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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2023年3月の記事一覧

なるほどオバタリアン:Anizine

新幹線の中で聞こえてきた会話。 「いやね、あたしたちオバタリアンだから」 久しぶりに聞いた言葉だった。いつまでそんなに古い流行語を使っているのか、と思ったのだが、ハッと気づいたことがあった。そうか。

脳だけが飛ぶ:Anizine

「おい、文句あるのか、表に出ろ」 という状況をごくたまに見かけることがある。ほとんどの善良な人たちはその当事者になったことはないと思うし、そもそもつまらない出来事で口論や喧嘩になるのは大人げないとわかるんだけど、ネットではそれが頻繁に起きている。マイク・タイソンなら、「俺の目の前で同じことを言って見ろ、殴り倒してやる」と言うだろう。 目の前にいないのをいいことに威勢のいいことを言うのが格好悪いとわかっている人はネットでそういうことをしない。昨日Twitterに書いた投稿が

宗教戦争:Anizine

以前、知人の食事会に行ったときに面識のない人が数人混ざっていたことがあった。知らない人と会うことは楽しく、世界が広がるし、今までもそうして知り合った大事な人々と長い間仲良くしてもらっている。でも自分が呼ばれて出かけて行く集まりの中に「圧倒的に宗派が合わない人」がいることがある。これが辛い。 そのときは写真の仕事をしている人が主催していて、会場には昔から知っているアーティストや雑誌の編集者などがいた。彼らに会うために行ったのだが、たまたま誰かの知り合いで呼ばれた人の中にひとり

イグハラの相談:Anizine

世界の人口と同じだけ理想や正義感や倫理観があって、それらがカチカチとちいさな音を立ててぶつかり合うのがソーシャルメディアだ。 そこに勝敗はなく、ただただリングの上で血を流しているだけ。始末が悪いのはリングと観客席の間にロープはなく、知らないうちにリングに何十人ものレスラーが上がってバトルロワイヤルになっていることも多い。 人が複数いれば完全に一致する結論などは出ないものだけど、会社の会議のように期限や目的が決まっていれば何とかなる。しかしソーシャルメディアではまったく向か

27歳からの老害:Anizine

21歳の男性と話をした。かなり緊張していたが、それもそのはず、彼の父親は俺と2歳しか違わないのだそうだ。俺たちフリーランサーの仕事は年功序列でもないし、数十歳離れた人々がそれぞれの持ち場のプロフェッショナルとして作業をする。ただ年を食っただけで威張れるようなことはない。 むしろ「その年齢でその程度ですか」という恐ろしさに晒されていると言える。普通の会社で20年先に入社した上司と新入社員が対等に話すことはまずないだろう。喫煙所でフランクに話す、みたいなことではない。能力を基準

「ググらずに何かを思い出す」:Anizine

誰かと映画とか音楽の話をしていて、思い出せないからとスマホでググり出す姿があまり美しく見えない。自分の脳が記憶していないことはもう潔く諦めるというエレガントなスタイルがあってもいいんじゃないかと思っている。 友人と食事をしたとき、ひとりが「全員スマホを出せ」と言ったことがある。食事が終わるまで誰もスマホに手をかけてはいけないというルールだった。これはなかなかいいなと感じたのだが、ひとりだけガラケーがいたのも別の意味で面白かった。癖というのは恐ろしいもので、1970年代の女性

驚くべきカードの請求:Anizine

仕事の報酬には二種類ある。手間賃と複製による利益だ。自分がいつもやっている写真やデザインの仕事は手間賃で、ひとつのものを作ったのでギャラはこれだけです、というタイプ。複製というのは音楽のCDや本のように複製されることで印税をもらったりするもののこと。YouTubeの視聴回数による広告収入もこれと似ている。 ふたつの違いは、手間賃というのは昔からあって複製による権利の商売は歴史が浅いということだ。だから若くて新しいことに順応できる人々がそこにいる。YouTubeでマネタイズが