1回目の手術後

手術が終わって移された階は、始めに救急車で運ばれて来た時に来たところと同じ3階だった。この階は出入りが激しくて、患者も看護師も多くて、ICUほどじゃないけど注意が必要な人たち、比較的手がかかるとか目をかける必要がある人たちが入る階だった。

看護師に中学の時の同級生がいてとても驚いた。ここに数日いる間は、手術する前とほとんど状況が変わらなかった。頭は痛いし、相変わらず人前でもこらえきれず吐くし、加えて髄液が噴出しそうで、ほんとに手術したよね?て気持ちだった。

でも少しずつ痛み止めの量が減っていって、吐く回数も減ってきて、髄液の流れを感じなくなってきた。お風呂が入れるようになったころにはだいぶ落ち着いた。まだ頭が痛くなることはあったから、薬は多々飲む機会があったけど、ご飯も少しずつ食べられるようになった。

10階に移ってからは4人部屋を多くても3人くらいで使って、1人になることもあった。3階に比べるとずいぶん人も少ないしナースの数も少なくて静かでよかった。でもここでも看護師さんが新卒ばかりだったから注射とかいろいろ失敗されることは多かった。

妹の同級生がいて、悪い子じゃないけどいろいろ雑だなぁって思った。3階でも思ったけど知り合いの同級生とか、妹の同級生とかに世話してもらうのは何となく微妙だなって思った。

今考えたら、私はこれまで大病も長期の入院もしたことがなくて、病院での入院生活がどんなものかよくわからなかったから、この病院で経験することは病院のあたりまえだと思っていた。もちろんそういうこともあっただろうけど、病院によって全然違うし、この病院独特のものだったと後で気づいたことも多かった。病院①を退院した後、あと2か所入院するけど、それぞれ入院中の環境は全然違った。治療の内容も期間も違うから、一概には比べられないけど。

術後10日もすればもうだいぶ良くなって、体力はかなり落ちていたけど自分のことは全部自分でできるようになったし、マンガ読んだりする余裕も出てきた。術後は病理検査の結果を待っていたのだけど、外部に依頼するから時間がかかるといわれて、とりあえずただただ待っていた。途中からリハビリを始めることになったけど、正直覚えてない(このリハビリの話をしに来た先生が偉そうになんでも知った顔する人で、気さくな雰囲気出しながらも反論させないみたいなおじさんだった。周りに子分?を連れていて、自称カリスマみたいな雰囲気でとにかく本当にいやだった。この病院は1日1回、回診の時間があるって、毎回違う偉そうな先生がドラマみたいに子分をひき連れて患者のとこ回って、こっちは見たこともない先生なのに患者を一瞥して何か言って、子分たちがうなずきながら謎のメモとっていた。気持ち悪いな、いやだなって毎日毎日思っていた)。

リハビリは特にためになっているとも思えず、面倒だなと思いながらこなしていた。入院生活に飽きたところで、ある日突然退院になった。体調は落ち着いたし結果が出るまでまだ時間がかかるから自宅で待ちましょうってことだった。だったらもう少し早く退院できたのでは?とも思うけど、この病院はとにかくいろんな対応が遅いからしょうがなかったのかな。

この時私は、どうせまた今後の治療に来るから一時退院なのだと思いながら、看護婦さんたちに挨拶した。結果出るまでは時間がかかるとは言われていたけど、最終的に結果が出て病院に再度通院したのは、退院後3週間くらいたってからだった。そして言われた病名が、「中間型松果体実質腫瘍(PPTID)」グレードⅡ~Ⅲ。もちろん病名聞いて何がわかるわけでもなく、別の記事にも書いたけどとにかく珍しいからよくわからない腫瘍だということだけ説明された。

病院①で治療するならガンマナイフ(病院①がやたら使いたがる特別な定位放射線治療)か、化学療法(つまり抗がん剤治療)をやってみて、それでも治らなかったら手術になるけどこれはリスク高すぎるから本当に最終手段ということだった。

私は病気の期間を振り返った時に、頭の中が真っ白になるとか、ショックで言葉を失うとか、そういうことはなかったな、と思う。なんというか、頭のどこかでいつも、「なるようにしかならん」とか「まぁどうにかなるしょ」みたいな考えがあって、普段は本当に些細なことでもうじうじ考え込んだり、何度も同じことを繰り返し反省したりして気分が不安定になることが多いのに、病気が発覚してから今まで、病気に事に関して負のループに入ってどんどん重くしたり悪い方向に考えたりっていうことはしていないように思う。

もちろん不安になったり、焦ったりすることはあったし、いまでもあるけど、ほかの物事みたいに自分の中でどうしようもない問題に発展させてしまうというか、出口が見えなくなるというか、自分を責めるというか、とにかく重くどうしようもないものにしてしまうことがなかった。今考えても不思議だけど、本当に全然なかった。理不尽さみたいなものもほとんど感じていなくて、「もう自分ではどうしようもないことだから、考えても仕方ない」って思えていたのかもしれない。受け入れるしかないって。私が選んでいくのはそれに対してどうするかってことだって。

最近わかったけど、自分の感情は自分である程度どうにかできるけど、周りの感情や受け止め方って私にはもうどうにもできない。自分の手を離れたところでの出来事って、まったく干渉できないわけではないのかもしれないけど、基本的にはどうしようもない。受け取り方は人によって違うし、感じ方考え方も当然違うし、渡したものが私の思ったように受け取られるかもわからない。

でもそれは双方のどちらが悪いとかではなくて、それは考え方の違いで、そういうものありきで人は成り立っていると思う。だから自分のことは反省するけど、相手を変えるのは無理で、起こってしまったことをどうこうするのも無理で。私は私のコントロールしかできない。だから私は私を大切にして、コントロールしたいって今は思う。

家に帰って、病気と治療について調べていたら澤村先生のHPを見つけた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?