1月13日一汁三菜の日
「なんてこった」
知らなかった。一汁三菜の三菜に漬け物はカウントされないのか。
「えー、家庭科の先生が教えてくれた気がする」
同僚の相馬さんが言う。私の高校の時の先生はどうだっただろうかと頭に浮かべてみたが、驚いたことに顔も名前も浮かばないのであった。
「一汁三菜って守っているんですか?」
今度は逆サイドから10歳以上年の離れた後輩の三国君が言う。彼はランチにお弁当を持ってきている。とても丁寧な見た目と味のお弁当であり、少し憧れてみたりする。
「まぁ守っていたつもりが今破られたわけだよね。つまり、守れていなかったということで」
昨日のおかずは何だっけ。肉じゃがと卵焼き、味噌汁とご飯。野菜がないなと思って慌てて買ったのがおつけものであった。同じようにして、野菜やら品数やらが不足していると思えばおつけものを足して食卓に出していた。赤や緑、オレンジや黄色の漬け物は見た目にも随分と助けてくれていたのだが、ふと目にしたネットの記事で副菜ではないので一汁三菜には含まれないと記載されていて驚いてしまった。
「人それぞれだと思いますけどね」
三国君が言う。まあ、それは何にだって言えるけれど、と私は思って彼の言葉の続きを待ってみる。
「例えばザワークラフトを副菜とするか漬け物とするかって、個人の感じ方な気がしますよ」
「ザ、ザワークラフトね」
柴漬けとかではないのかと若干怯みながら、確かにそうよねと思う。「なんだっけドイツかどこかの漬けものよね。ん?酢漬け?」
相馬さんが言う。
「そうですそうです。なんか漬け物だと副菜にならないけど、酢漬けって言うと漬け物ってわけでもなさそうだから副菜にはなるんじゃない?とかって考えられるんじゃなかろうかと」
そう言えば三国君の今日のお弁当には大きなソーセージが入っていたことを思い出す。ドイツブームなのかも知れない。
「で、近藤さんは漬け物をやめて何作ろうかと悩んでいるわけですか」
相馬さんがまさにそれを言い、私はうなづいた。
「漬け物でいいじゃない」
「え、だって漬け物だけだと」
「考え方なんて自由だし、そもそも一汁三菜って栄養がバランス良くとれていれば別に二菜でも一菜でもいいんだよ、多分」
相馬さんが言うと、三国君も大きくうなづいた。
「何作ろうかなぁと悩んで悩んで頭を使って疲弊するくらいなら、三菜の一つを飴玉にでもして失った糖分を足せば良いと思いますよ」
それくらい自由なもんです。三国君が言って、相馬さんが笑う。
「食卓に飴玉ってシュールだわ」
でしょう、と言ってニヤリと三国君が言う。私が苦笑しているのがばれたのか、少し顔を元に戻して彼がまた口を開いた。
「味噌汁を具だくさん味噌汁にしてしまえば一汁何菜にでもなると思いますよ」
ほんとに、と付け加えて笑う。
「でも結局、食卓に何菜もあるより、笑って元気に漬け物でも食べることの方が重要です」
そう言われ、妙に安心したので、とりあえず今日は豚汁にしようかな。私が半ば決めていると、彼はまた少し笑う。
多分一番の副菜は笑顔だと思いますよ。
そう言って三国君は大きな飴玉をくれたのだった。
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【今日の記念日】
1月13日 一汁三菜の日
和食の素材メーカー(フジッコ株式会社・ニコニコのり株式会社・キング醸造株式会社・株式会社はくばく・株式会社ますやみそ・マルトモ株式会社)で構成する「一汁三菜 ぷらす・みらいご飯®」の6社が制定。いろいろな料理を組み合わせて、さまざまな栄養素がバランスよくとれる「一汁三菜」という和食のスタイルをこどもたちにつなげていくのが目的。日付は13が「一汁三菜」の読み方に似ていることから毎月13日に。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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