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自称パンツ履かない派女子にカルト宗教団体に勧誘された話

カルト宗教団体にはじめて勧誘されたのは確か19歳、
東京で一人暮らししながら美大予備校に通っていた時に
同じクラスのTちゃんから。

Tちゃんはショートカット、鼻ピアス、ボロボロのジーンズ、ノーメイク
自称パンツ履かない派という、ブルハの女子版みたいな
バンカラな子だった。

彼女の油絵もワイルド、エネルギッシュで先生からいつも高評価を得ていた。

当時わたしは喫煙者で彼女とはお互いの絵をタバコを吸いながら
鋭く批判する仲で、友人というより気を使わない話しやすい
クラスメイトという関係だった。

そんな彼女がある日“今日面白い所、連れてってやるよ、”
といったのでどこか怪しいアングラなライブハウスかな、
とか妙に期待してついていった。

時は1994年の土曜日の夕方17時の池袋、
人でごった返す喧噪の中、発売されたばかりの
坂本龍一のアルバム sweet revengeの屋上看板が目立っていた。

どこに連れてってくれるんだろ、とワクワクしてノッシノッシ、と歩く
Tちゃんの背中をワクワクしながら歩いていた。

ビルに案内されてエレベーターで最上階まで行き
着いたフロアー、そこにはTちゃんと正反対の格好をした清楚なお姉さんがいた。
昔のフジテレビのドラマに出ていた頃の鈴木保奈美ふうの綺麗な格好のお姉さん(以下:保奈美ちゃん)が

“今日はよく来てくれました。”

と迎えてくれて、その後はなんか

”一緒にお祈りをしましょう、” とか、

“ここに来てお祈りをする事で借金地獄から抜け出した人、
私も心が浄化されて、。。”

とか色々奇跡的な体験があった事を説明された。

私はそれよりもTちゃんとこの場所の雰囲気のギャップがありすぎて、
“何?このコメディー!ウケる🤣!っ”
て内心感じていた。

しかし目の前の保奈美ちゃんが私を勧誘しようと一所懸命だったので
一応真剣に話を聞いていますよ、という態度は見せた。

Tちゃんに聞いたら両親も信者で家族全員で入信している本気のヤツ。
とりあえず保奈美ちゃんに丁寧に挨拶してビルから出た。


ギャップ🤣❗️まさかのTちゃんがね笑笑
私があげたジミヘンのT-シャツが目に浮かぶ。

脳みそが騒がしかった。
アウトローな仲間が一人いなくなった気がしてなんだかなぁ〜、チェッ、と思いながら拗ねた赤ちゃんがおしゃぶりを探すようにカバンの中からタバコを取り出した。

このモヤっとした感じをタバコで慰めようとしたが
逆に煙が回って頭フラフラ状態で池袋の街の中を脱力感と可笑しさに
包まれながら駅の方へ向かって歩いて行った。


後日Tちゃんに、

”アンタも勧誘大変だねー、ウチは無理。
既に叔父さんがカルト宗教に入って周りに迷惑かけて
ウチの母さんが激昂して親族から追い出した。”と、説明。

さらに

“私が入信したら絶縁される”

と大袈裟な表現で断った。

その後Tちゃんからは勧誘されなかったし
またいつものようにお互いアトリエの廊下でタバコ吸って絵が上手く描けん、
今、絶賛スランプ、みたいな愚痴を言う仲は続いた。


同じ年にもう一つ、勧誘があった。
住んでいたアパートの隣に一軒家があり、そこに住んでいた
50代ぐらいのマダムから。

愛想のいい人で
“学生さん?いってらっしゃい、”とニコニコ朝、予備校に向かう時
会うと声を掛けてくれた。

ある日、”日曜日にもしよかったらウチにお茶飲みに来ない?”と誘われた。

世間話から次に健康の話へ、
“あのね、このプロテイン飲み始めてから私の人生変わったの。”っと言って
きな粉味の飲みやすい美味しい謎のジュースをご馳走してくれた。

次の日曜日に私のアパートに来て

“あのね、あのプロテインなんだけど今、キャンペーンやっていて、”と
説明してる顔が松居一代化してきた。

瞳孔が開いて必死に
プロテインの良さをアピールしていた。
確かにそんなに身体にいいなら、と小さいサイズを一つ購入してしまった。

飲み始めた効果はあまり感じなく私はやはり市場で売っている新鮮な青野菜をバクバク食べた方が元気になるな、と再認識した。

“いつか一緒にお散歩に行きましょう、”
とまた2週間後の日曜日に約束をしてしまい、
晴れた日にその松居一代化してしまったマダム( 以下: 一代さん)とお散歩に。

最初は世間話をしながら
しばらくすると歩いた事のない地区へ。
またどこかの会場に案内され(笑笑!)

その会場に入ると壁には一オールバックで金縁眼鏡の男性の大きな写真が🥸!

ドーッン❗️

この人見たことある〜🤣

なるほどね〜、プロテインドリンクからの勧誘か。。いろんな方法がある。

保奈美ちゃんと同じように一代さんは
“ここに来る人たちは、、。。”と同じような台詞を
心を込めて真剣に話し始めた。

私はTちゃんに言ったように、同情心たっぷりに
“みんな大変ですよね〜、私も現在、倍率48倍の芸大油絵科に
挑んでいるんです。本当に大変。お互い頑張りましょうね、”的な、

どでかい目標に挑んでいる、という事を言ってあなたも私も頑張って行きましょう、みたいな事言うと、

“そうよね〜、”
と一代さんはなんか安心した表情になった。

以降、私に勧誘はしなくなっていつも通り朝に会うと
« いってらっしゃい、 »と挨拶してくれた。

みんな居場所を探している。

日本はいつからこんな
自分の居場所を見つけにくい
場所になっちゃんたんだろう。


平成のJ-Popの歌詞にやたら”一人じゃないよ〜”という歌詞が
よく聞こえてきたけど、実際みんな一人にさせられている現実。


日本はランド、島国。水槽の中の魚単体が病気になるのではなく
水槽全体が病気を作り出す、という漫画家の山田玲司の分析。

時代の空気やムードは作り出される。

寂しさ、特別感、繋がり、
都会人の心を渇きを潤す
何かがカルト宗教団体の
コミュニティの中にはある。

Tちゃんも保奈美ちゃんも一代さんも、
« 大変ですよね〜 »労いの言葉が欲しかったのかな。
私がそう言った時、みんなホッとした表情になった。

勧誘者は教祖ではなく信者、だからそこまでサイコパスでもないし
カリスマもない。

私が断る方法としてとったのは、

1まず労いの言葉、

2そして今わたしは物凄い挑戦をしている、という、
この現状では何のお役にも立てません、という自分の状況説明。

3そしてお互い壮大な目標に向かって頑張ってまいりましょう、という
希望の共有。

私は何も出来ませんがご自愛ください、みたいな台詞を言って
こちらが主導権を持ち勧誘者を励ますという立ち位置をとるとパワーバランスで
相手に力を与えている事になるので、鴨にも羊にもならない。
私の場合、この方法で勧誘はピタリと止んだ。


信仰心は否定しないけど
人の信仰心を利用してお金と人を集めるシステムに入り込まないように
注意が必要。

カルト宗教団体のビジネスモデルはよく出来ている。

教祖、教典、信者、の3つからなる三角形にハマると
なかなか心理的に抜け出せなくなる。

ミュージシャン、楽曲、ファン、
この構造に似ている。
その三つの要素で構成される世界に入れば


マーケティングで使われる
繋がり、
特別感、
安定、安心感、
陶酔、刺激、覚醒、

全て手に入るから。

人はこれらを感じたくて
物を購入する。
欲しいのは 彼氏や物ではなく
それによる感情の高揚や気持ちの変化。


心の渇きを癒す、潤すためのコンテンツは宗教だけでなく
他にもセミナー、合宿、キャンプ、とか色々ある。

一回で完結する活動はいいけど入会してメンバーになって
永続的にお金や時間、エネルギーを投資させられるシステムのものは
本当に危険。

キャバクラ、ホスト、色男、

勧誘者は人の不安と共感を利用し、
会う頻度を上げタイミングを見て殺し文句を言う。

人は簡単に騙されていく。
人生に酔いたいから、
今すぐ気持ちよくなりたいから、
昨日までの自分とサヨナラしたいから。

過去の自分との別れ、
セパレーション、旅立ち
イニシエーション、儀式
リターン、今までとは違う自分
これら3つからなる神話の構造。

新しい自分との出会い、
これをカルト宗教団体は
パッケージで体験させてくれる。

小さい頃に親が入っていた劇団で主役級のイケメン俳優が
次々と新人女優を落とす現場を沢山見てきた。

そういうタイプは宗教の勧誘と同じ方法をとる

まず鴨を見つけてあるムードを作り出す。
恥ずかしがり屋な振る舞いと熱い眼差しで
逃げられない状況を作る。

« 実は、, »と自分の弱さを打ち明け秘密を共有する。
-君だけに見せる俺の弱さ-
そうすると女性は私だけが知っている

私の男、になる。

男性側が俺の女、と強要するのではなく、
いかに女性に”私の男”と錯覚させるか、

そのやり方は宗教の勧誘にも似ている。

-私だけが知っている-

これがもたらす特別感、優越感。


私の神様、
遠い存在ではなく
いつも側に寄り添ってくれる
”私の-, 私だけの-。

パーソナルトレーナーの仕事や自分のメソッドを教える時に
クライアントさんに効果が出た時、クライアントさんの自分を見る目が
尊敬の眼差しに変わる。
クライアントさんはあなたは魔法使い?とお世辞をいう。

これはただのお世辞。

感謝はするが勘違いしないように舞い上がらないように
本当に気をつけなきゃな、と思う。

ダンス教師の国家資格の勉強をしている時
講義で先生から、生徒が先生に依存しないために、

生徒、
先生、
教育法/メソッド、

この三角形を作り、関係を維持しろ、と厳しくいわれた。

お客様、クライアント、生徒の間に必ず、
技術、メソッドを入れて言語化しろ、と。

そうでないと
わたしがあなたを変えた、
という上下関係が生まれる。

私たちは神様ではなく技術、情報を提供する職業だ、と。

教える側が自分が魔法使いだと勘違いし
さらに権力を持つと危険。

ヨガや、ワークアウトの先生がアイドル化し
神聖化されると本来の意図とはかけ離れた経営方針に向きやすくなる。

アヌサラヨガ創始者のジョンフレンドをはじめ
沢山の人から崇拝されると勘違いして不祥事に繋がりやすい。
似たような事件は私の友人のインストラクターの世界で
残念ながらよく聞く。

最初は合宿、そして儀式

無条件の愛、というスローガンのもと
お金、そして次に身体をマスターに捧げていく。

私は特別、メソッドの創始者の側近、

だったはずが、気づいたら奴隷になってるパターン。

全て-私は特別-という存在価値を死守したいために人は何でもする。

洗脳中は気づくまでに時間がかかる。そして身体を捧げ生贄化した時点で
何かがおかしい、とやっと目覚めて脱退、みたいなケース。

私はエンタメ業界で
小さい頃から新人がベテラン俳優によって感情を左右される現場を見てきた。
実際私自身もダンス業界の仕事で
男性振り付け家からの身体の誘いを断って仕事が無くなることも経験している。
枕営業は私の人生には必要ないし、嫌なものは嫌だ。

映画監督や振り付け家、ディレクターはプロの現場で
ちゃんと指示に従う演者をプライベートでも言う事を聞いてくれる
と勘違いするアホがいる。

演者の方がちゃんとNoと言った方がいい。表現者、クリエーターとして
立派な職業なのだから、奴隷になる必要はない。

羊や鴨、奴隷のような扱いを受けたらさっさと逃げる。

成功や栄光、自分の身体を傷つけてまで勝ち取る必要はない。
その時自分を裏切った傷は深い。

サービス業、エンタメ業界には真面目にいい作品を作ろうと
頑張っている人がほとんど。

誤解を招かないよう何度も強調したいのは、そういった業界、
ヨガ、恋愛や信仰心が悪いのではなく

それらの仕事を通して得た人からの崇拝、信仰心を悪用し、
自尊心やエゴを満たしたり、収益化しようとする団体が存在し
卑しさに気付いたら早く離れろ、という事。

心の渇きを癒してくれる言葉の数々。
世の中に溢れる商品広告のキャッチコピーの中にも
散りばめられている。

言葉は毒にも薬にもなる。

ビジネス、宗教、洗脳 
これらの密接な繋がりは既に昔から存在していて
友人からSNSから勧誘がやってくる可能性はゼロではない。

人の信仰心を利用せず知識、教養を通してその人の
人生を改良していく事。

情報発信者として自分の言葉の使い方に細心の
注意を払って使って行く事が大事だなぁ、と、

最近の事件に関わる宗教団体の名前を聞いて
Tちゃんの事を思い出しながらそう思った。

今何してるかな?
流石にもうパンツ履いてるよな、とか。


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