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深夜のコンビニ:Anizine(無料記事)

昨日の夜、コンビニエンスストアに行った。若い頃にアルバイトしたことがあるからわかるけど、コンビニの仕事は本当に大変。今は人件費削減なのか深夜はひとりでやっている店が多い。

接客はもちろん、商品の補充や期限切れ食品の廃棄、コーヒーマシンのメンテナンス、揚げ物などの調理、各種伝票作業など、目が回るほど忙しい。それを外国から来た人がやっている。完全に頭が下がる。俺はスウェーデンのコンビニで宅配便の受付や保険の支払伝票なんか絶対に処理できないと確信している。北欧はスペルが難しいし。

まあそういうこともあって、俺は彼らが何かを間違えてもイライラしない。むしろ98%くらいの仕事をこなせていることの方に感嘆するし、たまにいる日本人店員の「本当はやりたくないんだよね」というやる気の無さのほうが目につく。

俺がレジでお弁当を温めてもらって店を出ようとしたとき。

70代の日本人女性がネパール人店員に声をかけ、「この野菜ジュースには塩分が含まれていますか」と聞いている。その質問はなかなか難しいぞと思って俺はおばさんからパッケージを受け取り、俺も老眼だけど小さい文字を読んだ。

「入っていますね」と言うと、心臓病の手術をしたばかりなので塩分は大敵なのだ、というその人は「じゃあ、入っていないのはどのメーカーかしら」と言う。店員がコンスタントにお手上げな顔をしていたので、俺が棚にあるすべての野菜ジュースの塩分含有量を調べることになった。

「お客さんなのに、ありがとうございます」と、店員もおばさんも申し訳なさそうに言うのだが、そんなのは当然だ。数種類の中から一番塩分の少ない野菜ジュースを選んで渡す。まったく塩分が含まれていない野菜ジュースはない、という知識を得た。

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おばさんは昔俺が住んでいた神奈川県のある街で有名な店を経営しているそうで、俺もその店は知っていた。「今度、店に遊びに来てちょうだい。店員には私を助けてくれたワタナベさんという人が来たらサービスして、と言っておくから」と言われた。

毎日知らない人と話す、と決めているが、名前を聞かれるまで深く話すことも珍しい。仕事場に戻ると俺の弁当はパーフェクトに冷めていたが、心の温度は少し上がった、みたいなダサいエッセイ風に終わらせてみる。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。