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Leicaとブランディング:PDLB

仕事場にあらわれては消えていく何台もの Leica。自分にとって Leica は仕事用ではありません。撮影の種類によって使うカメラは変わるのですが、Leica で撮った写真を使うことはほとんどなく、どちらかというと趣味に近いカメラです。「Leica だけでも仕事は十分できるよ」という人も中にはいるかもしれませんが、それは仕事のジャンルが合っているからです。

そこは論じても仕方がないので触れませんが、私の場合は昔から Leica を持って散歩に行く、というような「心地よい体験」だけにとどまっています。このカメラは伝説的な神秘性を持っていて、それが肥大しすぎているとも言えます。私はフィルムの時代、M4、M5、CL、M6、M7 を使いましたが、M5で露出計、M7で初めて絞り優先オートがついたという時代錯誤なカメラだったわけです。デジタルでは M246、Mモノクローム、M9-P、M10、M11 を使ってきました。

昔の報道カメラマンの伝説がそのままカメラという機材にも影響を与えてきたのですが、もしロバート・キャパが現在に生きていてウクライナで撮るならデジタルカメラを使うでしょう。当時は「それしか選択肢がなかったから」という消去法で選んでいたのは明白です。生死を賭けた状況であるほど失敗のない合理的なカメラを使うはずだからで、それを選択肢の多い現在にあまり有り難がるのは逆行だなと感じることもあります。

ある写真家がソーシャルメディアに写真をアップしていました。カメラ大好きおじさんが「さすがに先生の Leica はモノクロの描写がいいですね」とコメントしたのですが、その写真家は一言だけ「iPhoneです」と返事をしていました。趣味は物欲に偏っていきます。それも一番わかりやすい方へ。クルマならフェラーリ、時計ならパテックやピゲ、バッグならエルメスなど、誰もが知っている名前でないと意味がないのです。

クルマは移動し、時計は時間を知り、バッグにはものを入れますが、その目的だけなら1/10以下の値段で満足できる機能のモノを買うことができます。その価値を「ブランド」と呼びますが、元々ブランドというのは牛などの家畜の所有を示すための焼き印のことで、誰の牛かがわかるように印をつけていました。逆に言ってしまうと、先ほどの「先生のLeica」と言っていたおじさんのように、「印がなければ誰の牛なのかがわからない」という皮肉なのかもしれません。

さて、ここからは「ブランディングと経済」という本題に入りますので、定期購読メンバーだけにお伝えします。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。