【妖に纏わる実話怪談】入浴室の垢嘗
人間の舌というものは、最大何センチまで伸びるのか皆さんはご存知だろうか。
アメリカ・カリフォルニア州に住むアーティスト、ニック・ストーベール氏は「世界一長い舌を持つ男」として2012年以降ギネス世界記録を保持し続けている。 ニック・ストーベール氏の舌の長さは唇から舌の先まで約10.1cm。
今から20年前、濱田さんは社会福祉士の資格をとるため都内の特別養護老人ホームに実習にきていた。実習初日、早速新人いびりに遭った濱田さんはデイサービスの送迎、レクリエーションの企画・進行、訪問介護の他、ワンフロア100人ほどの入居者様の排泄、食事、入浴の介助、移動、リハビリなどを1人任され、実習後は素手で便器を洗うという洗礼を受けた。4時間かけ、1階から3階まで全てのクソまみれの便器を洗い終えると、浴槽の洗浄を言いつけられた。「舌で垢を舐めとる様に」と顔を浴槽に押し付けられた濱田さんは嗚咽してしまったという。これが相手の神経を逆撫でしたのか、濱田さんは入浴室に閉じ込められてしまった。
悲しくて悔しくて、濱田さんは泣きながら素手で浴槽を擦り始めた。排水溝やタイルの隙間にこびり付いた便や垢を爪で擦っているとガラリと入浴室のドアが空いた。4階の角部屋の窪井さんだ。昼間、オムツの交換をした際に酷い褥瘡があり軟膏を塗ったばかりだった。窪井さんは何も言わぬまま蜘蛛のように床に這いつくばった。40センチほどだろうか…赤黒い短冊の様な舌が伸びていく。ザリッザリザリ…まるで小豆洗いの様な異様な音が小1時間ほど続いた。
夜21時を過ぎた頃、見回りに来た夜勤の看護師に入浴室の鍵を開けて貰った濱田さんは引き継ぎノートを見て驚愕したという…
3年前の午後20時、窪井さんは浴槽で亡くなっていたのだ。心不全だった。
濱田さんは無事、実習を終えた。今では入浴介助が1番好きな仕事だという。
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