不安障害の始まり

きっかけは些細なことだった気がする。
家の鍵で不安になることが増えた。
鍵をかけたか、ちゃんと閉まっているか。
そこから日常生活の全てが変わり始めた。

仕事やお出掛けで家を出る時、私は鍵をかけた後必ずドアノブを引いて鍵がかかっているかどうかを確かめてから歩き出す癖をつけている。
いつもならその確認だけで大丈夫だった。
でもいつからか、歩き始めて1分もしないうちに不安になってくるようになった。
鍵をかけた場面はちゃんと浮かぶ。
なのに、
「もしかしたら確認不足でちゃんとかかってなかったかもしれない」
「確認でガチャガチャした瞬間に鍵が壊れたかもしれない」
考え始めたらキリがなかった。

最初は漠然とした不安だった。
それがいつかすごく怖くなって、家から大分離れてるのにわざわざ確認しに帰ることがしばしば出はじめた。
電車通勤の私はいつも乗らなければならない電車に歩いて間に合う時間に家を出る。
だから家に帰ると必然的に1本遅らせることになる。
それでも、確認しないことの方が怖い。
不安障害の始まりだった。

最初は鍵、そして次に家電。
家電が火事に繋がるんじゃないかという漠然とした不安。
ヘアアイロン、ドライヤー、換気扇、電源タップ。
とにかく電気が通るものが怖くて出かける時はコンセントを抜くか元電を切るようにした。
それでも家を出る瞬間が怖くてたまらない。
もう出ないと間に合わないと分かってるのに、再度家の中に確認しに入る。
毎日この繰り返し。

常に疑心暗鬼になるまで時間はかからなかった。

現在、日常生活全てに不安が付きまとうようになった。
特に私は物を落とす・無くすことや、自分の家がどうにかなってしまうんじゃないかという不安が大きかった。
仕事からの帰り道、歩いていると常に不安になる。
「今何か落としたんじゃないか」
「気づかないうちに何処かに忘れ物をしてるんじゃないか」
「何か盗まれてるんじゃないか」

果てには、
「私が頭の中で考えてることは他の人に筒抜けなんじゃないか」
「盗聴器が仕掛けられてて会話が聞かれてるんじゃないか」
そんな被害妄想まで出始めた。
そのせいで誰にも愚痴を言えなくなった。
頭の中でさえ会社の人への反論や文句も言えなくなった。
それが思った以上にダメージだった気がする。

これを書いてる今も、何度もポケットや家の鍵を確認している。
いつか家の鍵をかけたかどうかを確認しに行って会社に遅刻する日が来るかもしれない。
そうなる前に、どうか落ち着いて欲しい。