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水たまりに映る波紋は人のなかにいることを報せる

日時指定チケットを購入しても
多くの人が早めに来ていて
蛇の道のように列はつづく
それだけ心は逸るし、躍っている

筆致や色の滲みの跡が知りたくて
ついつい作品を覗き込んでしまう
作者の思う距離感ではないよね
と思い直して毎度遠くから眺め直す
どうやったらそんな風に描けるのだろう
不思議でたまらない
定点で撮った作画風景は
魔法を見ているかのようだ



とてもとても混むエリアだと分かっているから
少し早いかなと思ったけれどお昼ごはんを
食べることにした

混みはじめたお店で食事をはじめると
ひとりでにたくさんの情報が入ってくる

ずっと膝の上で甘える小さな女の子
目を細めるお父さん
外国人の方が増えたなあと思う

お肉がお皿に盛られるたび
お母さんが小さく切ってあげて
それを楽しそうに食べる男の子
小学校低学年くらいかしら
お姉ちゃんもそれを見て笑い
お母さんと同じ言い方で
声をそろえるみたいに
『ケーキが美味しそう、かわいいね』
と声を上げる
静かに見守るお父さん
お子さんはお母さん似だね
お顔が似てるだけじゃなく
楽しそうにしてるのがすごく似ている
とっても素敵なお母さんだなあと思った

かと思えば、私のお腹がだいぶ満足した
くらいに隣に着席した女性2人組のうちの
おひとりのご家庭はとても大変そうだった
聞くつもりはなかったけれど
不満に比例して愚痴が進むたび
声が大きくなっていった

こうしてひとの間にいると
なんだかひとりでに涙が出そうになる
今日は何だかとてもそれが強く出て
必死に泣いてしまうのをこらえた
何の涙かは分からないけれど
ひとりでに入ってきてそして
響くものは大きい、ということ

時間を空けないうちにてがみを書こう
いつも何を書くか決めていないけれど
頃合いとして丁度良いと何だか思った


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