Type5 electric wood bass. 五号機
楽器って道具ですか?美術品ですか?
これは人によって大きく異る答えになる問題だと思います。
古いコントラバスって大体汚いですよね。
汚いという文字の感じ方にもよりますが。
新品のストラトキャスターよりは汚いと僕は思います。
まぁそれは細かいことなので、気にしなくても良いですが、
僕の持てる可能な限りの美しさを形にした四号機、を作ったときに僕はそれを感じました。
たとえチープな美しくない楽器であってもミュージシャンが求める音が出ればそれはそれで有りなのではないか。
そう思いました。
そして、人はどこまでのチープさなら楽器として許せるのか、と考えました。
要は、五号機は四号機改の可能な限りのコストカットをしよう。でも、それでも、美しいと感じるデザインにしよう。
ということです。
更にPUの大幅な進化、研究を目的に作りました。
このベースは五号機で5本目に作ったオリジナルシェイプの楽器になります。
もはや、シェイプだけがオリジナルというわけではありませんが。
なので、なんでこう言う仕組みのベースを作ってるかは四号機改の解説をご覧ください。
あんまりおおっぴらに言えない気持ちが書いてあります。
3Dプリンターはものを作る上での製作方法の一部であり、それをこの子の特徴にしたいわけではありません。
もちろん3Dプリンターだからこそできる造形と言うのがあると思うので、それはそれで面白く、奥深い世界ではあると思います。
今回五号機で僕が3Dプリンターを使って製作した理由はコストカットです。
材料費はもちろんですが、時間。人件費を大幅に削減する為に選択しました。
四号機に対して、コストは約2/3、製作期間は1/2になりました。
僕がアニメ観ている間に部品を作ってくれるのです。夢のようですね。
(現実はそう甘くありません)
苦労した点は3Dプリンターならではの製作のしづらさです。
木を削って作った方が早い…なんて部品もありました。
樹脂に対する条件出しが難しかったです。
得た教訓としては、何を3Dプリンターで作れば効率が良いのか、最適なのかがわかりました。
六号機に活かせればと思っています。
五号機は非売品です。
物としてのクオリティが僕の売っていい基準に達していない為です。
ただ、音は四号機改とも比べて、よりコントラバスに近づけたかな。と思っています。
ただ、こうも思いつつあります。
コントラバスの音で良いのか。
ただ小さいけれどコントラバスの音を出す楽器。
それで良いのか。
そう思いつつもあります。
コントラバスに達していない時点でそんな事を考えて良いのか、という気持ちもあります。
難しいですね。
楽器を作った製作者の思い、音が、
プレイヤーの求める思い、音、である事、それはほとんどの場合多分無いです。
特に僕の作るようなよく分からない楽器は両者の思い、音が合致しない事が殆どだと思います。
僕の中では、五号機は普段エレキベースを弾いているプレイヤーや作曲者さんにエレキベースと大差なく使ってもらえる。さらに可能な限り安く作り、大衆に広がればと思い製作しました。
安いと言っても30万円ほどになる予定でした。
高いですよね。でも弦だけでも2万円以上しますからね…
個人で作る限界の価格帯ではあると思います。
限界コストカットの塊です。
そして、「コントラバスっぽい音がもっといろんな音楽ジャンルに広がれば良いな。」
と、思いました。
いや、今でも思っています。
思っていますし、いつかそうさせます。
比べるのもおこがましいかも知れませんが、
四号機改は独立時計師さんが作る時計。
五号機はチープカシオ。
そんなイメージを持っていました。
分かっていただけるかな…
一方は美術品と言っても良いくらいのもの、
もう一方はシンプルに安くカジュアルなに使える。
両者は同じ時間を知るための道具なのに全く違う意味、値段です。
こう思います。
どっちになれば良いのだろう。
そんな事を考えています。
いや、迫られています。
2023/05/17
Andy bass&guitar 安達Andy 航紀