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ハプニングと、25時の不埒 -東京の夜編①-

橋本なずな｜書籍「10歳で私は穢された」発売中📖

お客様とカウンセラー様をつなぐマッチングアプリ Bloste （ブロステ）
代表の橋本なずなです。

（※このnoteは朝・昼・夜の三部制です。「昼編」がまだの方は こちらから お読みいただけますと、ストーリーをもっと楽しめます！）

満たされた心を抱えながら、次の予定の場所へ向かう。

原宿の東急プラザ前で待ち合わせるのは、以前にも会ったことのあるフェムテック系の女性起業家さん。
人と深く関係を気付くことに若干の苦手意識のある私だが、彼女とは自然と仲良くなれた。
私より3つ年上の彼女だが、イジり、イジられができるような “フィーリングが合う友人” なのである。

『 なずなちゃーん！ 』
彼女はニコニコと笑ってこちらに駆け寄る。相変わらず明るくて可愛い。

近くのお店をぐるっと見回って、私たちは大衆的な居酒屋さんに入った。
ビールを片手に枝豆、唐揚げ、カルパッチョ。美味しい食事と、近況報告に花を咲かせる。

私は、最近デートをした男性の話をした。
京都の街を巡り、気になっていたカフェでコーヒーを飲んで、夜は京町屋をリノベーションしたというミシュランのレストランに連れて行ってくれた。
とっても素敵な一日だったけれど、最後の最後で “どっちつかずな下心” を出されモヤっとしてしまった。

「 保険をかけたような、でも、あわよくばを期待しているような誘い方に、ズルいなぁって思っちゃったんですよねー 」
『 男らしくないよねー、そういうの 』

『 私もね、最近モヤっとしたことがあってさ 』

彼女はそう言って、二人のセフレの話をする。
彼女は2年ほど交際しているパートナーがいるが、彼とはレス状態である為にセフレの関係を持っている。
しかし最近、セフレたちが特定のパートナーと関係を深めたことで、関わりを断つことになったのだそうだ。

「 え、じゃあ、今って出会い募集中ですか…？ 」
『 そうねぇ、新しい人見つけないと・・・ 』

「 ねーさん、ちょっと私行きたいところがあります 」


居酒屋さんを出た私たちはタクシーに乗って、渋谷のとある雑居ビルの前で降車した。

「 地図上ではこの辺りのはずなんですけど… 」

あっ！と、ビルのポストに目的地の名前を見つける。
エレベーターで4階まで上がると、そこには怪しげな雰囲気が漂う “部屋” が一つと、隣には隠す気のない倉庫のような空間に、小さな洗濯機が置かれていた。

“部屋” の白いすりガラスの扉を開けると、50代半ばの仏頂面の店主さんに出迎えられる。

【 どうも 】【 まずこちらね、中身読んでサインしてください。】

そう、ここは “ハプニングバー” 。

性に興味関心の高い私たちが、心を一つにするのに時間は掛からなかった。
経験の一つとしてずっと行ってみたかった “ハプバー”  は、一緒に行こうと言える友人は少ないけれど、彼女になら提案できると思った。
彼女も最近、行こうとしたが行けなかった日があったようで、私たちはすぐに意気投合した。

手渡された同意書には、法的な事やお店のルールが書かれていた。

【 で、身分証のコピー取らせてもらうんで、出してもらえますか 】
「 あっ、はい、えっとー… 」

私がお財布の中から保険証を取り出そうとしたところで、彼女が声を出す。

『 見せるだけじゃなくてコピーなんですか？ 』
『 コピーされたものはいつまで保管されるんですか？ 』
『 保管の期間が過ぎたら、どうやって破棄されるんですか？ 』

店主さんは少し疎ましそうに、眉間にシワを寄せて彼女の問いに答える。

何の疑いもせず身分を明かそうとしていた自分に、心のなかで喝を入れる。
彼女を習って、私は再び同意書の隅々にまで目を通した。

[ 当店ではカメラ撮影を行う場合がございます ]

「 ん？・・・これって何ですか？カメラ撮影って。 」
【 何かあった時に、お客様を守れるのがカメラ撮影なんですよ。その時撮影していたら警察とかの捜査が入っても・・・ 】

店主さんは【お客様を守るために撮影をする場合があって、撮影された映像は店内でのみ流れることがある】などと言っていたが、今一つ意味が分からなかった。
彼女が尋ねた質問に対する回答が釈然としなかったことも相まって、不信感が募り私たちは日を改めることにした。


その後、私たちはDJブースのあるチルいバーに移動して、2，3杯だけ呑んで解散した。

銀座線渋谷駅から電車に乗って、浅草駅まで30分、不完全燃焼な気持ちを残したまま揺られている。
「ハプニング起っちゃうかな…」
そんな淡い期待はもちろんあったのだから、身体は虚しくも熱く、悶々としていた。

浅草駅に着きホテルまで歩いていると、食事やお酒のメニューが書かれた小さな看板が目に留まる。
顔を上げると、全面ガラス張りの店内に数名のお客さんの姿が見える。

「 帰る前に一杯だけ吞んでくか 」

その時は思いもしなかった、
ハプニングな展開がこれから待っていようとは。

次回「東京の夜編➁」へ続く

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