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私が「本当に」やりたいことと向き合うStory⑥<同期と精神科に助けられる話>

休職1日目は、いつもよりだいぶ早起きだった。
同期が誘ってくれたシャボン玉飛ばし。なんと朝7時集合だったのだから。

朝起きるのはかなり得意な方で、しかもこの日は秋が近づいてきたことが窺えるような気温と天気。久々に清々しい気持ちで公園に向かった。

私と同じエリアには、私の他に2人の同期が配属されていた。2人とも、インターン時代からの付き合いなので、1~2年は一緒にいることになる。
だからなのか、同期たちとは割と本音で仕事の話をすることができた。

話し出すとあっという間。時々シャボン玉を飛ばしながら、3人でひたすら話した。面白おかしい話もグチも不満も。

そういえば、ここ半年の間にこうやってグチを話したことなかったな、と気づいた。

元来、マイナスなこと(例えば、「これがイヤ」とか、「あれがきらい」とか、「これ意味がわかんない」とか )、そういうことを口に出してはいけないと思っている人間だった。人の悪口なんてもってのほか。

だから、心の中にもやもやがあったとしても、それを外に出すことはしなかった、というかしてはいけないと思っていた。
そう感じてしまうのは自分の責任であって、自分の外に出してはいけない。だから我慢しないと。

大学生時代後半には友人に恵まれて、私が出せていないモヤモヤを上手く引き出してもらっていた。その環境に良くも悪くも慣れてしまっていたが故に、いざ卒業して友人たちと離れると、途端に昔の私に戻ってしまった、と自分では分析している。

この日、同期たちと話して改めて気づいたことは、マイナスな感情を持ってもいいんだということ、そしてそれを外に出してもいいんだということ。(吐き出す場所とか人とか言い方とかは気をつけないといけないんだろうけれど。)
マイナスな感情も否定せずにいてあげること。

…なんて書いてみるけれどやっぱり難しい。これは、私の人生での課題の一つなのかもしれない、と思った。

精神科探しに苦戦していた私に、奇跡とも思えるようなステキな病院との出会いがあった。

どの病院を検索しても「要予約」の文字。
その中で、その病院は初診でも予約なしで診察可能、と書かれていた。
藁にもすがる思いで、朝一の診察枠をゲットするために車を飛ばした。

やっと希望が見えた。
でも…

本当に診察してもらえるのかな。突き返されたらどうしよう、お医者さんが威圧的だったらどうしよう。「この程度で病院に掛かるなんて」「どうせ診断書がもらいたいだけでしょ」とか言われたらどうしよう。

やっぱり私の心は不安が大半を占めていた。

病院に着くと、既に他の患者さんが待合室で座って待っていた。お年寄りの方が多くて、なんだか場違いな気がしてきた。それでも「大丈夫、大丈夫」と何度も自分に言い聞かせた。

名前が呼ばれた。顔を上げると明朗な雰囲気の女性が近づいてきた。おそらく臨床心理士かカウンセラーの方だろう、と思った。

こじんまりとした面談室に通され、私はソファに座った。窓は少し開いていて、日が差し込んでいた。
女性は優しく明るい声で軽い雑談をしてくれた後、私に生い立ちから現在までについて質問してくれた。

なんで幼少期からの話なんかするんだろう、と最初は訝しげに思っていた私だったが、その方はどんな話をしても否定せずに、微笑みながら聴いてくれた。
私に共感してくれていることが分かった。だから私もなんでも話せた。

「それじゃあ、この内容を踏まえて、私から先生に紹介しておきますね。」
なるほど、今話した時間は診察の前のステップだったんだ、と合点が入った。

待合室で少し待って、また名前が呼ばれる。
この時の私は、先ほどとは違ってまた緊張してしまっていた。
なぜなら、お医者さん=淡々としている、効率的、一人の患者と向き合う時間が取れないくらい多忙、みたいなイメージがこびりついていたから。(世の中のお医者様方、すみません…)

いざ、診察室に入る。部屋にあるソファに腰掛けるように促された。

粗相のないように…、ちゃんと話さないと…。

でも、そんな不安・緊張も、お医者さんのおっとりとした声色とマスク越しからでもわかる優しい笑顔で、一気に吹っ飛んだ。

「優しい人は疲れちゃうからね。自分も昔そうだったからさ。」
そんな話をしてくれた。

あぁ、この方は私の辛さを解ろうとしてくれる人だ。

そう思えた。

「まずは、自分の好きなことを思いっきりしなさい。人間、リラックスしていると思っていても、どこかしらで心配事がちらついているからね。」

「今は何にもできない状態かもしれない。自分の好きなことしたいな、よしやろう!と思えるようになってきたらいいサインだよ。」

本当にその通りだった。いつもは楽しめる散歩も料理もドライブも、まるでやる気にならない。無理矢理やったとしても全然リフレッシュできていないのが、この頃も私だった。

「きっと、頑張りすぎちゃったんだよね。」
「休むことに罪悪感を感じなくていいからね。あなたは他の人たちよりも優しい方だから、人一倍エネルギーを使っちゃうんだ。」

私が、誰かに言ってもらいたかった言葉を、お医者さんはほぼ全て言ってくれた。

「頑張ってきたね」「立ち止まってもいいんだよ」

このお医者さんに出会えてよかったと思った。
そして、もしかしたら今までどの病院でも予約が取れなかったのは、私にこの病院とお医者さんを出会わせるためだったからかな、とさえ思った。

すぐに診断書も書いてくれた。多忙なはずなのに嫌な顔ひとつせずに。
私は自然と、なんとかしてこの感謝の気持ちを伝えたいという想いから、頭を下げてありがとうございます、と言っていた。

この数日は、人の温かさに触れられた数日だった。

今でも、同期からもらったシャボン玉と病院パンフレットを大事に取ってある。


To be continued…

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