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部活動 悲痛な願いは 届かない – 沖縄県

高校生が部活動のあり方に声をあげました。
「私たちは人形ではない、理不尽な指導をやめてほしい。」など。

高校生16人は、部活動の顧問からの執拗(しつよう)な叱責(しっせき)を受けた運動部男子生徒が自死したことをきっかけに設けられた検討委員会の委員。
「誰が悪いということではない。指導者、部活生、保護者、みんなで変わっていこうと伝えたかった」(前原高野球部3年)

琉球新報 2023年5月27日の記事

残念なことに、肝心の教育関係者は、公正な教育には関心がないようです。


1.問題提起

問題提起は、学校部活動研究部 @wu76jgS82zThc8u さんによる、Xでの、次のコメントです。


2.高校部活生メッセージ2 0 2 3

次の文は「高校部活生ぶかつせいメッセージ2 0 2 3」です。

沖縄県高校部活生メッセージ2 0 2 3(にーまるに-さん)
~変えよう部活、変えよう未来~

 私たちは、部活動をすることで「仲間とコミュニケーションがとれ絆を深めることができる」「仲間と切磋琢磨することで自分自身も成長できる」「礼儀が学べる」など、たくさんの良い点があることを実感しています。しかし同時に「指導者に自分の意見が言いづらい」「勉強との両立が難しい」「指導者同士の指導方針の違いで戸惑う」など、多くの困りごともあります。たくさんの仲間が指導者と信頼関係を築けている一方で、今もハラスメントに苦しむ仲間が多くいることを知っています。過去には、高校運動部員が自ら命を絶つという痛ましい出来事が起こっています。
 このような状況の中、私たちは「暴力・暴言・ハラスメントゼロの部活動」を実現するために集まり「ブカツは私たちのモノ」を合言葉に、私たちがイメージする部活動の未来について議論し、今伝えたいことをまとめました。ここに部活動への希望と期待を込め、次のメッセージを発信します。

指導者へ
・私たちとコミュニケーションを取りやすい環境を作ってほしい。
・私たちの意見が尊重されるチームを一緒に作りたい。
・私たちは人形ではない、理不尽な指導をやめてほしい。
・互いで決めた目標に向かってハラスメントの無い指導をしてほしい。
・同じチーム内での指導者同士の指導方針の違いを無くしてほしい。

学校へ
・私たちが安心して活動できる安全な環境を作ってほしい。
・指導者を集めて、指導方法を改めて確認してほしい。
・定期的に部活動のハラスメント実態調査を実施してほしい。
・小さなことでも隠さずにすぐ対応し、文武両道を目指せる学校を作ってほしい。

部活生仲間へ
・先輩後輩関係なく、悩みがあれば相談し合おう。
・互いに切磋琢磨しながら成長していこう。
・支えてもらっているすべての方に感謝し日々取り組んでいこう。
・自分の発言で仲間が傷ついていないか考え、ポジティブな発言を心がけよう。

保護者へ
・私たちの成長を見守ってほしい。
・私たちの部活動に関心を持ってほしい。
・私たちの声に耳を傾けてほしい。
・私たちの味方でいてほしい。

 以上、部活動に関わる全ての人たちが互いを尊重し、協力し合いながら成長できる誇れるBUKATSUブカツが実現できるよう、沖縄からそして日本全国からも部活動により二度と命が奪われることがないよう願いを込めて、このメッセージを届けます。
令和5(2023)年2月6日
沖縄県高校部活生メッセージ2 0 2 3検討委員会

「高校部活生メッセージ2 0 2 3」 沖縄県高校部活生メッセージ2 0 2 3検討委員会 2023年2月 


(参考)次は画像データ版です。

「高校部活生メッセージ2 0 2 3」 沖縄県高校部活生メッセージ2 0 2 3検討委員会 2023年2月


概要は次のYoutubeをご覧ください。




沖縄県のホームページは次のとおりです。

沖縄県のホームページ


3.学校教育の根本問題

スポーツ競技は勝利主義です。

勝利主義とは、勝った者に対して多くの資源を配分するという思想です。
ここに教育上の欠陥があります。

勝利主義は、容易に、勝利至上主義に移行します。
移行することの方が当事者にとって理にかなった行動なのです。

勝者は自画自賛します。敗者も勝者をたたえます。
勝利主義を徹底し、至上主義に移行する方が、(少なくとも勝者の立場から見た)組織は安定します。勝者は、その厳しい状況の中で勝ち抜いたのですから、英雄度が高められていきます。

仮に敗者が勝利主義に批判をするようになった場合、体育会系はこわれてしまいます。
このため、体育会系としては、「考えさせない」ことを関係者に徹底させます。もちろん、そのような行為は批判されますので、批判をけるためスポーツ技能の範囲にしぼって「考えさせる」のです。これによってアリバイが成立し、外部に対して、「考えさせる教育をしています」と正々堂々と言えるのです。

勝利主義と勝利至上主義との境界があいまいです。
境界があいまいなので、勝利至上主義を否定することは、勝利主義を否定することにつながっていきます。
勝利主義は体育会系の本分であるため、それと連続している勝利至上主義も堅持することになります。
勝利主義がおびやかされないようにするため、一定程度まで、勝利至上主義の施策を実施しておく必要があります。どこぞの国のように、本国がおかされないようにするため、周辺国を緩衝かんしょう領域にするのと同じ考え方です。

このようなスポーツ競技を教育の中に組み込んでいることに根本問題があるのです。


4.沖縄県高等学校体育連盟

2023年2月に「メッセージ2023」があったにも関わらず、それ以降も、沖縄県高等学校体育連盟勝利至上主義でした。 

県高体連は勝利至上主義に基づき高等学校の総合体育大会における成績を序列化し「順位」を公表しています。
何をもって「至上」なのかは論者によって様々ですが、意味のない序列を作成・公表し、ことさら上位の者を顕彰けんしょうする行為は、至上主義です。


令和5年度 沖縄県高等学校 総合体育大会 学校別得点及び順位


(1)得点順位 上位10校

令和5(2023)年度

令和5(2023)年度 学校別得点及び順位 上位10校

令和4(2022)年度

令和4(2022)年度 学校別得点及び順位 上位10校

令和3(2021)年度

令和3(2021)年度 学校別得点及び順位 上位10校

令和2(2020)年度

令和2(2020)年度 学校別得点及び順位 上位10校

令和元(2019)年度

令和元(2019)年度 学校別得点及び順位 上位10校


(2)得点順位 下位10校

令和5(2023)年度

令和5(2023)年度 学校別得点及び順位 下位10校

令和4(2022)年度

令和4(2022)年度 学校別得点及び順位 下位10校

令和3(2021)年度

令和3(2021)年度 学校別得点及び順位 下位10校

令和2(2020)年度

令和2(2020)年度 学校別得点及び順位 下位10校

令和元(2019)年度

令和元(2019)年度 学校別得点及び順位 下位10校


(3)順位を決める要因

コザ高校は毎年1位です。
通信制高校や定時制高校や高等支援学校は毎年下位です。

上記のような時系列による状況証拠があれば順位が決まる主な原因を推測できるでしょう。
順位が決まる主な原因は、学校の設置目的や教育方針です。生徒の努力だけではありません。

沖縄県高等学校体育連盟がやっていることは、学校の設置目的や教育方針に対して「順位」を付けていることと同じなのです。
通信制高校や定時制高校や高等支援学校は価値が低い、と公言しているのと同じです。

教育的意義というものは学習者に対するものです。「順位」は学校に対するものです。「順位」には教育的意義は無いのです。
子どもをはげますというよりは、校長を喜ばせるために順位付けをやっているのです。
このような行為は不当です。

コザ高校の「総合得点」は、毎年150点以上です。
これに対して、最下位の得点は、0点や1点です。
このような得点を付け公表することは不当です。

勝利者を絶対視し徹底的にたたえる。これが勝利至上主義です。高体連にとって、称えるための理屈は何であっても良いのです。

「沖縄県高等学校体育連盟」という、いかにも、教育活動やってます感のある名称の組織が、な~んにも教育的意義のないことを毎年やらかしているのです。

では、「学校別順位表」を削除すれば良いのでしょうか。
問題の本質は、そこにはありません。
体育会系は、勝利主義であり、公正な教育のあり方について、何も考えていない、というところに問題があるのです。

公正な教育のあり方について何も考えていない連中の下で学ぼうとしても、公正さを学べないし、苦痛を味わうだけですし、無意味な教育を再生産するだけです。
体育会系から学ぶことができるのは、元気なアイサツです。

体育会系は、議論をしません、民主主義ではありません、公正ではありません。教育的意義があるかのように見せておきながら、民主主義をになう市民を育てようとはしていません。


5.市民による社会改革

高校生の知性の高さに感心します。
「メッセージ2023」を創作し公表したことはとても素晴らしいです。

高校生は、このメッセージによって、社会改革を試みたのです。
学校のあり方を改善することも、重要な社会改革なのです。

政治家への陳情という方法ではなく、分かり易い自分の言葉によるメッセージを公表したのが良いのです。このような活動は、市民による社会改革活動として高く評価できます。

でも、高校生は勘違いをしている部分があります。
部活動からなんでも学べるかのように美化している点です。
美化すると、不都合な部分に気が付きにくくなります。
例えば、高体連が示している学校の「順位」について、「変だな」とは思わなくなるのではないでしょうか。

また、「ブカツは私たちのモノ」という認識は、現状では、客観的に見て間違っています。「ブカツは、それを実効支配している体育会系のモノ」という方が実態に近いのではないでしょうか。
体育会系の背後にはスポーツ業界の業者がいます。業者は商材を求めて教育界隈に出入りしています。そのためにカネやヒトが動きます。
この社会構造を変革することは困難だと思います。
ブカツの主導権を生徒に移譲することは、スポーツ業界の既得権をそこねることになります。
体育会系の本分ほんぶんは勝利主義ですから、組織などを乗っ取ることをいといませんし、放しません。50万人もの多様な市民が集う都市・東大阪市はラグビー愛好者に乗っ取られ「ラグビーのまち」に仕立て上げられてしまったのです。


6.(参考)関連記事


令和3年1月沖縄県立高等学校生徒の自死事案に関する報告書


(参考)

以上

#沖縄県 #教師のバトン #部活動 #勝利主義 #学校教育