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【らくがき日記】無敵の美じゃなく、人並みの自尊心が欲しいだけ

2021/7/25

 ちょっぴりお恥ずかしい脱毛のはなし。最近は、女性はもちろん男性でも、脱毛する人が増えてきているらしいね。共感してくれたら嬉しいなあと、思いながら、書いてみる。

 ついこないだのお休みが、脱毛サロンの日だった。通い始めたのは去年の暮れ。年齢的には、遅い方なんじゃないかと思う。以前の仕事がタイトなシフト制で、先々の予定を立てられない生活をしていたので、ずっと先延ばしになっていた。でも、学生の頃から堅く決意はしていた。チャンスが来たら、必ずや脱毛するのだ、と。つるつる美肌に、わたしはなる!!

 転職し、時間の余裕ができたタイミングで、インターネットによる猛烈なリサーチを始めた。キャンペーンの広告をやたらと見るけれど、結局のところ、どこに行ってもしっかりお金がかかるのか。それなら効果のあるところがいいなと思い、友達に紹介されたお店へ通うことにした。カウンセリングへ行き、その場でプランを組み、顔色ひとつ変えずに契約して、頭金を払うためカードを切った。

 いやでも、高いよ。これで何ヶ月生活できる?とか、計算しちゃうくらいには。

 冷静に考えてみる。世の中の女子、すごくないか。皮膚から御毛毛をなくすためだけに、ウン十万円というお金を犠牲にして、それでもって、そんなことなかったかのような涼しい顔して生きていたのか。これが普通なのだろうか。

 わからない。わからないけど、確かにわかる。脱毛が生活して行くのにどうしても必要なオプションである、と考えて譲らないひとたちの気持ち。痛いほどに、わかる。だってどう考えても、ムダ毛に悩まされる人生なんて、効率が悪すぎるもの。自己処理にかかる時間と負担、自信の芽を潰すコンプレックス。

 コンプレックス。それだ。
 わたしは劣等感の塊だ、とよく思う。口には出さない、人に知られたくないし、言ったところで好かれるわけじゃない、むしろ逆だから。でも本当は頭のてっぺんからつま先まで、嫌なところでガチガチに固められている。その一つが、毛で、それをなくすためには、多少の出費や痛みくらいどうってことない。いや、どうってことあるけど、でも、それでも絶対に何とかしたいくらい、コンプレックスとは、自分の足を引っ張るものなのだ。

 おしゃれに我慢はつきもの。たまに聞くその言葉の背景に、ひっそり存在する負の感情と、そしてそこから這いあがろうとする覚悟を感じてしまうわたしは、ちょっと考えすぎなのだろうか。いやいや、みんな、そういうところがあるんじゃないだろうか?

 わたしにとって、脱毛における最大の「我慢」は、お金でも時間でもなく、施術中にひしひしと襲ってくる劣等感、だ。いや、コンプレックスをなくすために、コンプレックスを甘んじて我慢しなきゃいけないの?という感じではあるけれど。

 通っている人はわかると思うけれど、施術は全身の肌に光を当てていくものなので、服を全て脱がなくてはならない。もちろん下着も、外す。ほぼ布がないショーツを履いて、ガウンを巻いて横になる。照射中は眩しいので、顔にタオルをかけられる。わたしはつい、部屋の状況を想像してしまう。ベッドに寝かされたはだかんぼうのわたし、大変恥ずかしい姿勢をとる貧相な体。そして、施術してくださる、綺麗でスタイルの良いスタッフの方。

 なんかごめんなさい、こんなことをさせてしまって……という無意味な申し訳なさ。それから圧倒的な惨めさが、わたしをじんわりと襲うのだ。自信のない体を隅々まで晒していることの屈辱感。もちろん、スタッフの方は、余計な感情なく誠実に丁寧にお仕事されているだけだと、頭では理解しているし、とても感謝しているんだけど。こんな格好では、自意識過剰にならざるを得ない。ひたすら、無になり、事が過ぎ去るのをじっと待つ。

 綺麗になりたくてサロンに通うのに、帰るときにはいつでもズタボロだ。そんな時、わたしは思う。美しくなりたいんじゃない。誰にも負けない美貌なんてわたしには手が届かないし、手に入れたくもない。ただ人並みになりたいんだ、って。

 誰かと比べてすごく劣っている、みんなの中にいると目立つこんな醜さがある……そういうウィークポイントが、自信を持とうとする自分を邪魔する。自分を好きになろうとする努力を台無しにする。だからこっそりと消したいんだ。痛くても傷ついても平気な顔で繕う。そうやって、周りに紛れ込めるくらいの人並みの自尊心を、手に入れたいだけなんだ。

 傷心のサロン帰り、わたしは自分を甘やかす。服を買いにお店に寄ったり、いつもより少し高いカフェで好きなものを食べたりする。大人になればお金で外見だって変えられるし、自分の機嫌を取ることもできる。そうしなくても伸び伸びと生きられる、しなやかで豊かな価値観を、自分に対して持てたらよかった。他人にはできるのに、自分の個性は受け入れられないなんて。

 強くて穏やかな心に、いつか育つだろうか。だけど理想を捨てたくもない。わたしはこれからもサロンに通うし、一つでも多くコンプレックスを消すために足掻くだろう。大丈夫、少しずつ、確実に、生きやすくはなってる。わたしは、わたしのために、自分を磨く。

 前回の施術はそういえば二人がかりだった。いつもは一人のスタッフの方が、上半身から順番に照射していくのに、こないだは二人だったから上半身と下半身が同時進行で、もう死ぬかと思った。背中にジェルを塗られながら、一方ではお尻の剃り残しを剃られるの。恥ずかしさよりもくすぐったさで、昇天しかけた。帰りは話題のサンドイッチ屋さんで100円高いメニューを頼んで、甘いのもつけた。女子のみんな、がんばろね。あ、もちろん男子もね。ラブマイセルフへの道はそれぞれだから。真っ直ぐで平坦な人なんて多分、そんなにいないと思うから。

貴重な時間を使ってここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。