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長野の蕎麦屋:Anizine

今日は、久しぶりの友人と会って話をしました。私も一度会ったことがあるのですが、彼はかなり長くつきあった女性と別れて今は一人暮らし。しばらくは忙しく仕事に没頭していたようなのですが、やるべき大きなプロジェクトが一段落した今年の夏、ふと思い出してずっと連絡をしていなかった彼女に「最近どうしてる」とメッセージを送ったと言います。

どんな理由でふたりの暮らしが終わったのかは聞いていませんが、彼女から返ってきたメールはいつもと変わらない関係であるかのような親密さだったそうです。懐かしい声が耳元で聞こえてくるような近況を伝える文字を見ながら、それまでに感じたことがないくらい胸が締め付けられる思いだった、と彼は言います。

メールの終わりにさりげなく、彼ができたと書かれていました。長い間一緒にいた彼女が何も変わっていなかったことのほうに心が反応していたので、むしろ彼氏ができたという事実には「そうだろうな」と思うだけで、それほど動揺しなかったそうです。しかし最後に書かれていた一言には自分の感情が追いつかなかったと言うのです。

「彼の国には徴兵制があるので、体力がすごいんだ」

この話をどこかに書いてもいいよ、と彼が言ったので書いていますが、あまり頑健ではないタイプの友人が、別れた彼女のその言葉にどれほど打ちひしがれたのかは察するにあまりありました。わかりにくくなるのでここからは友人をAと記します。

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Anizine

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。