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散歩と旅の違いを見失う

朝、10時の段階で
歩くこと17,000歩

大きなターミナル駅に
朝一番で来て
さあ、たびに出よう
と思ったものの
色々あって気が削がれて断念

ならばと、ひたすら歩いている
実家まで歩いて帰るのが
いつかの夢だけれど
実現までには気持ちのハードルが
いくつもいくつもありそうだ

年末年始なのだということに
なかなか気づけない生活と
気づかないようにする思考回路
美術館は軒並みおやすみに入って
しまっているから残念だ

空いている美術館もあったけれど
やっぱり興味がわかない
ならば仕方あるまい
ためらいがちに歩き始める
電車で1時間以上かけてやってきた
ここから歩いて帰ってみよう



大都会の街並みも次のイベントまでの
小休止のように見える
大きな窓のカフェでお食事をする
おばあちゃまがとてもかわいらしい
街並みに溶け込んで落ち着いて
気品のようなものがあるけれど
食事のときのにんげんはかわいい
と私は思う

歩けど歩けども進んだ気がしないけれど
歩いたら歩いたぶんだけ街は変わる
下町風情感じるひと区画に入った頃
ちいさなお祭りに出会う
長い川沿いの遊歩道にはたくさんのランナー
街に合わせてひとが変わってゆく
空も変わってゆく

それにしてもどこを歩いても
山が見えない
地元にいた頃はどこを見渡しても
盆地の四方遠くには必ず山があった
山に守られているような気がしていた

更に進むうち、少年野球団の試合に出会う
親御さんたちが見守るなかサードゴロ
あっと、悪送球
『だいじょぶ、だいじょぶ』
通りすがりのエールよ届け、ひとりで頷く



半分に届こうかという頃、私よりも先に
スマートフォンが根を上げたので
両方が回復できるファミリーレストランに入る
受付のタブレットで戸惑う男性がいたので
お声かけをした
『あぁ、ここか』とまるで自分で気づいた
ひとりごとみたいに声を出した
(私、いるよね?)
私も心のなかで確認の問いかけをする

狭くて曲がりくねったいちばん奥の
隅っこに通される
綱引きのしんがりになった気分がした

充電をはじめるとイヤフォンが外れるから
周りのこえがよく聞こえるようになる
別の女性がタブレットの使い方に苦戦して
店員さんに指示を仰いでいた
今後のためには教えて差し上げるのが
良いのだろうけれど、
注文も聞いて差し上げたらどうかしら
と余計なお世話が浮かんだから
お水で流し込んだ

隣は若い男性が仕事の勉強をしていたようで
片方の男性が一生懸命自前のタブレットで
説明をしていた
(ついさっき似た光景を見たような)
教えてもらってる側の相槌は
分かってないんだろうなあ、と思わせる相槌で
挙げ句には、『うん』と言いながら
生あくびまでしてしまう始末、いや不始末
教えてもらってるときは、
分からないなら分からないと言ってしまう方が
むしろお作法としては良いと思うけどな
あ、と思い直してお水をもうひと口

食事を終えてルートに戻ると
県境を越えたせいか一気に雰囲気が変わる
物流を支えるバイパス道路
ちいさな工場や住居は隙間を惜しむように並ぶ
仲良くお散歩をする老夫婦を
部活動を終えた自転車の群れが追い越してゆく
こういう風景、好き

仕事納めで大掃除をしている会社が目立つ
みんなたくさんお掃除をするこの時期は
いつもより少しだけきれいなんだな
と思うと幾分良い気持ちがした

大小合わせて20近くの橋を渡り
ようやく辿り着く
あれこれと寄り道もして30キロを超える
道に足を置いた

散歩というには歩きすぎたし
旅というには近すぎた
ただ、歩くといつも見過ごしていることに
たくさん気づくことができる
そう、立ち止まっているときよりもずっと


たんなるにっき(その87)

※62,000歩ほど歩いてました

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