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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2023年12月の記事一覧

たっちゃん:Anizine

午後2時、電話が鳴った。鳴ったというか、鞄の奥の方でブルブル、ジージー震えている。昨日の夕方の打ち合わせのときに音が出ないようにしたのを思い出した。 「もしもし、たっちゃん」 「ああ、コイケか。久しぶり」 「昨日の夜、俺、ずっとたっちゃんに電話していたんだよ」 「ごめん、音をミュートしてた」 スマホには、友人であるコイケからの着信履歴がいくつも残っていた。 「たっちゃん、何してたの」 「忘年会。結局夜中の2時過ぎまで六本木で飲んでて、どうやって家に帰ったかすら覚えてない

くだらない結論:Anizine

「この前、午後の予定が急に飛んだときがあってさ」  「うん」 「なんつーか、できるだけ一日を有意義に使いたくて大阪に行ったんだよ」  「ああ、大阪で小橋めぐみさんの映画の舞台挨拶があったときね」 「そう。しずるの村上純くんが旦那さん役で、グランジの五明さんも出ている映画だけど、東京の舞台挨拶の日にいけなかったからね」  「そうか」 「で、映画を見終わってから大阪にある『スナワチ』に行ったんだよ」  「前田将多さんのレザーショップだ」 「うん。そこで無駄話をしてから京都に行こう

匿名はアウトです:Anizine

「ネットに作品をアップしているので見てください、と言われたとき、匿名の人(ハンドルネーム)は見ない」という人がいました。その気持ちはよくわかります。文章でも写真でもイラストでも何でも同じですが、これから自分の作品を知ってもらって世に出ようとしているのに「やまちゃん」「がっくん」「ぽよにょろ」と名乗る人が仕事を得るのはなかなか難しいでしょう。 もちろんプライバシーの問題があるのはわかります。ですから個人的にソーシャルメディアで匿名を使うのは悪くないと思います。しかし職業的な自

年齢マウントスライス:Anizine

同年代の友人から、ある投稿のリンクが送られてきました。 「これ、面白いから読んでみて」 早速そのページを見てみると、20代前半の若者が1980年代に活躍したアーティストについて書いている投稿でした。その若者はアーティストの存在を知って衝撃を受けたようで、鼻息荒く新鮮な感動を伝えようとしている。それはいいんです。しかし私の友人がリンクを送ってきた意図が、彼の「表現の問題」であることはすぐにわかりました。 もし私たちが20代の頃にソーシャルメディアがあれば、このような失敗は

オバマと写真家:写真の部屋・Anizine(無料記事)

U-NEXTで『大統領のカメラマン』という映画を観ました。「ホワイトハウスの大統領専属フォトグラファーか、参考として観ておくか」くらいの気持ちで観てみたところ、受ける印象はまったく違いました。写真に興味がない人も魂が揺さぶられると思いますし、カメラを手にしている人なら「写真を撮る意味」をもう一度考えるはずです。 メインになっているのは随行していたオバマ元大統領の姿ですが、それはアメリカの理想、人間の存在、政治の在り方のすべてにリンクしていきます。後半はわかりやすくもうひとり

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』

1月30日刊行の『カメラは、撮る人を写しているんだ。』の予約が始まりました。写真について足りない頭で考えていることのすべてを、この一冊にまとめました。カバーの小橋めぐみさんを始め、参加してくれた皆さんありがとうございます。

実家は何を:Anizine

バッティングセンターに行く人は多いけど、バッティングセンターを経営している人は少ないよなあ。何を言いたいかというと、娯楽を享受して不満を言う人は多いけど、提供している人は少ないってことだ。 「実家は何をしていましたか」 という答えの中で、過去に一番面白かったのが、

必ず見つかるんだぜ:Anizine・写真の部屋

今日は金沢へ。ミーティングを終えて渋谷に戻り、近所のコンビニエンスストアで水を買おうとしていると道路に「あるもの」が落ちているのを見つけました。 ここから先は事態の受け取り方が人ぞれぞれだと思うので、定期購読メンバーにだけお伝えいたしますが、なぜ「Anizine」と「写真の部屋」の記事になっているのかはあとでわかると思います。

70,118:Anizine

「数字に価値はないが、そこに数字はある」ロバート・ツルッパゲ ある人から、ソーシャルメディアのフォロワー合計を聞かれました。インフルエンサーでもないからあまり気にしていませんでしたし、複数のプラットフォームで重複してフォローしている人も多いはずです。つまりユニークアカウントではなく「のべ」の数字でしかわからないことから、合計の人数にさして意味はないとわかっています。 今日までのフォロワーを合計してみると、70,118人と出ました。大分県日田市の人口とほぼ同じくらいだそうな

40年ぶり:Anizine(無料記事)

今日は、10代の頃の友人と会いました。ほとんどのメンバーが今でも地元の湘南近辺に住んでいるので時々会っていたそうなのですが、唯一音信不通だった私が参加するのは今回が初めてで、彼らの顔を見るのはなんと40年ぶりです。 仕事が終わらず、約束の時間を30分過ぎて藤沢に着きました。会場である店に入ると、定年した校長先生たちみたいな初老の集団がテーブルを囲んでいました。何度か目をこらして恐る恐る近づいていったのですが、そこにいたのは間違いなく友人たちでした。もちろん自分も歳を取ってい

リセットの習慣:Anizine

自分がゲームにはまらなかった理由を考えていました。すると、ゲームが好きな人と話が合わない理由も正確に把握できました。 私たちが若い頃に触れられたゲームは、あまりにも原始的なものでした。四角いピクセルを打ち返すだけの『テニスゲーム』や『スペースインベーダー』などです。もちろん画面はモノクロでした。私たちは近所に住んでいて親が甘いので何でも買ってもらえる「オリバー」という友人の家で、当時は最新のテレビゲームをしていました。馬鹿な子どものことですから、そういう新しい玩具にはのめり

くだらない結論:Anizine

「来年の1月末に本が出ることになったんだよ」  「ああ、写真の本ね」 「そうそう。もうほとんど書き終えた」  「脱肛だね」 「違うよ。それを言うなら脱稿だし、こうして会話しているときにそんな漢字を間違えるオヤジギャグなんて成立しないだろう」  「書かれているメディアに依存してしまったかな」 「わざとらしい行動は嫌われるから気をつけた方がいいよ」  「ソーシャルメディアの大根役者、っているよな」 「いるね。芝居が大根」  「英語だとhamっていうらしいぜ」 「それは昔、俺がお前

飛行機マニア:Anizine

ただ眺めていて面白いものがあります。私の場合はそのひとつが飛行機です。人間の欲望と叡智が詰まっている巨大なフォルム。海を渡ってどこか遠い場所に行くことができるというロマンと、それを可能にするメカニズム。 よく「あんなに重たい金属の塊が空を飛ぶなんて信じられない」と2023年になってまで言う人がいますけど、人類は核を融合したり、もっとスゴいことをやっていますのであまりANAクロなことは言わないで欲しいと思います。