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ミライノオトモニターNo.10「さ、次はどこを走ってく?」

ヘルメットを脱ぐと、たらりと汗が背中まで伝う感触がする。
汗ばむ季節だけれども、風を切る爽快感はやはり格別。
これを知ったらやめられない、と毎日でも思ってしまう。

到着したカフェでは、すでにこの地で集っている仲間たちが楽しそうに話をしていた。

「おお、待ってましたよ!はるばるありがとうございます」

「すみませーん、遅くなっちゃった。
ここにくる途中の、教えてもらった岬からの景色が本当に素晴らしくて。つい見とれてしまってたら、こんな時間に…」


「あ〜、それなら仕方ない、許してあげます。
まあ、こっちへ。暑かったでしょう」

へへへ、と笑いながら、皆さんが集まるテーブルへと足を運んだ。


ここは、日本の北のほうに位置する。
そして、実はリアルでお会いするのが初めての人たちなのだ。


バイク好きが高じて、ツーリングにはまり、その楽しさに身を任せたかった。
でも、いろんな制約が浮かんでは消え、いつか日本を回りたいと思いつつも、それはまだ先の夢なのだろうか…と感じていた時に。

ふと、目に止まった記事があったのだ。

同じように、バイク好きな人たちが集まるネット上のコミュニティ。

そこでは日々、どこに行ったとか、この道が最高、とか、寄るならこの場所やお店、とか、たくさんの投稿にあふれていた。

そしてここにいる人たちは、本当にバイク、ツーリングをこよなく愛している人たちばかりなのだ。

メンテナンスについても、いろんな情報を持っている人も多くて、何か困ったことがあれば聞くことができる。

知らない場所に行くときに、どんなルートがいいか、抜け道は、美味しいもの食べるならここ、など、一つ質問したら10や20にはざらに答えが返ってくる。そしてその一つ一つに、愛を感じる。

なんとも、心温まる交流がここでは繰り広げられていた。

そして、各地でリアル交流会もそろそろ開催できるんじゃないの?という運びになってきたのだ。

全国各地にいる、仲間たちのところを渡り歩くなんて…想像しただけでも、わくわくしか感じない。
私の心は、すでに「日本各地を軽やかに巡っている自分」へとシフトしていた。

ふと行きたいな、というタイミングに従って、さっと準備をしエンジンをふかす。

ヘルメットをかぶる時のあの感覚と匂い
グッとハンドルを握る時の硬さ
ギアを切り替える時の感触
エンジンの音、匂い、そして
走り出す時の「あの」感じ。

もう慣れていていちいち気にしなくてもできることだが、改めて記憶の中で再現してみると、実にたくさんの細やかなことをしているのだと気づく。

そして走り出した後の、体に当たる空気や風、耳に入ってくるたくさんの音、その土地から香ってくるような匂い…

道はどんどん続いていて、それと同じく限りない空もどんどん続いていて。

ここには終わりというものがない。

行けば行くほど、知れば知るほど、知らないことが増えていき、それがまた私の「行きたい」原動力となり、無限にそれは続く…

そんなことを感じるのだった。

そんな、自分のやりたいことが叶っている未来の感覚に浸っていた時に、あるメッセージが飛び込んできた。

全国にいるコミュニティの仲間をつなぐ旅をしないか、というお誘いだった。
そしてそこにはこんな提案が書かれていた。

「自分の土地に来た仲間を、その土地の人がもてなす」

簡単に言えばそうなる。

つまりは、訪れた仲間の飲食宿泊について、その土地にいるメンバーがもてなすというものだった。
お金でも、現物でも、家に泊めるでもいい。
そんなシステムにしないか、という提案だった。

それを読んで、「難しいんじゃないかな」と感じた。

土地に住んでいる人の人数もキャラクターもいろいろだし、それは訪れる側だってそう。

人のうちに泊まることが平気な人もいれば、そうじゃない人もいる。

負担が大きいとか小さいとか、あそこではこうしてくれた、ああしてくれたなんてことが起こるんじゃないか、と。

そんな声がなくもなかったが、まずは試運転してみないか?ということになって、ゆっくりとスタートを切ったこのプロジェクト。

始まるからには、私はこのプロジェクトが、みんなにとって幸せでしかないものであるということだけど、見ることに決めた。

何があっても、そこは揺るがぬように。

それまでの過程には、いろいろなことが起こるかも知れないけれど、それも必要なプロセスであるというだけだ、と…。

そうしたら、意外にも、収まるところに収まっているのだ。

私もこのプロジェクトを使って、とある場所に出向いてみた。
そこでは3人の仲間がいて、快く私の席を用意してくれた。

ご飯は、おうちへお呼ばれして、地元のお料理をたくさんいただき、珍しいものを食べさせてもらった。

話は尽きず、いつまででもここにいられそうな感じだった。

宿泊は小さな民宿を紹介してもらって、口利きでリーズナブルになり、そしてそれを仲間がもてなしてくれた。

私もせっかく行くのなら…と、地元の名産をお土産に持って行ったり、自分がその場でできることで貢献をした。

恩送り、という言葉があるが、それとこのシステムは似ているのかも知れない。
そうしてもてなしてもらった次は、誰かがこちらに来てくれることが待ち遠しくなる。


そして不思議であるが、このシステムが合わない、気にくわない人は、次々と去って行ったり、そもそも加わらなかったりと、とても風通しが良い感じなのだ。

出たり入ったりも流動的で、そうしがらみもない。

また、人数や回数の調整もできたらいいよね…と、資金面をカバーする方法も模索していて、だいたい固まりつつある。

今までは、自分がなんとかしなくてはならないと思っていた。

でも、決してそうではないことをあらゆる方向から感じさせてくれたのが、このプロジェクトだった。

今日もバイクにまたがり、エンジンをかけると、この音と振動に身を包まれる。

それは、私の細胞一つ一つに語りかけてくれる、無邪気な子どものような姿をしていた。

「さ、次はどこを走ってく?」


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「ミライノオト・モニターシリーズ」
MIERUKAアーティストAKARIが綴る、
お申込みくださった方の「勝手な未来の妄想ストーリー」
今回はオートバイでツーリングすることが趣味で、順次、日本全国を巡りたいと思っていらっしゃる方からストーリーのご依頼でした。

モニター募集時の記事はこちら
https://resast.jp/events/YjkwYzc3NWQ4M


<追記>
本募集が始まりました!
小さな本のタイプと、動画タイプをお送りしています。


現在こちらで受け付けています。
https://resast.jp/inquiry/ZjI3OTgyNzQwM
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以下は、お申込みくださった方のご感想です。

・今回お申込みいただいたきっかけ、何にピンと来たかなどお知らせください。

申込みのきっかけは、趣味のツーリングを通じて知り合った人との別離からの苦しみからの脱出をしたかった事です。

・届いた妄想ストーリーのご感想をお願いいたします

バイク・ツーリングをを通じてSNS上でのやりとりがある日本中の皆さんと 実際にお会いする機会もで出来たこの数年で、 その地方をお訪ねしたらお集まりいただける事やお知り合いのお宿をご紹介いただける事は 私にもありそうになってきていました。 私一人では、反対にお迎えしおもてなしする力に限りがあると思いますが 都度予定の合う何人かでチカラ合わせておもてなしの規模を広げる事は出来そう!とワクワクしました。 一人で背負わず分担する方法がある事、それでいいのだということ、 出来る範囲に対して完成度の高さ設定が高くて、自己否定をしているらしい事に気づきました。 仲間という間柄やコミュニティでの人との距離感の設定を見直したいと思いました。 親密さを求め過ぎて孤独を感じているかもしれません。 そういう気づきを持たせてくださってありがとうございます。 書いていただいた物語は少し先の私の姿としてそうなるといいな、と思うものでした。


・このミライノオトはどんな方にオススメしたいでしょうか?

夢や希望を失いぐるぐる思考に囚われて人生に迷っていると感じている方にお勧めしたいです。

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モニターのご参加ありがとうございました。
未来への一つのヒントとなりましたら幸いです!

この度は本当にありがとうございました^^

さらにミライへ、そのオトを聴きならがら。

MIERUKAアーティストAKARI

ピコンと心が動いた時に、ぽっちり押してくださると、嬉しいです。 より良いものをお届けさせていただくともし火にさせていただきます^^