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九詰文登『植物人間の救い方』批評

九詰文登『植物人間の救い方』批評

九詰文登『植物人間の救い方』

yo 評パンデミックにより人々が植物人間となってしまった世界。唯一の生き残りである玲は一人、ただ生きている。そんな世界の中に、いくつもの興味深いテーマが潜んでいるように感じました。

○ 人類への懐疑と期待
玲はパンデミックのもと、無秩序となった世界では、人は身勝手に行動することを「知って」おり、そのために自ら距離をとりながら自衛してきたところがあります。バイオハザ

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三上優記 『さよなら、ビタースイート』批評

三上優記 『さよなら、ビタースイート』批評

※本作品には若干の性的表現が含まれます。批評内にはそうした表現は入れておりませんが、作品本編をお読みいただく際はご留意ください。

山口静花 評良いタイトルだなあ、というのが、第一印象でした。読み切った後でもその印象は消えず、ほのかな余韻として、「さよなら、ビタースイート」という言葉は残りました。どこかでやさしさを感じられる、切ない一編に仕上がっています。
特に軽い性描写、官能表現が冴えていて、力

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こたつでみかん 『最後の心臓』 批評

こたつでみかん 『最後の心臓』 批評

こたつでみかん『最後の心臓』

https://ncode.syosetu.com/n1089gx/

山口静花 評夢中になって読みました。ぐんぐんと引き込まれる軽やかな文体、および会話の群れ、時折挟まれる情景描写に、熱に浮かされるようにして読み進めていました。最後まで、スッと一本の筋が入っているように軸を持っている印象を受け、きちんと読み通せる流れはできているな、と感じます。
今作品で、わたしが

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高村芳『ショッキングピンクの印』批評

高村芳『ショッキングピンクの印』批評

高村芳『ショッキングピンクの印』

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今回は辛口コメントをご希望されていますので、少々厳しい表現が出てくるかもしれませんが、ご容赦ください。
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yo 評今回は高村芳さんの『ショッキングピンクの印』という短編を拝読しました。ここで描かれているような「身体的には男性であるが、なぜか男性に目が行き、マニキュアを塗ってもらうことに楽しみを感じている」という状態

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入間しゅか『馬鹿みたいにお天気』 批評

入間しゅか『馬鹿みたいにお天気』 批評

入間しゅか『馬鹿みたいにお天気』

山口静花 評彼氏と別れてしまったことの虚無感、やり場のなさを、マッチングアプリで知り合った人が現れないことへのある種の絶望、なんとも言えない居心地の悪さに委託している物語だと読みました。
全体の雰囲気の中で関西弁が冴えており、よく文に馴染んでいて、非常にスムーズに物語に入り込むことができました。
また、やはり女性の主人公を書くのが上手いですね、思考が流れるように

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