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うまく生きられないかもしれない
わたしは18歳で上京しました。
手持ちの資金は、高校生のころにスーパーのレジでアルバイトをして貯めた80万円。それと養父母からの支援で20万円。合計100万円でした。
18歳で100万円も持っているなんてすごいな、これで学校の帰りに渋谷へ行って洋服を買ったり原宿でクレープを食べたりして遊べるとわたしは思っていました。
ところがアパートを借りると一気に30万円くらいなくなりました。敷金、礼金、1ヶ月分の家賃の前払い、それから不動産仲介の代金……と見積もられました。それを一括で払わないと明日からは住めないというのです。6畳一間の部屋を借りて住むだけでもこんなにかかるのかと苦い思いをしながら、わたしはすぐに銀行でお金をおろして、大人になるための勉強をしました。大人になるということは、お金を消費することなのだと知りました。それから住んでみれば物価も高く、キャベツひとつ298円という値段にわたしは驚愕し、とてもじゃありませんから手を出せず、毎日モヤシと納豆と豆腐ばかりを買っていました。お皿の上には炒めたモヤシ。ご飯の上には納豆。パックに入ったまま醤油をかけただけの冷奴。
『都会での生活には慣れましたか?』
という養母からの手紙を読みながら、送ってもらった新潟のコシヒカリご飯をもそもそ食べました。使っている水の関係なのでしょうか、安い炊飯器のせいなのでしょうか、わたしのお米の研ぎ方が悪いのでしょうか。田舎で食べていたご飯はあんなにも甘くてふわふわしておいしかったのに、ゴウゴウと列車が走る音が響く6畳一間の真ん中で食べるご飯はぱさぱさしていました。おなじお米なのに、食べる場所が違うとこんなに味が違うんだなと思いました。
都会はいつも明るいです。
人はみんな早く歩くので時々ぶつかります。
夜は虫の鳴き声がしません。
桜が綺麗です、新潟で桜が咲くのはもうすこし先でしょう。
いろんな人がいて、みんないろんな格好をしていて、自由で不思議です。
……と、手紙に書いてポストに投函しました。お金のことは書けませんでした。お金がどんどん減っていくのがこわいなんて情けなくて言えません。わたしをここまで大きく育ててくれて、かつ東京の学校にまで通わせてくれている親に泣き言を吐けるわけもありませんでした。
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