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2月4日ぷよの日

「次は赤か黄色がくるといいね」

 そう言っていると画面の上からねらい通りの赤がやってきた。喜んでいると今度は黄色も続けて落ちてくる。

「やったぁ!これで幸せになれる」

 両手を挙げて喜んだ瞬間、次々といろんな色のそれが降り落ちてきて、気づいたときには制御出来ずに上の上まで詰まってしまった。

「GAMEOVER」

 僕は呆然と画面を見る。


 と、言う夢を見た。

「なにそれ。懐かしいな」

「でしょ、あれだよあれ、ぷよぷよ」

 ファーストフード店で同僚と昼休憩に出ていた。彼も36歳だから大体同じような遊びを経験しているはずなので気持ちわかってくれると思っていたのだ。

「なんで赤と黄色が来たら幸せになれるの?」

 彼がもっともな質問をしてくるが、僕は当事者にも関わらず全く理由がわからないのだった。

「なんだろう、ずっとぷよぷよやっていて赤と黄色が全然来なくてやっと来たから喜んだ、とか」

 彼は僕が言うことを吟味するように考える素振りをし、コーヒーを一口飲む。

「でも、赤と黄色が『来た』からやっと幸せになれるって言ってたよね。確かになかなか来なかったんだろうけど、だからってそれが来て消えるだけで幸せとは表現しないよなぁ。赤と黄色が消えて幸せになるって何だ」

 彼がそう言った直後、何か気づいたようでポケットからペンを取り出すと、食べ終わったハンバーガーの包装紙の汚れていない面を出して何か書き始めた。

「例えばさ、君、この間お客さんが注文解約しちゃったでしょ」

「う、そ、そうだよ。でもそれは」

「うん、昨日解約も取りやめになって元通りになったんだよね」

 そうそう、と僕が頷くより前に、彼は続けた。

「それと部長と連絡の行き違いで注意されていたでしょ」

「でもそれは」

 再び僕が答える前に彼が言う。

「部長の勘違いだったよね。それも分かったのは昨日」

 そう言うと、彼はその二つを『解約』『連絡』と書いてまるで囲った。一つには赤、もう一つには黄色と続けて書く。

「まぁ色はどっちがどっちでもいいんだけどね。カテゴリ分けだね、きっと。赤が社外の問題、黄色が社内の問題。で、消えて幸せになれるのはストレスだ」

 ストレス?と言われるとそんな気もし始める。

「これまでにもいくつかあったのかも知れない、同じ色のストレス。で、昨日はそれが晴れて揃って消えたからすっきり、幸せになれた」

「それ、僕の人生ゲームみたいじゃん」

「うん、そう。ゲーム。でもそう考えると色々気も楽かも知れない。ストレス3つ溜まっても、次も来いって思えるかも」

 彼が冗談だと笑いながら言う。僕はあながち冗談でもないのではと少しだけ考えてみる。そして気づく。

「じゃ、じゃあ幸せが溜まったら消えるってことじゃ」

 僕が怯えてみせると、彼は笑って言う。

「いや、ぷよぷよやれってことじゃない?」

 ああ、なるほど。そう言う暗示ね。帰りに家電屋さんに行こう。最新のゲーム機本体とぷよぷよ買ってすっきり幸せになろうっと。


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【今日の記念日】
2月4日 ぷよの日

多くの優れたソフト資産を持ち、その開発力で世界的なゲームメーカーの株式会社セガゲームスが制定。自社の国民的な人気ゲーム「ぷよぷよ」シリーズの魅力を多くの人にPRするのが目的。2と4で「ぷよ」と読む語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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