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残響音によるユニゾン

声だけがする夢をみて
もうひとりの私はその主が誰かを
懸命に探したのでした

やがてそれが誰の声なのか
どうして声だけなのかを理解しました

日ごと青い穂を実らせる田圃がある一方で
同じ背丈でも真っ直ぐなままの
それらが隣合わせており
それはどうしてだろうか
と考えを巡らせはしても
歩を止めることはありませんでした

雨戸を開けてみると、
明け方の空は数日前より幾分暗いままで
声だけがする夢を思い出すには
数日前より向いている気がしました

懐かしき声は思い通りに思い出すことは
今はできません
不便なものですね
声だけがする夢をもう一度見ることは
できないのです
不便なものですね
懐かしき声を思い出すことができないから
声だけがする夢を思い出そうとしている
だなんて

暗い夜から明け方を迎えるまで
青い穂は一体どうしているのでしょうね
膨らみを大きくしているでしょうか
痛みを伴うことなくいるでしょうか
鳥の羽ばたきで不意についた傷は
慣れて癒えているでしょうか

暗い夜を特急電車のように眠りで過ぎて
緩やかに穏やかに眼をあけて
伸ばした腕の先に誰かの髪が触れるような
朝を はじまりの朝を 朝のはじまりを
あなたは過ごせているでしょうか

声だけがする夢を探して
朝を待ちながら
そんなことを考えていたのでした

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