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デザイン視点での世界一周 | デンマーク編🇩🇰

今回は2023年10月1〜4日に滞在していたデンマークについてまとめます。
デンマークはデザイン視点で言えば「北欧デザイン」がとても有名で、また教育費も無償など日本人から見ると羨ましく思う観点が多くあると思います。

今回は北欧デザインの裏側を探るべく、「Danish Design Museum」と「Danish Archtecture Center」に行き、どういう背景でデンマークがこのイメージに成し得たのかを探ろうと思います。


Danish Museum of Art & Design
デザインミュージアム・デンマーク

こちらの美術館は1890年に開館した歴史のあるミュージアム。

まずこの美術館の特徴は「ありとあらゆるデザインを一つの施設内で展示している」ことです。こちらの美術館は常設展示と期間限定の展示含めて、5-6つの展示を一度に見られるのですがラインナップが非常に多様。
個人的な解釈で分けると、まず大きく「Future Design」「Historical Design」と二つに分かれ、扱うデザインジャンルとしてデジタルアプリから未来的なプロダクト、絵画やファッションなど、これでもかと言うくらいいろんなデザインが詰め込まれていました。(正直、途中からインプット量の多さでパンクしかけた、、)

未来に関する展示
ミラノでも見覚えのある椅子の展示
ロイヤルコペンハーゲンを彷彿させる食器
ポップカルチャー全盛期の展示
Textileの展示
一度も日本に行ったことないデンマーク人が
収集していた伝統品

先日来訪したロンドンの「the Design Musuem」も、デザインを包括的に扱うタイプの美術館だったので似たものを感じます。(もしかしたら”Design Museum”と名がつくものはこういうものなのかも?)

いろんな展示があった中でも、特に「Future Design」に関する展示は非常に興味深かったのでこちらで深掘りしたいと思います。

まず展示の最初で投げかけられるのは「THE FUTURE IS PRESENT」

テクノロジーは私たち人類を進歩させ、便利な世の中にするした一方で、気候変動やパンデミック、飢餓などあらゆる課題も生まれた。その中で現在、より多くの人が自分のため、社会のためにより良いものを生み出そうとしている。デザインは常にそうした変化をmotivateするものであり、今回の展示は私たちに今の取り組みを伝え、どのように関われるかを問いかける展示とのこと。

この展示を一言でまとめると「Real WIRED」。
私は雑誌『WIRED』が好きで毎巻購読しているのですが、雑誌の中で基本的な論調としてある「問いが投げかけられ、現状の呼応策が記事として紹介される」流れが今回の展示と非常に一致していると感じました。

例えば。。

「デザインはメンタルヘルスを強化することができるのか/ Can design strength mental halth?」

デザインという言葉が広いため、人によってこの問いに対する呼応策は異なると思います。私なら「日々の感情日記を書くアプリで自分のメンタルヘルスを可視化できることで、思っていた自分とは違う自分を見つけられる」ようなアイデアがパッと思い浮かびます。
展示ではリサーチに基づき「自然の中で過ごすことで癒し効果があり、身の回りの人との親密な関係性が寂しさや孤立感を軽減する」というエビデンスがある中で、それを実現するためにこの写真にある水晶玉のようなものに自然が映し出される作品が展示されていました。

また、考える角度が面白いなと思った問いがこちら。

「一度も引退する余裕がないとしたらどうするか/ What if you could never afford to retire?」

こちらに呼応するアプローチが「配達員をシニア層とヤング層から選べる食品配達サービス」
ヤングの場合は配達時間が早いため、手数料を高く取る一方で、シニアの場合は配達するのに時間がかかるため配達手数料が安くなるという仕組み。
理にかなってるなと思う一方で、果たしてそんな肉体労働したいシニアがどれほどいるかは疑問ですが考え方としてはユニークで面白いなと思います。

そのほかにも「体に必要な1日分のエネルギーが全て1つの錠剤で摂取できたら?」「自分の死をアプリ経由で予約できたら?、、など倫理的に少しぶっ飛んだ内容やSFのような未来が前提の問いが連続していましたが、ありうる未来の形として今そのケースを知っておいて損はないかなと思います。(急にそんな未来が来たら驚くので笑)

タイトルだけ読むと何事かと思う。。
"What if you could never afford to retire"
自分の気分に合った薬が飲める

こうした展示を見て気になるのは、観覧客がこれを面白い!そんな未来が来てほしい!となるのか、ありえない未来のことだから興味がないとなるのか。
私は、今当たり前じゃないけど人にとっていいことはどんどん広まっていくべきだと考えるので前者なのですが、多くの人は保守的な後者なんじゃないかなと。

でもこうした展示されるレベルの革新は起こせないかもしれないけど、普段自分がする仕事の中で、「こうなって欲しい!」と思い改善する活動だって、同じ革新なのではないかなと思います。この展示の最後に、そうした投げかけがあったらより多くの人に意味のある展示にさらになったんだろうなと、このまとめを書きながら思いまとめてみました。

こちらの展示は2024年12月末まで実施予定とのことで、気になった方はデンマークに行かれる際ぜひ来館してみてはいかがでしょうか。

Danish Architecture Center / デンマーク建築センター

こちらは1985年に設立された建築や都市開発などをメインに扱う国立センター。

複数のゾーンに分けられた展示になっていて、初めはコペンハーゲンの建築がどのような変遷を辿って、今にもてはやされるものになったのかをヴァイキングの時代から紹介する展示でした。

感染症を撲滅させるために衛生環境が整えられた歴史がある
(なんと銭湯も作られ、今も一部残っているとのこと)

次のゾーンでは現在のコペンハーゲンの都市開発の裏側についてを知る場。

そもそもコペンハーゲンの人口構成比ってご存知でしょうか?
私はこの展示に行ってから知ったのですが、なんと50代以上が人口の25%しかしない超ヤングシティ!

どうりでみんな雨の日も風の日も走り回れるアクティブな人たちが多いわけです。。

コペンハーゲンは今では「緑の多いまち」「水道水も飲めるし、デザインも素敵なまち」ともてはやされていますがこの展示を見て感じたのは、小さな街だからこそ成しえたことなのでは?と思います。

例えば、自分の寝室部分だけプライベートでそのほかは共同のライフスタイル。
今ではカプセルホテルなどがその形をとっていますが、Social Residenceとして多くその形をとっているのがコペンハーゲン。
まちのサイズが小さいからこそ、共同で暮らす部分を増やして人々の認識すらもそれが当たり前に感じているのは上手い都市計画だなと思います。ここは私の考察ですが、そうした共同することが多いからこそ、共同する場所は誰もが使える場所にしなければいけないため、シンプルかつ使いやすいデザインが生まれていったのではないかなと想像します。

また緑が多いのも最初からそういう街であったわけではなさそうです。
今回周ったヨーロッパの中で、街中の空気が一番美味しく感じたのはコペンハーゲンであり、それは自転車利用者が多いことによる排気ガスの少なさ、緑の多さが起因していると考えられます。。
でもその背景には、市民ニーズに沿った都市計画を的確に実現できたことにあると思われます。
例えば自転車を利用したいけど運河や川を通れず不便な利用者のために、自転車専用道路を引いてあげたり、緑に触れたいけど、居住スペースが狭く庭が置けないからこそ屋上を緑化したり、、と市としてニーズに応えるし、市民もそれを利用する、そうした循環がうまくできているのが今のコペンハーゲンを素敵な街にした所以に思います。

自転車専用道路も
緑に囲まれた建物も

今後の展望としても、コペンハーゲンはさらに素敵なまちになることも感じられました。
コペンハーゲンは海抜が低く、気候変動の影響による水害のリスクもある街であり、こうした水面都市になるアイデアすら考えられているようです。

水害が問題なら、水に浮いてしまおうというアイデア

現状のまちの状況に甘んじず、状況に沿ってさらに良いまちを目指していくこの心構えこそ、世界で見ても住みたい街になる所以なんだなと強く感じました。

今回の展示きっかけに、行く前まで興味のなかった建築についてもっと知りたくなったためいくつか気になる本をピックアップします。

  1. 北欧のパブリックスペース: 街のアクティビティを豊かにするデザイン

2.北欧のスマートシティ: テクノロジーを活用したウェルビーイングな都市づくり


全体を通して

デンマークのミュージアムに共通して気付いたのは、展示内容の本筋以外でもこだわりがすごいこと。例えばグリーンランドにおけるルビーなど希少鉱石の採掘に関する展示では、この写真のようにただの石ではなく、グリーンランドの環境を感じさせるような木などの装飾までこだわられていました。

グリーンランドで採掘された石

そのほかにも、Danish Acrhtecture Centerではコペンハーゲンの街を感じさせるポスターや飾りがあり、その中で展示を見ることで、さも街を歩きながら展示を見ているような感じがしました。

日本の場合、例えばプロダクトならシンプルな箱の上に載せて説明書を置くだけのスタイルが多いと思いますし、そもそも展示するものを目立たせることを意識していると思うので仕方のないことだと思います。
一方で一つのデザイン展示にここまで細かな装飾を毎回施しているのは、単に展示の中身だけでなくそれを観覧者にどう受け取って欲しいのかまで考え尽くされているだと思います。

ものを作るだけでなく、どう届けるのがベストかを突き詰める、、どの分野でも大切なことですが改めてデンマークでの展示を通して学びました。

次はドバイに向かいます。
本来はその次の国に行くトランジットにすぎないのですが、前から気になっていた「未来博物館」に行きたいためそちらのレポートをまとめたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。
最後にいくつかデンマークの街並みを載せて終わります。

デザインミュージアムの内から
建築センターに行く道を
ミラノのトリエンナーレで見た椅子のレプリカが
コペンハーゲンにも!
至る所に運河や船があり、誰かしら漕いでいる、そんな街
デザインミュージアムにあった作品
何を日本から学んだのか気になる
コペンハーゲンといえばのニューハウン

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