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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2021年8月の記事一覧

反応の速度:Anizine

まずこれを見てください。日本のサービス業の低賃金に言及した大江千里さんの記事に対する最新コメントを引用させてもらいました。 それぞれが大江さんの考えに対して、自分の意見を書いています。Yahooのコメントは順番に並んでいて、すでに多くのコメントが寄せられていることがわかります。これが全体の分量です。 この時点でページが259あることがわかります。記事がアップされて最初に反応する人と、しばらくしてから意見を書き込む人の「ふたつの違い」に気づきました。それが次の画像です。

ロバートが名刺:Anizine(無料記事)

『ロバート・ツルッパゲとの対話』を書いてから、知らない人との接点が増えた。発売の数ヶ月前からAmazonの予約を受け付けたことで助走期間を長くとれたし、アホみたいにインパクトのある表紙をソーシャルメディアに投下し続けたことで、「なんかもう読んだ気がする」「流行っているような印象」と言われたこともある。ある初対面の人に本を渡したとき、「ああ、これ皆がシェアしているから知ってるよ」とも言われた。 広告の仕事にたずさわってきたのに、「自分が出した本という商品が売れない」ようなこと

褒める難しさ:Anizine

俺レベルの丁稚でも自分が撮った写真を褒めてもらうことがあるが、聞かないことにしている。多くの場合、ホメに「根拠」がないことが多いからだ。 モノを作ったときの価値には厳然とした基準があって、それは仕事の評価にも直結している。報酬と言うと大至急生々しくなってしまうけど、10万円で頼まれる人と100万円を支払われる人とでは確実に評価の違いがあり、能力と報酬の関係が矛盾することはほとんどないから、動かしがたい現実としてそれはある。 ゆるやかなホメに根拠がないというのはそこだ。「あ

自分でなければいい:Anizine

簡潔に「自分のことだけ考えよう」。 それは自己中心的に振る舞えという意味ではなくて、他人の家や財布の中身を覗いたりしなくていいということだ。 たとえ誰かが失脚しても自分の地位は上がらないんだから、他人の落ち度ばかり探さなくていい。人が信じることを貶さなくていいし、自分がいかに他の人より優れているかを声高に言わなくていい。みんな自分が選んで信じて、やるべきことを粛々とやっていればいいのだ。 「ホームレスは生きていても害になるだけだから殺せばいい」と言い放った人に対して、困

癌と壷と、知性の沸点:Anizine

「なぜそんなに簡単に納得するんだろう」と思う。 ビジネスでも医療でも教育でもよく似ているが、みんな「こうすれば劇的に解決する」という情報を結論ありきで探している。自分が無意識に仕込んでいるバイアスに気づかずに書店で本を「発見して」ホッとしているのだ。『癌が一瞬で治る!』『英語は3日で話せる!』はずがないだろう。そこで起きるのは誰かが書いた本が売れるという結果だけ。もちろん癌は一瞬で治ることはないし、英語が話せるようにならなくても筆者はまったく責任をとってくれない。 人々の

代替物はニセモノ:Anizine

ここ数ヶ月、精神的に優れない状態が続いている。少し前までは、「こういう状況にも軽やかに順応しちゃう俺」だと思っていたのだが、過信だったようだ。長年慣れていた生活のサイクルが劇的に変化するというのはこれほどまでに精神を蝕むものなのだ、ということがやっとわかってきた。 久しぶりに平林監督とスペースで話したとき、「ワタナベさんは特殊な人体構造をしているから、NASAに解析して欲しいくらいだ」と言われた。二時間程度の睡眠時間をはじめ、すべてが不規則極まりない日常を送っているのに健康

スペースで話したこと:Anizine

昨夜は江口ともみさんと平林監督とのスペース。 どちらもスペースに参加するのは初めてとのことで最初はギクシャクしたものの、話し始めるといつも通りのトーンになった。それぞれの仕事の受け方や自己プロデュースという興味のある議題が一番盛り上がった部分。俺たちふたりは裏方であり立場が似ているが、ともみさんは表側の「タレント」というスタンスから別の視点を提示してくれた。 平林監督は新入社員の頃から知っているんだけど「謙虚な仕事人」というスタイルで確実に実績を積み重ねてきた。俺と正反対

面白さは「賞賛」と直結している:Anizine

面白いことを考えている人と会っていると特に何も思わないんだけど、面白いことをまったく考えていない人と話すと、「あの人たちは特殊な例外だったんだな」と初めて気づく。 どんな職業にも貴賎はないが、種類の違いはある。その職業で求められる基準が真面目さなのか、緻密さなのか、面白さなのか。裁判官なのにふざけている人はダメだし、芸人なのに真面目な人は同じようにダメだ。職業ごとの優劣ではなく、その職業の内部で評価される価値の違いがランキングになっていく。面白さの世界で一番だったり、法曹界