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“カッコいい絵”をつくるには? アニメ演出家が『劇場版 鬼滅の刃』の 煉獄さんのカットで解説

長いタイトルですみません。

こんにちは。アニメ演出家の"おうし"と申します。

大変ありがたいことに、前回の記事に「スキ」をたくさんいただけたので宣言通り続きの記事を書きたいと思います。

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あらためて、スキしていただいた方々、ありがとうございました!とても嬉しいです!


さて、では今回の記事について。

この記事を読んでいただけると、新しい視点でアニメや映画を観ることができるようになるのではないかと思います。少なくともそうなるように頑張ります。

もちろんこれ単体でも楽しんでいただけることを目指しますが、この記事を読む前に前回の記事を読んでいただけると、さらに楽しめるかと思います。

ご興味ある方はぜひ。

▼本日のテーマ


本題に参ります。

今日のテーマは少しの違いで“画面のカッコよさ” はだいぶ変わる』です。

ところで、普段みなさんはどんなことを意識しながらアニメや映画を観ているでしょうか?

・このキャラクターはこの後どうなってしまうんだろう?
・このストーリーのオチは?
・このシーンの意味は? 
   などなど


人によって様々だと思いますが、おそらく “ストーリー” や “キャラクターに起こる出来事” を意識しながら観ている方も多いのではないでしょうか?

一方で、こんな風に思うこともあると思います。例えば... 

「うわ。。!このアクションめっちゃカッコいい!」
「このセリフはもっとカッコいい絵で見せて欲しかった...!!」
 などなど​

つまり、画面の見た目に対しての一喜一憂です。

では、【カッコイイ画面】とはどういうものでしょう?

同じような絵でも、わずかな違いで画面映えするかしないかに大きな差が出ます。“その差を生み出してるものは何か” を、僕なりに解説していきたいと思います。

しかし一枚の絵に対して掘り下げようとすると、必ず↓のようなご意見が出てきます。

「アニメなんだから、静止画で見ても意味が無い」
「アニメは動くことを前提で描かれるものだ」

....たしかにその通りです。。。!

ただ、一枚一枚の静止画の連続がアニメーションを成り立たせているという面もあったりします。

その “一枚の静止画” を積み重ね続けた、“ あたかも映像のように見えるもの” を観て、僕たち観客はアニメや映画に対して「カッコイイ」または「カッコよくない」 などという印象を持つのだと思います。

そこで、今回はあえて映画の最小単位である “一枚の静止画” に対して深掘って考えてみたいと思います。

▼実例で検証


今回は参考として『劇場版 鬼滅の刃』から大ファンである煉獄さんのカットをお借りして説明していきます。

お時間ある方はまずこちらののふたつの予告映像をご覧ください。
※ひとつ目のムービーはネタバレけっこうあるので要注意です)



では、これらの予告から抜粋した下の2枚の静止画を見てください。

1枚目

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2枚目

画像2


かなり似ているレイアウトですが、印象がだいぶ違いますよね。

どちらの絵がカッコいいでしょう?

おそらく多くの方が【2枚目の静止画】を選ばれたのではないでしょうか?(もし違ってたらすみません!好みはもちろん、人それぞれです^ ^)

その理由について、ひとつひとつ要素を分解しながら考えていきます。

【キャラのおさまり】:わずかにサイズ感が違うが似ているレイアウト
【光源】:どちらも下側からのフットライト
【シルエット】:似ているがボリューム感が少し違う
【煉獄さんの表情】:どちらも素敵な笑顔と鋭い目ヂカラ ☺︎


どうでしょう。

明確な理由になっているかというと、、、まだピンとこないですよね?


ここでさらに“光源”と“シルエット”を深堀ります。
光源はふたつとも同じでも “明るさ” が違いますね。

※前回の記事を読んでいただいた方は、ここで「あっ !?」と思われたのではないでしょうか。

これは前回解説した【コントラスト】の差です。つまり【ケレン味】の差ですね。※もしご興味あれば、前回の記事をどうぞ。

画像3

2枚目の煉獄さんの方が影の色がより濃く、光が当たっている部分との差がクッキリしているので、より表情の力強さが出ていますね。

シルエットはどうでしょう。

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ボリューム感の違いを生み出しているのは、髪の毛と羽織りです。

炎のエフェクトによる対流の影響を感じさせるような動的な絵(2枚目)と、左右対象気味になっている静的な絵(1枚目)との差です。これも、前回の記事で触れた「非対称性」から生まれる【ケレン味】の差です。

前回の記事だけではうまく伝えられていなかったかも。。と思ったので、今回のように同じようなレイアウトの絵で比較してみました。前回と今回の構図はまったく違いますが、よりカッコイイ絵を作るための要素は共通しています。

それは僕たちアニメクリエイターの会話中にしょっちゅう出てくる【ケレン味】という要素なんだと思います。

※誤解があるかもしれないので一言加えておきますと、「1枚目の絵がカッコ悪い」と言いたいのではありません。

予告映像をみていただくとわかりますが、1枚目のカットは、『煉獄さんが手前から奥に向かって下がっていって刀を構える』→『カメラが回り込んでから必殺技を放つ』という、とってもボリューミーなアニメーションのカットから1枚だけ抜き出したものです。

対して2枚目のカットはキャラクターに大きな動きはなく表情を見せるためのカットなので、そもそもカットに求められる要件定義が違うのです。

つまり、この作品のこの2カットの優劣を比べる、ということではなく、この2カットを題材にさせていただいて、一般的に【ケレン味】を出すため、つまり ”カッコいい絵を作るための要素はどういうものか” を説明させていただいたという次第です。

まとめ

さて、前回の記事に続いてケレン味という概念をお伝えさせていただきました。まとめます。

ケレン味を出すためには以下の4点を意識するといいかもしれません。

①画面のコントラスト
②遠景・中景・近景のバランス
③アニメーションのメリハリ(タメツメ)
④対称性を(自然に)崩した構図   ※例外あり

②については前回の記事をご参考ください。③についてはまた別の機会でお伝えできればと思います。

疑問点や、「この作品で解説して欲しい」などのリクエストがあればご連絡ください。

イラストやデザイン、そして今後のアニメを見る際の参考になれば幸いです。

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