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母はフィーダー

    50代/女性/教員在職20年強
 4人の子の産休・育休・育児時短勤務経験あり
 近親者との人間関係
 職場で感じるジェンダー
 理想の教育ってなんだろう
 考えることあまた…
☕️

*feeder 食べ物を与える人 
        > feed (動) 食べ物を与える、食べさせる

ワタシは中学を卒業後、
地元でトップの進学校に進んだ。
高校生にもなれば、
男の子から遊びの誘いもあった。
見た目もだんだん
大人の女性に近づいていった。

はじまりはこの頃だった。

母は、
高校生になったワタシに
大量の食べ物を与えはじめた。
どんどん食べさせ、
出されたものは残さないよう躾けた。
こちらが何度も
「量を減らしてほしい」と訴えても、
母は聞く耳など持たなかった。

母の言うことは、
絶対だった。

父は日勤と夜勤の交代制で、
月に1、2度、夜ごはん不要の日があった。
そんな日の子どもの夜ごはんは、
インスタントラーメンと菓子パンだった。
インスタントを責めるつもりはない。
問題は、
「ラーメンだけで十分、パンはいらない」
と伝えても、
母は絶対に聞き入れないことだ。

この頃からだろうか、
母は自分の作った食事を一切食べていない。
朝食はトースト1枚、昼食と夕食は菓子パン1つ。
来る日も来る日も、
おんなじパンを、繰り返す。


ある年のクリスマス。
パンメーカーの甘いホールケーキを1人1個与え、
フォークで直接食べるよう強制した。
母自身も、パクパク食べてみせた。
ワタシは甘いものが好きではなかった。
なぜそんなことしなくてはならないのか、
ちっとも理解できなかった。
おいしくないし、楽しくもない。
哀しい思い出だ。


たまに遊びに来る祖父母(母の実の親)が
どんどん太っていくワタシに見かねて、
母に忠告したことがあった。
「そんなに食べさせてはいけない」

言われた母はふてくされ、怒り、何やら言い返した。
しかし、祖父母が帰ると、
何事もなかったかのように、
また、
食べさせる。

ある年、
ワタシが通う大学の健康診断で心臓が要精検となり、
大学病院を受診した。
これはチャンスだ。
病院から帰宅して、ワタシは母に
「病院で体重を減らすよう言われた」
と伝えた。
健康を害しているとなれば、
さすがの母も考え直すだろうと思ったのだ。

甘かった。
何も変わらなかった。

父に相談し、助けを求めたこともあった。
しかし、
「あの人は変わらない」
と言うだけで、何の役にも立たなかった。

母に向かってストレートに
「おねがいだから、協力してもらえないか」
と半泣きで訴えたこともある。
母は、
「お母さんの言うとおりにすれば痩せるようにしてあげる」
と機嫌よく言った。
ようやく改善してくれるのか!

期待したワタシが愚かだった。
口では思わせぶりなことを言うが、
そんなつもりなど、ひとかけらもなかった。


時間とエネルギーの無駄だと気づいた。


大学生で肥満のワタシは、
母を変えようとするのをやめ、
自分が変わることにした。


本棚に残っていた高校家庭科の教科書をめくり、
食品のおおよそのカロリーを頭に叩き込んだ。
多すぎるお弁当や、
多すぎる夜ごはんを、
内緒で捨てた。
頭の中で食べた分のカロリー計算をして、
1日の摂取カロリーをコントロールした。 

雑貨店のアルバイトでは
荷物が届くと率先して出向き、
重いダンボールを運んだり、品出しをしたりして、
とにかく体を動かした。
休憩時間も、座らなかった。
本好きだったこともあり、
すぐ近くの書店に行って立ち読みした。


母からは
「最近痩せてきているんじゃないか」
と、厳しい口調で何度も指摘された。
今度はこちらが無視をする番だ。

「摂取ー消費 < 0 」にすればいいのだ。
効果はテキメンだった。
78kgまで増えた体重が、50kg台まで落ちた。


そして、就職と同時に、
ワタシは家を出た。
自ら遠い勤務地を希望して。



これが、ワタシと毒母の物語。

なぜ母は、あんなことをして娘を苦しめたのか?
ここまで読んでくださったかたは、
想像がつくだろうか。

娘を自分の支配下に留めておきたい。
自分の母親としての役割を失いたくない。
娘が大人になって家から羽ばたいていくのを
食い止めたい。
娘がキレイになるのを阻止したい。

すべては、
母自身が ’置き去り’ にならないためだ。

母はもともと、わがままに育てられた箱入り娘だった。
結婚して専業主婦になり、
社会と接点を持たず、独りで子育てをしてきた。
近所付き合いも、趣味も、なかった。
そのストレスは膨らみ、
無知に気づかぬまま年月を過ごしたのだろう。

そんな母の朝は、エキセントリックだ。
早朝、まだ陽が昇らないうちから
掃除機、拭きそうじ、洗濯を済ませ、
その日の夕食のおかず作りまで終えていた。
朝の家事が終われば、
これといって予定はないのに。
やりたいことも、興味もない、
かわいそうな母。



もし今、
同じような “フィーダー” の毒親に
苦しんでいるかたがいたら、
それは虐待かもしれないと疑ってほしい。
実の親を疑うことに罪悪感を抱くかもしれないが、
俯瞰して、冷静に
自分の状況を見極めてほしい。
「親が間違っている」と仮定してみたら
すべての辻褄が合うのであれば、
それが答えだ。


大切なのは
親への忠誠心ではなく、
”あなた自身の“ 人生を生きることなのです。


支えたり、支えられたり。そんな “環境” が心地いいですね。