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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2020年1月の記事一覧

破綻した写真:写真の部屋

7R4を使いつつ、いまだに古いα9も残しているのは、ローリングシャッターの歪みがほぼ出ないからです。 ネガティブな効果は、出さないときは出さない。出した方が面白いときは出す。フレアなどもそうですけど、性能の悪いレンズをダメだと思わず、「表現に合わせた選択肢」をできるだけ多く準備しておくことが必要です。 ほぼ使わないですけど、ティルト撮影が必要だと言われたらレンズはあります。あまり使わないモノはレンタルするという手もあるんですが、思いついたときのタイムラグがいやだから、必ず

Teal and orange.:写真の部屋

Teal and orangeのグレーディング(もしくは撮影時のライティング)は、構図における色バランスだけじゃなくて、観客が見るべき場所をコントロールする効果もある。目が行くのはやはり暖色。 「オレンジ」は人間の肌の色域だけど、実は白人も東洋人も黒人も同じ。これはあらゆる人種を撮っていれば気づく、グレーディングにおいては初歩的な事実。だから差別なんて意味ないんだよね。

訓練をする訓練:写真の部屋

多くの写真を勉強している人がここを読んでくれていると思いますが、質問です。毎日どんな時でも写真を撮っていますか。 休日に友人のモデルを公園に連れて行って作品を撮りました、なんて報告を聞くことがあるんですけど、「一週間のうちに半日だけですか」と思います。どんな時でもという表現は、文字通り「どんな時でも」です。 過去に訓練の経験があって、方法を知っている人は、「どんな時でも」の意味がわかっていますから、それを他のことに置き換えても同じ訓練ができます。 たとえば独学で司法試験

ただ、人がいる:写真の部屋

「これは私の個人的な考えですが」と書き始める人がいますけど、すべての表現は個人的でしかないので、あえて言う必要はないです。 俺は毎日撮っている写真を膨大な容量のHDDに格納していますけど、たまに古い写真を見直しています。撮り方や技術に変化があるのですが、先週の写真を見ても変化がわかりにくいので、数年前に遡ります。 何をどう撮るか、という根本的なところは「人格」とリンクしていますからさほど変わりません。ですが昔の写真を見て、ちょっとした表現部分の変化を発見するのはとても勉強

サトリとの戦い:写真の部屋

これは写真に限りませんが、表現の原点は、「他人と違うこと」に尽きます。ことさら変わった方法をとるという意味ではなく、自分のやり方を突き詰めていくと、自分の方法しか残らないということです。 ですから、他人がやっていることを真似したり(技術的な訓練は別)、批評することには何の意味もありません。自分が一番やりやすい方法、気に入っている方法、ストレスのない方法を見極めることが重要で、これがなかなか難しいのです。 「こうするとこう思われるのではないか」などと、批判や賞賛の両面を推測

ズレ構図:写真の部屋

写真を一番初めに見るポイントは、だいたいセンターにあるものですけど、工夫しようとして表面的にズラしただけでは効果がないどころか、「なんでズレてるの」ということになります。 撮りたいと思ってカメラを向けたときの素直な感情は、そのまま出していっていいのです。美術の素養があり、絵をたくさん観ている人はわかると思いますが、主体が画面のどちらかにズレている構図には物語としての必然性があり、ポートレートでは、ほぼ人物が真ん中にいます。 では物語としての必然性とは何でしょう。次の写真を

レンズ一本:写真の部屋

久しぶりにツアイスの55mmをつけて散歩。人物を撮るのには使いやすいんだけど、風景やスナップだとやや画角が狭くて、使い方が難しい。 でも、焦点距離にはそれぞれのいいところがあるから、そのレンズでしか撮れない風景があるのも事実。初心者はできるだけズームレンズを使わず、単焦点でも複数を持たずに、その日一日を我慢して撮ってみて欲しい。 そうすることで、「こういう状況では55mmでは狭い」「ちょっと広い」などの感覚がわかってくる。前者なら35mmを使えばいいし、後者なら85mmを