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「ノタレ死ぬ」
カジノに落ちていたコインをスロットマシーンに入れてみたら、人並みに暮らせるだけのお金が出てきた。
というような気持ちで生きている。
「資産家は本命でハズレがない馬に莫大な金額を賭ける」というよく知られたギャンブルの話がある。100円を1万円にするよりも、1億円を1億2000万円にする方が確度が高いことは誰にでもわかる。
絶対値としては、100円の人は驚くべき奇跡を成し遂げて9900円、お金持ちは安全に2000万円を増やしたことになる。これが冒険をしなくてもお金が増えていく、元手を持つ人の強みだ。
俺は100円という才能しか手元になかったのに、たまたま幸運が続いたおかげで今まで生きてこられた。「それなりの努力もしたんでしょう」などと言ってくれる心優しい人もいるが、そんなことは当然だ。生まれつき何も持たない人が努力もしなかったらノタレ死ぬ。
お金の話は生々しいから、阪急電鉄の月収についての広告表現や、老後は年金に頼らずに2000万円の貯蓄を、という話題に刺激されて大騒ぎになる。
決して「自己責任」という意味だけではなくて、さっきの例で言えば、庶民の老後に必要な金額は負けない馬に賭けることで簡単に増やせるだろう、と思う立場の人もいるわけだ。
俺の経済は仕事をした手間賃でしか動いていないので、誰からも撮影を頼まれなくなった瞬間にノタレ死ぬ。カンタービレする。何という恐ろしい綱渡りなのかとは思うけど、フリーランスになって20年以上。今のところ死んだ経験はない。
それを幸運だと感謝する以外に何ができようか。
ひとつの大きな仕事が終わり、さてこの穴はどう埋まるのかなと心配していると、たまたま同じくらいの仕事が来る。そういう一輪車操業を繰り返しております。
まあ、元がカジノで拾った一枚のコインから始まっているから、カンタービレしても何も怖くないんだけどね。
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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。