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40年ぶり:Anizine(無料記事)

今日は、10代の頃の友人と会いました。ほとんどのメンバーが今でも地元の湘南近辺に住んでいるので時々会っていたそうなのですが、唯一音信不通だった私が参加するのは今回が初めてで、彼らの顔を見るのはなんと40年ぶりです。

仕事が終わらず、約束の時間を30分過ぎて藤沢に着きました。会場である店に入ると、定年した校長先生たちみたいな初老の集団がテーブルを囲んでいました。何度か目をこらして恐る恐る近づいていったのですが、そこにいたのは間違いなく友人たちでした。もちろん自分も歳を取っているのですが、40年の歳月による容貌の変化というのは圧倒的です。

しかししばらく話していると気持ちは完全に10代に戻り「ああ、よくお爺さんたちが飽きずに昔話をしていたのって、こういうことだったんだな」と初めて実感として理解できました。当時あったほとんどの出来事を誰も正確におぼえていませんし、誰かが部分的に記憶している記憶の断片を、スッカスカでピースの足りないジグソーパズルを並べるような時間が続きます。

話題はこの集まりに40年経って初めて参加した私の近況に集中したのですが、彼らを見ているとあの頃のヒエラルキーや関係性が何も変わっていないことに驚きます。お調子者、それを冷静にたしなめる人、それを眺めて笑っている人、すぐに寝ちゃう人、マンガのキャラクターのように、当時と役割が同じです。人間というのは変わらないものですね。

古い友だちというのは必然的に減っていくだけで、決して増えることはありません。だから大事なのですが、たった3年間同じ場所にいただけの繋がりが40年経っても変化しないという貴重な発見をしました。私は過去を振り返ることがゴキブリと同じ程度に嫌いなのですが、それは「現状に満足できないことから生まれる懐古」でなければいいと思っています。友人と過ごした多感で濃密な時間はかけがえのないもので、今またこうして白髪やハゲになったおっさんたちと血圧や人間ドックや糖尿の話ができたことの価値を、帰りの湘南新宿ラインの中で、ひとりうれしく噛みしめていました。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。