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デザイン視点での世界一周 | イタリア🇮🇹編 | Triennale di Milanoレポート

今回は2023年9月24-27日に滞在していたイタリア・フィレンツェ/ミラノについての記録をまとめます。
イギリスではthe Design Museumでプロダクトや建築、グラフィックデザインなど1つの美術館で幅広いデザインの展示に触れましたが、今回訪れた「Triennale di Milano」はまさしくプロダクトデザインの歴史を紐解く美術館でした。
*イギリス編はこちらを参考

特に、椅子の歴史はこの美術館の中でも年代を通して変化が詳細に記録されており、この画像のように椅子だけで大きなエリアができるレベルでした。(日本の場合、このエリアだけで1展示になるのでは?)

実用的なものからユニークなものまで幅広く揃う椅子

実は来訪するまで、あまりプロダクトデザイン自体にはあまり惹かれず日本でもそんなに多くの展示に行ったことはありませんでした。
ただ今回初めてしっかり集中してプロダクトの歴史に触れてみたことで、プロダクトの中でも自分の身の回りにある当たり前に使っているものの起源を知ることや、それが必要とされた背景を学ぶことに好奇心が湧くと気づけました。

前置きはこのくらいにして、今回取り上げたいのはこの3つです。


椅子の歴史

ミラノでトリエンナーレが行われるたびに多くのデザイナーがいろんなタイプの椅子を作ってきました。展示では年代ごとの椅子をはじめとしたプロダクトが飾られていましたが、1950年代のソファなどは今でも使われているようなデザインで、70年以上前からある程度の形はすでにできていたようです。例えばこのソファ。多くの人が見覚えある形では?

今でも色褪せない形の椅子のデザイン

また、ただ「座り心地」を求める椅子をデザイナーが作っていただけではなく、見た目のデザインに特化した椅子もそのくらいの時期から作られていました。
例えばこの写真。

ピエロ・ガッティ、チェザーレ・パオリーニ、フランコ・テオドーロ作
『サッコ』ーザノッタ/1968年
*写真撮り忘れたので、ネットから拝借

この体全体を包み込んでくれるタイプのソファ、、どこかで見たことないでしょうか?
私は見た瞬間、「あ、yogiboに似てるなー」と思いました。
姿勢を保って座ることだけでなく、実は姿勢を崩してダラーんと過ごすニーズはだいぶ昔からあったのだろうなと思うと、この100年以内の人は遠いようでそんなに遠くない人なのかなと親近感が湧きました。

次はこの写真。

デザイン性に特化した椅子(1966)

「どう見ても座りにくいでしょ。。」と思ってしまったこの椅子は、おそらく実用性は置いておいて、デザイン性で勝負をしたデザイナーの作品と思われます。

このように実用性やデザイン性、いろんな角度で攻めた椅子はありますが系譜をよく読むとそれぞれの椅子は相互作用し合っていることがわかります。

椅子の系譜図

椅子の歴史と特徴をこのようなチャートに落とし込んでいることにまず驚かされましたが、プロダクトの歴史がイタリアに詰まっているからこそ相互に影響し合った椅子が生まれているのだろうと思いました。(ただ背景知識が不足ゆえ、このチャートを深く理解しきれない。。気になった方は、こちらのサイトに詳しくイタリアの椅子の歴史がまとまっているのでチェック)

また、この展示の中で100脚くらいは椅子を見たんじゃないかなと思いますし、100年くらい前の椅子もほとんど今と変わらないデザインなのは非常に面白い気づきでした。

余談ですがこうして椅子の歴史を見ていた時、そういえば自分の母校では建築系を学ぶ時まず椅子を作らされていたなーと思い返し、プロダクトの基本が詰まっていることを改めて思い返しました。

ファッションの街、ミラノ

今回滞在していた期間は、実はあの有名な「Milan Fashion Week」の時期と被っていました。(ただ一般人が参加できるものはほぼありませんが。。)
そんな自分の中での意識もあるからか、展示の中では洋服に影響を受けたプロダクトもいくつか見受けられました。

そもそも背景として、なぜイタリアのミラノで世界最大規模のコレクションが誕生したか。調べてみたところ、このような記述がありました。

パリのような革新的なスタイルとは異なり、イタリアは伝統的に素材や職人技術などに裏付けされる品質で強みを持ち、バッグ、靴などの分野で活躍するエリアだった。グッチ、プラダなどさまざまなブランドが20世紀の前半からその地位を確立していた。
〜〜
バティスタジョルジーニ(貿易商)が、アメリカにイタリアの品質の高さをアピールするため、ファッションショー始めたと言われている。
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元々フィレンツェで始まったが、途中立地条件的にミラノに移動。

FASHION PRESSより

確かにラグジュアリーブランドの多くはヨーロッパで誕生していますし、特にイタリアはみんながすぐわかるようなブランドが多いですね。
またブランド品ではなく、露店でシルクスカーフを購入したのですがそうしたものすら非常に質が良く感じました。

前置きが長くなりましたが、ここからはTriennale di Milanoで見たプロダクトを紹介します。

家庭科で使ってたミシンを思い出しました

こちらは今使われているものとほぼ同じ形の電動ミシンです。
元々この形になる前から、服を縫う機械としてミシンは誕生していましたが人間工学的により使いづらく、また"Dress making"が盛んになってきたことで変化が求められた時に作られたミシンのようです。
いくら質がいいものを元々作れていても、大量生産が必要になると話は違います。こうした市場の変化で、しかも今でも使われる形式のものが誕生していたのは凄いなと単純に思いました。

身近なアイテムの初期型シリーズ

ここからは一つ一つの内容が薄くなりますが、「昔はこんな形だったんだー!」と思ったプロダクトを続々と紹介していきます。

今もイメージするヘルメットの色と同じですね

今と全く形が変わらないなーと。耐久性やより危険な物から身を守るために今の形に改良されたのかなと想像しました。

レトロなヘッドホン

少しレトロな感じはしますが、今こんな雰囲気のものが出てもウケそうな気もする。

この時代にしてはだいぶしっかりしたスノーブーツでは

もう今でもそのまま使えそうだし、耐久性・耐寒性ともにありそうでびっくり。

この辺りの初期型はプラスチックを素材として使えるようになってから、劇的に変化があったと説明がありました。確かにどれもプラスチック製で安価かつ自由に物を作りやすくなったのは、プロダクトデザイン業界における産業革命的な意味合いがあったのかなと思います。

最後に、、独断と偏見で選ぶ参考図書

この展示を見た中で、もっと知りたいと思うものやもう一回見返したいと思うものも多くありました。Triennale di Milanoに行くのもなかなか機会がないと難しいと思うので、本を読むだけでも体験できそうなものをいくつかピックアップします。

イタリアのデザイン思考とデザインマネジメント

これは自分が普段取り組むサービスデザインにも応用できそうな気がして、日本に帰ったら必ず読もうと思う一冊。(なんならこの度の移動中に読むかも)

Design of the 20th Century

表紙の椅子からもわかるようにプロダクトの歴史を振り返る一冊。タイトルも良い。全て英語だが、写真もたくさん詰まっているのでわかりやすいのでは。

Il design è come un panda? Il design italiano 1980-2020

美術館のショップにあった一冊。
その日に見たプロダクトと同じような流れで、歴史を掴むことができそう。
(スペイン版Amazonでしか取り扱いはないようですが。。)

https://www.amazon.es/design-panda-italiano-1980-2020-illustrata/dp/8862425430

このような流れで、イタリアのTriennale di Milanoの気づきは締めたいと思う。次はスペインで建築をメインに語ることになると思うので、乞うご期待。


本当に最後に、、

プロダクトの元祖がイタリアで数多く生まれていることに感心したあと、美術館内のトイレに行ったのですが、、プロダクトの歴史はどこへ、、と思うくらい使いづらいトイレットペーパーケースがあったので最後に載せます。笑

写真だけだと伝わらないと思いますが、
ポケットティッシュみたいなのがチビチビ出るタイプです、、

使いやすさの落差が直後に来たので、どうしても伝えたく載せました。笑

ではここで締めたいと思います。

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