メニューを一緒に覗き込むといつもよりお腹が空くような気がしないかい?
◇
久しぶりの美術館
人それぞれ足を止める場所は違うもの
そんなら当たり前を
知らないひとのそれと
知っているひとのそれとそれとでは
感じ方はまた違うものだと思った
私はね戦争を嫌いつつ
きょうだいが赴くことを止められなかった
母を思わず責めてしまう詩に
何度も足を向けてしまっていたんだよ
日々は新しいことを知ることと
再認識の繰り返しだ
◇
お料理を食べ終わる頃
私はすっかり聞き役として
その場に馴染ませてもらっていることを
天井あたりに旋回する小鳥が
確認し終えていた
話を聞くことはもちろん好きだが
話をしているひとの顔と
話を聞いているひとの顔とを
交互に見ることが好きだ
ことば以上につながっていて
目には見えないものが連なっている
◇
知らないでいたことがいつの間にか
当たり前になってしまっていたと気がつくのは、
誰かとどこかに出かけた時だと思った
暮らしの軸足が変わるうち
はじめて見た時のことよりも
見慣れてしまった感覚の方が強くなっている
誰かとどこかに出かけると
はじめて見た時の私も一緒に連れている
ような気持ちがする
あの日歩いたことをまだ覚えている
◇
そうか、ひとりで見られることには
限界があるからこそ
寄り集まって、見聞きしたことを
伝え合うのだよね
知らない土地のお祭りのこと
一度もしたことのない競技のこと
海の向こうの外国のこと
世の中にはたくさんの素晴らしいアートが
あるということ
私はいったい何を伝えられるのだろう
そう思いながら、それを考えて話したらきっと
陳腐なものになってしまうのだろうな
私は私の日々を生きて
それを話せる機会を作ることができたなら
少しは喜んでもらえるかもしれない
曇り空の方が私にはまぶしく感じる
街の賑わいも、誰かの生き方やおはなしも
とてもまぶしいけれど心地が良い
いつも勝ち負けや批評で
自分を高めるために誰かを下に見るような
ことばかりしていたらそうは思わないとは思う
感謝は何度言っても良いし
早く伝えた方が良いと改めて学んだから
急いで伝えなくちゃ
ありがとう
たんなるにっき(その127)
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