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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2020年12月の記事一覧

綾瀬さんを1000枚:写真の部屋

長年、広告を作ってきた田中泰延さんはよく、「綾瀬はるかをプロのカメラマンが1000枚撮ってその中から選び抜いた一枚がポスターになってるんや。素人が友達を適当に撮って、いい写真になんぞなるかいな」と言っている。 大阪弁の表記には目をつぶってもらうとして、とても正しい意見だと思う。 ある骨董品のコレクターにも同じようなことを言われたことがある。どこかの寺で撮った仏像の写真を見せたら、「あんさん、この仏さまのお姿がええと思って写真を撮らはったんやな。もっと目を鍛えた方がよろしい

カジュアルなロケハン:写真の部屋 (無料記事)

今年は2月を最後に、海外でのロケがなくなりました。 去年の写真や数年前の写真がFacebookに出てくるたびにどこかへ行きたいという気持ちが抑えきれなくなります。今までは遊びで行く旅行も含めて、最低でも2ヶ月に一度は外国に行っていたので禁断症状が起きています。 数年前に撮った古い写真が必要になったのでHDDの中を探していたところ、こんな写真が出てきました。仕事で使われたカットや個人的に載せた写真は一枚だけ残っているのですが、HDDの中にはその前後の使わなかったカットがあり

卵からスクランブルエッグ:写真の部屋

「作品撮り」という不思議な言葉を使う人がいます。 文字通り作品を撮ることを指すようですけど「週末は作品撮りに行きます」という人は、週末までの間には決して作品を撮らない、と未来のことを決めているんでしょうか。 写真に関して言えば、撮るとは「たったの1/1000秒」で終わる行為です。どんなに忙しい人であっても1/1000秒の時間がない人はいないでしょう。つまり、自分が考えるセットアップをしたり、景色のいい遠くの街に行ったり、モデルを呼んだりすることが作品を撮る際に不可欠な要素

寿司の値段:写真の部屋

写真に限らず、何かを作り出す人には共通の訓練がある。 「いいモノを体験すること」。それによって目を鍛えること。自分が受け手側として「いいモノを見た」という経験の蓄積がなければ、当然のことながら誰かにいいモノを提供することなどできない。そしてそれは強調しておくけど、決して抽象的な精神論ではない。 科学といってもいい。 写真は今でこそデジタルだけど、以前は光を銀に反応させる化学の作業だった。だからデジタル写真であっても当然のように科学的なアプローチが必要で、エモーショナルな

できる気になったらダメ:写真の部屋

どんなことでも数分のYouTubeの教則ビデオを見ればマスターできると思っている人々がいますが、それは無理ですよね。 写真で言えば「機会、観察、発想、撮る技術、選択、仕上げる技術」のような条件が必要です。大ざっぱに言っているので人によっては別の条件があるとは思いますが、基本的なところから書きます。 この「写真の部屋」は当初、まとめきれない考えのメモや、撮影に関する個人的な思いつきを書こうと思っていましたが、写真に対する考え方が勉強になった、などと言われると、読んでいる人に

記憶に残る写真:写真の部屋

写真を撮っているとき、セレクトしているとき、レタッチしているとき。 ありがちな言い方をすると「RAWデータは楽譜で、現像とレタッチは演奏」と言えます。デジタルカメラのRAWデータは、カメラの撮像素子に取り込んだデータをデジタル信号として記録したモノで、まだ画像ではありません。カメラメーカーはそれをjpgとして現像するレシピを持っていて、画像に変換したデータも同時に提示します。これが「メーカーの出す色」ですが、しばらく撮っていればプリセットスタイルは使わなくなります。 すべ

真似と独創:写真の部屋

比喩としての登山をする人が、2合目あたりでよく話していることがある。 それが「真似と独創」について。 皆、どんなことでも山の頂上を目指していくだろう。1合目は勢いと発見の楽しさだけで歩き始められるからいい。しかし2合目で、山頂はどれだけ遠いのかに気づいてしまうわけだ。山を10の段階に分けるほど簡単な話ではないし、1合目から2合目と、8合目から9合目までとはまったく違う。上に行くにしたがって、より困難になっていくのは目に見えている。 何か効率のいい(ズルい)方法はないだろ

SIGMAのレンズ:写真の部屋(無料記事)

Nikonを使っていたときに一番つけていたのが35mmのf2だった。 古い設計のレンズだけど、毎日持ち歩くのにコンパクトでよかった。俺は大草原とかじゃなく、狭苦しい都会の街で撮ることが多いから、人とぶつかりたくない。軽くて全長が短いレンズほどありがたい。 fpとともに手にした45mmが素晴らしかったので、この軽快なシリーズが他の焦点距離で出るのを待っていた。35mm f1.2はもちろん最高のレンズで、スタジオでは使うけど、散歩に行くときは大げさだ。それとは使い分ける。

リフレクション:写真の部屋

いつも書いていることですけど、写真を撮る人が「どうして撮ろうと思ったか」「なぜ撮りたくなったのか」の理由はとても大切です。 写真を始めたばかりの人が撮りたがる典型的なモチーフがあります。次の二枚の写真を見て、それを正確に言葉にする訓練をしてみてください。