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映画「ザ・メニュー」

胃の奥の方からうっすら吐き気が湧き上がるような不気味な怖さが、観終わってからも持続します。

いやぁ、怖かったぁ。

それも一種類の怖さではありません。

何種類ものメニューが登場するコース料理。
ひとつまたひとつとメニューが増えていくたびに、人間そのものを根底から信じられなくなっていきます。

できれば目をそらしていたい、人間の根源的な悪質性を、一品ずつ、いやがおうでも見せつけられていきます。
そしてあなた自身も、それを見過ごすことはできません。
なぜなら、誰にでも覚えのある行動や考えや感覚にかならずつながっているからです。

怖い、ここにいてはやばいとわかっているのに、まるで金縛りにあったかのように逃げるという行動に出られません。
それは、
まさかそんなはずはないとどこかで思っていたいから。
あるいは、
怖いもの見たさの衝動を抑えられないから。
はたまた、
自分だけは違う、大丈夫だと思いたいから。

で、結果的に、逃げ遅れてしまうのです。
もっとも、逃げられる可能性など最初から皆無なのですが。

その厳然たる事実を頭の片隅ではわかっていても、最後まで右往左往し、圧倒的な事実として自分にのしかかるまでただそこにいてしまう。
そんな自分というあまりにもちっぽけな存在を認識させられる怖さです。

声を出しそうなくらいびっくりする場面もあります。
あまりにも唐突で、辛うじて両手で口を塞ぐことでなんとか凌ぎました。


さらに、チーズバーガー。

とても美味しそうに登場します。
きっと美味しいのでしょうし、それまでの流れの中では、もっとも食べたいと思わせる一品でした。

でも、しばらく、食べなくていいかな。
映画を思い出して怖くなりそうだから。

それでも、きっと近いうちに食べたくなる予感もしています。ある意味、チーズバーガーがこの映画で唯一の救いのような存在でもあるからです。

なんのことか観ていないとサッパリですよね。

そう思った方は、ぜひご覧ください。

怖いことばかりを強調しましたが、実は、もっと複雑ないやーな気持ちになります。

そのいやーな気持ちは、自分を含む人間全てに対するものです。

映画が始まった瞬間から、逃げられないことは決まっていたようです。その巧妙な罠、いや、自分達で蒔いた現実にどっぷりと絡め取られているのだと認識させられるのです。


あぁ、やっぱり、怖い映画だ。

でもせめて、そこから逃げずに映画だけでも見届けたぞと自分を鼓舞している今です。

ひとりだけ、まともな感覚を持っていると思える登場人物がいることにも救われました。

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