見出し画像

めっちゃLIKEやった塾の先生

    最近、夜10時を過ぎた頃に外を出歩いていると街角から塾生であろう少年少女の姿がずらずらと流れ出てくる様子を見かけて、懐かしくしみじみした気持ちになったのでその思いを綴りたい。


   小学校を卒業してすぐ、高校受験に向けて塾に入った。当時の自分は相当な引っ込み思案で陰気な人間であったので、両親は講師との距離が近く、何でも聞きやすい環境の方が良いであろうと考えて個別指導塾に入れました。そこで私はその栗色の長い髪をした先生に出会いました。通っていた塾はほとんどの講師が大学生のバイトでしたので、生徒と講師の日程の兼ね合いが上手く図れなくなったりして、担当の講師が変わることがたびたびあったりしたのですが、この先生とだけは高校生になるまでの3年間ずっと一緒でした。
   
   とにかく物腰の柔らかい人で、他の生徒からも優しいと評判の愛嬌溢れる先生でした。しかし、自分は年が離れている人、特に年上の人とはどう接したらいいのかが昔から分からず、対面で話すとなると笑顔の作り方もわすれてしまうほどで、自然と敬遠する性質を持っていたためこの先生に限ったことでは無いですが授業(授業は大体1:1か1:2でした)はただただ辛かったです。
時が過ぎて、中2の冬頃になったとき、徐々に受験という語彙が身の回りに飛び交い、意識に根付き始めて、将来に対する得体の知れない不安が、私の身に降りかかって起こる焦りを、知らず知らずのうちに感じていました。そういう感情を覚えてからやっと、職業柄としてだけでも自分のことを考え、親身になってくれる人達のことをなんだか温かく思えてきて、その先生とも仲良くしたいなって気持ちが芽生え始めました。

   友好的でおしゃべりな先生でした。今までは休憩がてらでしてくれる雑談みたいなのを全部適当に流して(コミュ障の言い訳)話を広げる前に終わらせていくムーブをカマしていたけれど、それからは進んでコミュニケーションを図ろうと努力した。すると先生はとても嬉しそうに快く私を受け入れてくれて、私もそれが胸がいっぱいになるほど嬉しくて、ついには気軽に仲の良い親友のようにお話出来るようになりました。親しくなるにつれて、やっぱり当人の性格の本質的もところも見えるようになってきました。その先生は喋らないと死ぬんかってくらいのおしゃべりさんで、私が問題集を解いている時にも「それ、解きながらでいいから聞いて欲しくてさ。あ、もう全然ラジオ感覚でいいから!」とか言い出して、ほんとうにラジオみたいに一方的に「昨日こんなことがあってね〜」みたいな調子でずっと話し続けてくるのでした。そう言われて、最初は言われた通りにながらで話を聞いているのですが、次第に自分も相槌を打つ頻度が増えていったりして、結局集中できなくなって聞き入ってしまう事が度々ありました。
あと、どういう拍子でそうなったのか忘れましたが、お互い家で絵を描いてきて、見せ合った記憶があります。なんか初代のポケモン描いてた。自分はイーブイとあともう1匹なんかを、計2匹描いていったのですが、先生は予想以上に仕上げていて、しかも10匹くらい描いてきており、ほんとにお茶目で風変わりな面白い人だなって思いました。そんなこんなで週に一度の80分の授業の60分くらいは他愛もない話で埋まることはザラにありました。

   これまで先生の遊び心?みたいな側面を書き連ねてきましたが、反面、しっかりと勉強を教えてくれる面もありました。私は先生から英語を教わっていたのですが、他教科の国語の過去問の小論文を書いたので読んで採点して欲しいと言うと、授業時間外でも嫌な顔ひとつせず熱心に教えてくれる人でした。しかも、めちゃくちゃ厳しく採点してくれるんです。私がどれだけ自信ありげにわくわくしながら持っていっても「んーー点数つけるなら2点かな〜」とか告げられました。がっくり。20点中2点です。5つくらい小論文読んでもらったのですが、ハイスコアは7点だったと思います。私に国語力があるとしたら、その礎を築いたのは、いや、すべては先生のおかげです。

   まあ、その後も色々あって結局第1志望の学校に受かって、無事自称進学校に入ることが出来ました。多分、先生がいなかったらここまで頑張れていなかったと思います。毎週毎週、会うのが楽しみで仕方がありませんでした。英語の過去問に出てくる物語に「この話めっちゃ怖くないー?笑」みたいな話している時とかすごく楽しかった。
私が春休みの頃くらいから先生は大学院の受験勉強で1年塾のバイトを辞めることになっていました。それで先生との最後の授業の日に今までのこととかを色々振り返って思い出話みたいな感じに話して、お別れのとき1年後に受験受かったら戻ってくるから、また会おうね!とも言ってくれて、それで最後お別れしました。が、未練がましいことにそれで終わるのがなんとも哀しくて、私はその後自習室に篭って、先生に今までの感謝とかその他諸々の気持ちを込めた手紙を書きました。今思えば本当に恥ずかしいです。きもい。しにたい。
1時間程して書き終わり、直接渡そうと思っていたのですが、ちょうど他の人と話していて、すぐには渡せる状況ではありませんでした。話が終わるのを待ってから渡せばいいものの、その待っている時間が間が悪く思って、先生の机にそっと置いて、そのまま帰路に着きました。
その後、私の好きな先生が居なくなってから塾もつまらなくなったので、その後すぐ塾も辞めました。


   私は現在高2で数字だけ見れば来年、受験目前ということになるけれど、自己紹介で述べた通り、留年確定生な訳でしばらくは、いや、もしかすると一生ここまで人生を左右する大きな試験を受ける機会はないかもしれないな……。みたいな事を考えていたら、なんとなく高校受験のときにそれなりに頑張ってよかったなあってうっすらとした充実感に似たものを感じていました。また、いつか会いたいな。

受験応援してます


2023/12/15

この記事が参加している募集

#忘れられない先生

4,593件

#眠れない夜に

69,218件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?