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内向型の気質に寄り添う、”翳り”のリーダーシップ開発を目指して/株式会社HINOE 矢本洋介さん 【インタビュー:前半】

今年4月に株式会社HINOEを新たに立ち上げた矢本洋介さん。合同会社&anteでは起業伴走としてこれまで3ヶ月間ほど、伴走させていただきました。


株式会社HINOEを起業した経緯や、内向型の気質を活かしたリーダーシップを発揮する支援をしたいという矢本さんの想いについて、合同会社&anteインターンの榎本がインタビューさせていただきました。


https://note.com/hinoe_note/

矢本洋介
株式会社HINOE 代表取締役
ブリティッシュコロンビア大学を卒業後、貿易実務及び医療系人材企業での営業経験を経て、2013年に三井物産人材開発に入社。三井物産グループ階層別研修の企画・講師を務め、本社TOPタレント向け選抜型研修を、米・ハーバードビジネススクールとコラボレーションの元、複数に亘り担当。その後は、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ・人材開発チームに所属し、管理職研修の企画・運営、並びに選抜型・次世代リーダー育成のプロジェクトリーダーを就任。同社退職後は、日本電気株式会社(NEC)にて、タレントマネジメント(次世代経営人材の育成施策立案)を担当する。2023年より、立教大学大学院 経営学研究科 経営学専攻 リーダーシップ開発コース 経営学前期博士課程に在籍。株式会社HINOEの創業に至る。


自己紹介

ーー今日はよろしくお願いします。はじめに、矢本さんの自己紹介をお願いします。


矢本 :株式会社HINOEを立ち上げた矢本です。兵庫県姫路生まれ、加古川という田舎育ちです。大学はハワイとカナダに留学し、カナダで心理学を学んだ後、ジョンソンエンドジョンソンやNECという会社で人材育成やタレントマネジメントに携わってきました。人材育成を自分の専門領域として築きたいという思いから、今年の4月にサラリーマンを辞めて起業しました。また、現在は立教大学大学院リーダーシップ開発コースでリーダーシップを研究しています。

内向型の気質を活かし、他者に働きかける影響力【リーダーシップ】を高める

ーー株式会社HINOEは内向型のリーダーシップ開発を事業の軸とされていますが、「内向型」に関心を持ったきっかけは何でしょうか?

矢本:実は、私はめちゃくちゃ内向型なんです。積極的に人に話しに行くタイプでもなく、目立つことは一番したくないようなタイプでした。 なぜ内向型に興味を持ったかというと、僕が昔働いていた会社では、外向型と内向型には明確な傾向があると感じていました。

アメリカの会社では、自己表現が上手な方とか人を巻き込むのが上手い方が評価されて、リーダーシップの役割を得ることが多かったです。一方で日本の会社では、話すよりも聞くのが好きな方、一人で作業に集中するのが好きな方など様々でした。

それは悪いことではないのですが、もしそういった人が欧米の外資系の会社に行った場合、目立ってリーダーの役割に推薦してもらうには課題があると思います。僕自身が内向型なので分かるんですよね。もっと主張した方が良いことは頭では分かるんですけど、それを普通にやってのける人と、僕みたいに頑張って行動をしないといけない人がいて。

僕は、後者のタイプに対して社会は手を差し伸べきれていないと感じています。大人しくしてないで外向型みたいにどんどん発言して頑張りなさいって言われてるような感じなんですよ。自分のコンフォートゾーンを抜ける意味では大事ですが、外向性とか内向性に先天性の部分があるんだったら、その気質を踏まえて乗り越えていく必要があるし、外向型になれみたいなプレッシャーの中でもがいてる人もいるんじゃないかなと。

HINOEという会社を立ち上げたポイントは、内向型ならではの気質や性格を生かして、リーダーシップや社会の期待に応えていくことが可能ではないかというところです。外向型になってくださいというわけでも、内向型というコンフォートゾーンに留まってほしいというわけでもなく、内向型という気質を生かして他者に働きかけられる影響力を高めようということです。その影響力をリーダーシップと呼んでいますが、それをもう少し勉強したいという気持ちが、立教大学大学院への進学に繋がっていますね。

ーー私はビジネスの世界については無知ですが、外向型の方が魅力的で、ステレオタイプ的なリーダー像が望まれているのを感じるので、リーダーシップが必要とされる場面で内向型の人に外向性を求めることは大きなプレッシャーになると想像できます。内向型の気質を活かしながら、リーダーシップを高めるために手を差し伸べてくれる存在は、悩みを抱えている人にとって大きな希望に感じるのではないでしょうか。内向型への関心や問題意識につながることですが、会社員を辞めてHINOEを起業した経緯について、もう少しお話ししていただけますか。

矢本:会社員を辞めて気づいたことはたくさんあるし、会社員という働き方は素晴らしいと思っています。その中で、自分がやりたいこと、社会から求められることに一番価値を出せる働き方を考えると、僕はもう少し狭く深くやっていきたいなと思ったんですね。前職では人材育成には携わらせてもらっていましたけど、内向型のリーダーシップだけやらせてもらえるわけではない。「内向型」に尖りを持ったビジネスのサービスが不足しているというのが、僕の独立心に火をつけました。

ーー独立することで、より内向型にフォーカスしたサービスを届けやすく、人に寄り添える部分が大きかったということですね。

矢本:僕自身が内向型なので、一人の時間が特に大事なんです。なので、会社員としてチームで内向型以外のこともやりながらは、マルチタスクで色んなノイズもあって。僕の気質的には独立をして、自分でそのテーマに深く向き合う方が向いているというのが、働き方が大きく変わったきっかけです。

内向型/外向型の強みを持って「静から動への分岐点で心を立たせる」

ーー株式会社HINOEは「静から動への分岐点で心を立たせる」という事業コンセプトを掲げていますが、リーダーシップ開発における静と動の強みについてはどのように考えていますか?

矢本:事業コンセプトの一つで、特に静から動へのトランジションにおいて心を立たせるというアプローチに興味を持っています。ただ、内向型の方だけを支援したいわけではなく、内向とか外向とか白黒で分かれるものではないので、外向型だから出せる影響力もあるし、内向型の持ち味によってやれることもたくさんあるということに認知が置かれて、その強みを包含したものを組織やチーム全体で使っていくと、組織論でいう0が2以上になるっていうレバレッジがもっと効いていくんじゃないかなと思っています。

それで、世の中やマーケットに何が不足しているかというと、欧米を中心に外向型の気質は比較的優遇されている事実があると思います。アジリティという言葉をよく耳にしますが、ある先行研究によると、俊敏性は外向型の方が強くリスクを取れる許容度が高いとされています。一方で、内向型の強みは深さ・慎重さにあるかもしれないですが、アジリティや変化と言われている世の中で、ある種の遅さは、場合によっては評価されないこともあるかもしれません。

僕としては、内向型の気質を維持しながら影響力を出すのが一番だと思うし、外向型の振りを一時的にするのも一つだと思います。

ただ、内向型も外向型もコンフォートゾーンを超えてやらないといけないことは仕事内にたくさんあります。特に内向型が人を引っ張っていこうとか発言しようとすると、周囲の反応を気にしてしまう。そこで、関わりを持つという、動に向かって動き出す瞬間ってすごく心を奮い立たせないといけない時もあります。

それを、「気合いが足りひんのやとか、とりあえずやってみろ」って言われることもあると思いますが、「いや、わかってるけど、怖いねん」という人もいるはずです。その部分に寄り添える事業って何なのかなって考えたときに、静から動に心を立たせようとしている人の背中をそっと押してあげて「さあ、一緒に行こうよ」って言えるような存在になりたいというのが、コンセプトワードにつながっています。

ーー内向型/外向型に二分されるのではなくグラデーションがあるので、両方の特性を活かして一人一人に沿ったリーダーシップを発揮するためにサポートするという想いがとても印象的でした。

後半は、矢本さんが目指すリーダーシップのあり方や、株式会社HINOEのビジョンについてお話しいただきます。

(聞き手:榎本歩美)

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