9号「記念日文化功労賞」を受賞。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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