マガジンのカバー画像

シネマde 三昧

7
運営しているクリエイター

記事一覧

『歩いて見た世界/ブルース・チャトウィンの足跡』を見る

『歩いて見た世界/ブルース・チャトウィンの足跡』を見る

岩波ホールは7月29日をもって、54年の歴史に幕を降ろす。エキプド・シネマの発足年の初期会員だったボクとしては、沢山の名作を届けてくれてありがとうの感謝の思いとともに、掉尾を飾る『歩いて見た世界/ブルース・チャトウィンの足跡』(ヴェルナー・ヘルツォーク監督2019年英仏スコットランド合作。85分)を観て来た。
さて、ドキュメントと朗読(チャトウィン自身による『パタゴニア』、監督による『ソングライン

もっとみる
美少年は聖者となった

美少年は聖者となった

先日「川越スカラ座」に『ミッドサマー』(2019年・アメリカ)を観に行った時、直前の上映作品は『世界で一番美しい少年』(2021年・スウェーデン)だった。ぼくはこのプログラム編成に思わず唸ってしまった。この二つの映画作品には、ひとりの俳優が共通して出演しており、『世界で…』は、そのデビュー作にまつわる狂熱を描いたドキュメンタリー作品であり、『ミッドサマー』はその男優が50年ぶりにスクリーン復帰した

もっとみる
ミッドサマーの祝祭とカルト・コミューン

ミッドサマーの祝祭とカルト・コミューン

一般公開の最後の最後にやっと鑑賞した(「川越スカラ座」2022年4月1日)。世にカルトムービーとして世評も高いと言うか騒(ざわ)めかせている。これは一度や、二度と見ただけでは埋め込まれ考え抜かれた構造、伏線を解き明かすのは不可能だろう。とは言えしばらく再びみるのは叶いそうもないのでここで初見の感想を書いてしまうことにする。
考え抜かれたとは言ってもそれは設定、脚本であって(脚本・監督はアリ・アスタ

もっとみる

『シュヴァルの理想宮』 (承前)

アンドレ・ブルトンらが素朴派の壮大な奇想の建築物として激賞、一郵便局員シュヴァルの名前を、一躍世界に知らしめた。
のち文化大臣だったマルローらの手によってフランスの重要文化財に指定される。
「夢は実現する」。シュヴァルのパレにシュヴァル自身によって掲げられた言葉だ。

もっとみる