「私らしさ」を表現するもの。ミュージアムグッズに魅了されたなつこさんのアートとの向き合い方
近年ミュージアムグッズが熱い。ミュージアムグッズとは、美術館や博物館が販売する、美術品をデザイン化したTシャツや小物類などのオリジナル商品のこと。自宅でもアートを気軽に楽しめることから、プレゼントとしても人気が高まっているのだそう。
今回インタビューをしたのは、女性向けオンラインスキルスクール「SHElikes」でライティングを学びながら、エッセイ執筆などをされているなつこさん。友人の影響で大学生の頃から美術館巡りをするようになり、アート鑑賞はもちろん、各美術館でのグッズ購入が楽しみの1つなのだとか。
「グッズは集めるよりも、積極的に選び、使うプロセスに重きを置いています」というなつこさんの独特のアートやアートグッズとの向き合い方、そしてアートが苦手な人でも気軽に楽しめるようになる方法など、たっぷりお話しいただきました。
狭く深くよりも自由に泳ぎたい!自分の幅を広げるアートの楽しみ方
――美術館では、普段どのようなことを考えながら作品を鑑賞されているのでしょうか。
1つ1つの作品を面と向かって直接見る機会はなかなかないので、それぞれの絵画を時間をかけて見てまわります。
じっくり見ていると、不思議なことに最初はピンと来なくても、だんだんと好きになってくる作品があるんです。そうやって絵と向き合う時間がすごく楽しいです。
たとえば、「この絵に書いてあるこの線って、どういう思いで書いたのかな」とか、「この色って、どういう気持ちや意図で選んだのかな」と考えたりします。そうやって自分で分からないなりに考える時間が楽しいですし、自分の考え方の幅を広げてくれるように感じています。
――特に好きな画家はいらっしゃいますか。
「日本画家だったらこの人、洋画家だったらこの人、 写真家だったらこの人が好き」というのはあるのですが、アート全体で「特にこの人が好き」というのはないですね。
さっきお話したように、自分の幅を広げてくれるものとして美術館に行っているので「この人の作品だからずっと見る」というのは、自分の考え方の幅を狭めてしまう気がして。
むしろ全然聞いたことのないアーティストの展示会にあえて行ってみたり、 前情報なしで行ってみるほうが、私の鑑賞のスタイルとしては合ってるかなって思います。
よく分からないまま受け止める。そこから広がる世界を楽しむ
――私も含めて、アート鑑賞に苦手意識がある人も多いと思いますが、そんな人でもアートを気軽に楽しむ方法はありますか。
「正解を探さなきゃいけない」という気持ちを取っ払ってみてはいかがでしょうか。
私もアート鑑賞をしていると、いまいちピンとこないものと出会うこともあります。でもピンとこないものは「ああ、今の私にとってはこの絵はピンとこないんだな」って思えたら、それも、ひとつの気付きだと思います。
たとえば、あまりピンとこない絵が2枚並んでいたとして、その「ピンとこない」という感覚を否定するのではなく、「どっちもピンとこないなりに、何か好きな部分があるのってどっちだろう」という見方をしてみるんです。
すると、最初はよく分からないと思っていた作品でも、次第に自分が好きだなと思うポイントが見つかったり、自分の好みや価値観に気付くことができます。
ちなみに私はそういう作品に出合ったら、全体を見るのを1回やめて作品に近づいて、 どこか10センチ四方ぐらいのところを見始めます。
そうすると、「あ、ここの色使いめっちゃ面白いじゃん」とか、「ここの形面白いな」って気付くんですよね。
全体としては何が書いてあるかよく分からないけど、その中の1部分だけでも好きなポイントを見つけてみる。そうすると、自分の価値観や考えが広がっていくと思うので、ぜひやってみてください!
能動的に対峙する。たった1枚のポストカードを「選ぶ」こと
――毎回、各美術館でのアートグッズ購入を楽しみにしてると伺いました。これまでにどのようなアートグッズを購入してきたのでしょうか。
数として1番多いのは、ポストカードです。安く買えるし、場所も取らなくて、気軽に手に取れるグッズでもあるので。
実は、学生時代にお金がなくて、美術館の入場料を支払うだけで精一杯という時期がありました。それでも「何か買って帰りたいな」と思ったときに、「ポストカード1枚だけ」と決めて買うことを楽しみにしてたんです。
それからは、どの展覧会でもポストカードを購入するようになりました。何種類もポストカードが並んでいるところから、「自分はこれ」というたった1枚を選ぶ行為を通して、自分の好みや、そのときの気分を知ることができます。
その買ってきたポストカードを後々見返してみると「あ、そっか、当時の私はこれが好きだったんだ」といったことが分かるので、そういうのも楽しいですね。
「使う」「選ぶ」を大切に。自己理解と自己表現のアートグッズ
――特に思い入れの強いアートグッズはありますか。
ソール・ライターという写真家のトートバッグです。そのトートバッグには、彼の写真が大きくグラフィックとして載っていて、かつビビットな色が入っているので、ファッションのワンポイントとして使うのを楽しんでいます。
あとは、彼のスタンスや価値観も好きなんです。元々、商業写真家として雑誌や広告の写真などを撮っていた方なのですが、晩年はその商業写真の仕事を辞めて、ニューヨークのごく狭い範囲だけで、膨大な写真を撮り続けた方でした。
たとえば、このトートバッグには、ショーウィンドウのガラスに映った街の風景と、ガラスの向こう側のお店の風景が一緒に写ってる写真が載っています。
それは、すごくハッとさせられる写真なんですけど、どこか特別な場所に行ったとか、すごく遠くに行って撮影したわけではなくて、彼が住んでいた、ごく狭いエリアで撮ってるんですよね。
そのトートバッグを持っていると、「面白い瞬間とか、ハッとする瞬間って、別に特別なことをしなくても身の回りにあるんだな」ということを思いださせてくれます。
――アートグッズを身につけることは、なつこさんにとってどのような意味を持つのでしょうか。
自己表現の1つです。たとえば、私が街中で他の人を見て「あ、あの人、誰々が描いた絵の服を着てる」と気付いたとき、その人のことをまったく知らなくても少し親近感が湧いたり、心がほっこりします。
そういう「分かる人には分かる」みたいな自己表現が好きですし、「自分もそう思われる側になりたいな」という気持ちはありますね。あとはグッズを身につけることで、お気に入りの絵や写真が自分の視界に入ってくることがすごくうれしいです。
――なつこさんにとって、アートグッズとはどのような存在なのでしょうか。
グッズを「集める」というよりは、「選ぶ」や「使う」ことに自分の重きがあると思っています。
買ってきたグッズの保管方法も、めちゃくちゃ適当なんです!綺麗にファイリングもしてなくて、簡単に袋に入れたり、箱に入れるぐらいで。
でも「選ぶ」という点では、さっきのポストカードみたいに、たくさんグッズがある中でどれを選ぶのか。自分の好みやその時の価値観、感情に気づく方法の1つだと思っています。
「使う」という点では、自分を表現したり、生活の中で目に入ってきて気持ちを動かしてくれる、そういう存在ですね。
――読者の皆さんに向けて、アートグッズを気軽に取り入れる方法を教えていただきたいです。
私のようにアート鑑賞が好きな方であれば、ぜひ美術館や博物館に出向いて、いろいろな絵画を鑑賞しながら自分の世界を広げてほしいです。その体験を経てから、最後にショップでグッズを選ぶと、グッズへの思い入れがより強くなるんですよね。
アート鑑賞に馴染みがない方でも、今はオンラインで気軽にアートグッズが購入できます。
ファッションアイテムとして身につけられるグッズもありますし、家の中で飾ってインテリアのように楽しんだり、ハイセンスなグッズであればご友人へのプレゼントとしても喜ばれると思います。
どれを選んだとしても人と被ることが少なく、価格帯もポストカードや便箋のように数百円代から購入できる商品があることもアートグッズの魅力です。ぜひ自分が心動かされるグッズを探して、日常に取り入れてみてください。
♢インタビュィー紹介
なつこ
ライター。趣味は音楽と美術館巡り。
持ち前の好奇心を活かして、読んだ人が新しい挑戦をできるような文章を書くことがモットー。1994年夏生まれ。
♢記事の企画意図とテーマ設定
1. 企画
・メディアの方針(ビジョン・ミッション):
メルカリマガジンは、「好きなものと生きていく」をテーマにしたライフスタイルマガジン。いろいろな方の愛用品や好きなものを通して、人生の楽しみ方や生き方の多様性を紹介できればと思います。
・読者層(年齢・職業など):
20代後半〜50代までの幅広い社会人の年齢層
アーティスト、偏愛家、サラリーマン、
・注目されているトピック:
#モノガタリ #キャンプ #メルカリ活用術 #偏愛
・トーン&マナー:ですます調
・世間の動き:
ひとつのモノに偏愛的にこだわったビジネスが注目されている。
例:「白いTシャツ」だけを集めた専門店→生地、デザイン、製法、生産国など、異なる個性を持った白無地Tシャツだけを多数取り揃えて話題に。
食パン専門店→「3種類の食パン」だけを販売するスタイルで連日大行列のできる人気ぶり。
ストーリーマーケティング
モノ消費からモノがたり消費へ。ブログで職人や販売員の思いを発信し、ものづくりへの姿勢にファンが生まれている「土屋鞄(かばん)」は、メルマガで一人ひとりの社員のストーリーを発信することでファンを増やしている通販サイトの「ファクトリエ」なども、よい事例。
2. 読者のペルソナ設定
属性
・年齢:30歳
・性別:女性
・家族構成:母、父、妹の4人家族 現在は都内で一人暮らし
・居住地:東京在住、千葉出身
・収入:400万円前後
・学歴:大学卒業
・経歴:接客業を経て、現在はIT企業の事務職
価値観
・趣味:
美術館巡り カメラ 雑貨集め セレクトショップ巡り 海外旅行
・嗜好、娯楽の傾向:
こだわって作られているものが好き
洋服や小物で自分を表現したい
人と被らないものを身につけたい
・人生観:
自分の価値観や軸を大事に生きていきたい
たくさんお金を稼いで派手な生活をするよりは、自分にとって心地が良いものを買えたり、快適な生活を送れるための必要最低限の収入があれば良い。
好きな人やモノを応援したい
・悩んでいる/不安に思っていること:
お付き合いしている彼氏との結婚や今後の生活
やりがいを感じられない今の仕事を続けていくかどうか
趣味に使えるお金をもう少し増やしたい
・ファッションの傾向:
流行りに影響されることなく、自分が本当に気に入った洋服を身につける
推しのアーティストのファッショングッズなど、自己表現ができるアイテムを取り入れる
・使っているSNS:instagram note
3. 記事のテーマ
・テーマ:私らしさを表現するアートグッズ
・なぜそのテーマを取り上げるのか
アートというと敷居が高いイメージがあるが、自己表現としてのアートグッズという切り口で、ファッションやインテリアとして取り入れることができ、自分の好みや価値観を表現するツールにもなることを伝え、読者にアートグッズを気軽に取り入れてもらうため。
近年は美術館や博物館に出向かずとも、オンライン上で誰でも簡単にアートグッズを購入できるようになった。メルカリ上にもアートグッズ関連商品が多く出品されているので、購入に繋げていく記事に仕上げたい。
4. 記事のスタイル
・イメージするスタイルのURL:
https://magazine.mercari.com/series/sukina_mono/yo_yoshida
・なぜそのスタイルを使用するのか
吉田羊さんがアンティーク着物をただのコレクションとするのではなく、実用的に使い親しむことをテーマに掘り下げている点、自身の審美眼を養うことを大切にしている点などが、今回のテーマと合うスタイルかなと感じました。またインタビュアーとインタビュイーのやり取りよりも、インタビュイーの言葉を中心として文章にしてしっかり読者にモノとの向き合い方を伝えていきたいので、こちらのスタイルを選びました。
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