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The Planet Magazine Wombat

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ライアル・ワトソン博士によるとWombatとは世界で一番役立たずの動物だそうです。20世紀に4冊だけ丸い地球のプラネットマガジンWombatは雑誌として講談社から刊行されました。…
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#崩壊学

『崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』7

「私たちは地球上に多人数で存在し、攻撃的で予測不能な気候や破壊した生態系、汚染、活力をしなった生物多様性、文化と共にいるからだ。もしここで奮起して、集団で先手をうたなければ、私たちはポスト産業世界の不気味な沈黙の中、中世より不確実な状況に戻ることになるだろう。そしてその場合、過度の成長推進は、私たち全員を石器時代に戻すのだろう。

現在、辿るべき道には、標識がほとんどなく、人生を根底から変える方向

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崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』6

「崩壊した社会がどんなふうになっているのか誰にもわからない。しかし、そこでは助け合いの精神が、1番とは言わないまでも、重要な役を演じるだろう。実際、個人主義は、エネルギーが潤沢にある社会だけが手にできる贅沢だ。私たち全員が奴隷500人分のエネルギー(石油を使えるのになぜ助け合うのだろう)と言うわけだ。
別の言い方をすると、エネルギーが不足する事態になれば、個人主義が1番に死ぬのは確実だろう。素晴ら

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『崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』5

「現在、支配的な文化のストーリーが物語るのは、テクノロジーであり、人間の際限ない創意工夫、競争、唯一無二の原則とされる弱肉強食の法則、進歩を目指し断固として前進する、などだ。
私たちが今大いに必要としているのは、不確かな一時代に入るための、変化を示す新しいストーリーである。例えば、助け合いや協力のおかげで、化石エネルギーから解放されることに成功したある時代の物語…。

人間が生まれつき持っているは

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崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』4

「まず第一に、熱工業文明ーエネルギーと金融の組み合わせーのエンジンは、エンスト寸前になっていることがあげられる。限界に達しているのである。いつの日か再び経済成長をもたらす可能性はすべて、決定的に葬りされている。つまり、債務をベースにするシステムへの死刑宣告……債務が返済される事はもう決してないだろう。

2番目は、私たちの文明の指数関数的な物質的拡張が、その土台である複雑な自然システムを、取り返し

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崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』3

「私たちは地球上に多人数で存在し、攻撃的で予測不能な気候や破壊した生態系、汚染、活力をしなった生物多様性、文化と共にいるからだ。もしここで奮起して、集団で先手をうたなければ、私たちはポスト産業世界の不気味な沈黙の中、中世より不確実な状況に戻ることになるだろう。そしてその場合、過度の成長推進は、私たち全員を石器時代に戻すのだろう。

現在、辿るべき道には、標識がほとんどなく、人生を根底から変える方向

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『崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』2

「現在、行動科学の専門家は、人間集団では協力関係があっという間に競争に変わることを発見しているが、逆もまた真なりだ。加えて、多くの研究や観察がそれを主張している。野生の状態では弱肉強食の法則になると言う、私たちの自由社会の基本となる神を否定しているのである。この分野の研究は、崩壊学で最も面白い、そして最も急を要するもののひとつである。」

パブロ・セルヴィーニョ、ラフェエル・スティーヴンス『崩壊学

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『崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』1

「一般的に言って、HANDYモデルが示しているのは、階級差の激しい社会は文明の崩壊を逃れにくいということだ。これを避ける唯一の方法は、階級間の経済格差を減らし、人口が危機的レベルを超えないような措置を実施することだろう。

2011年から2012年にヨーロッパを講演に訪れたデニス・メドウズは、かつてなく悲劇的で、繰り返しこう述べていた。持続可能な開発を目指すにはもう遅すぎる。今後は衝撃に備え、早急

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』7

「現行のシステムは欠乏と互いに対する恐怖の上に成り立っている。それはより一層の欠乏と恐れる対象を作り出してきた。だがそれは、利他主義や相互扶助や団結により、そして恐怖ではなく愛や希望により動機付けされた組織や個人の行動により、毎日、緩和される。それは、いわば影の内閣のようなものだ。もし選出されてパワーを与えられたなら、もっと何かをする用意のあるもう一つのシステムだ。災害は、世の中がどんなふうに変わ

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』6

「災害中の喜びは、もしがそれが訪れるとするなら、はっきりした目的の存在や、生き延びることや、他人に対する奉仕への没頭や、個人に向けられた個人的な愛ではなく市民としての愛からやってくる。市民の愛、それは、見知らぬ者同士の愛、自分の街に対する愛、大きな何かに帰属し、意味のある仕事をすることに対する愛だ。
脱工業化した現代社会では、このような愛は大抵冬眠中か、もしくは認められていない。それ故に日常生活は

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』5

「人種差別と天災の巨大さにあおられ、ハリケーン・カトリーナの後のエリートパニックは異常なレベルに達していた。それが独自の災害を生み出し、カトリーナの被害者たちは危険な極悪人だとみなされ、災害への対応は救出から悪人のコントロールへ、さらにそれ以下へとシフトしていった。カトリーナは災害の連続だった。それは嵐と言う自然現象に始まり、セント・バーナード群とニューオリンズ群の大部分を水没させた堤防決壊と言う

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』4

「9.11後に実現しえた状況を想像してみよう。まず真っ先に認められたのが、市民社会の不屈のバイタリティーであり、暴力に負けない愛の絆の強さであり、攻撃の狡猾さと大胆さに対抗する開放的な社会生活であった。そこで、犠牲になることを渇望する国民は、新しい社会に向けての大々的な変化を受け入れられるかどうかを問われる。それは、中東オイルとそれに伴う不快で危険な政治に依存しない社会であり、世界でのアメリカの役

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』3

「つまり、共同体意識が存在していたのです。共に大災害を生き延びたと言う感覚は、人々を強力に結びつけるのです。隣人たちを違った目で見始めるんです。なぜなら、あれほど凄いこと(ニカラグア大地震)を体験すれば、それまでとは全く異なる現実に着地するからなんです。
生活は元通りになったけれど、それがまた革命を起こす力を増幅させました。なぜなら、私たちが、何が重要かと言う感覚を身に付けたからです。重要なのは自

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』2

「エリートは、自分たちの正当性に対する挑戦である社会秩序の混乱を恐れる。彼女はそれをエリートパニックと言う。」

「私自身の印象では、エリートパニックはすべての人間を自分自身と同じであると見る権力者たちのパニックである。競争を基盤にした社会では、最も利己的な人間が1番高い地位に上り詰める。その地位にとどまるために、彼らはクロポトキンがシベリアで発見した事実よりむしろ、社会ダーウィン主義者たちのシナ

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レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』1

「地震、爆撃、大嵐などの直後には緊迫した状況の中でも誰もが利他的になり、自身や身内のみならず隣人や見ず知らずの人々に対してさえ、まず思いやりを示す。大惨事に直面すると、人間は利己的になり、パニックに陥り、退行現象が起きて野蛮になると言う一般的なイメージがあるが、それとは真実とは程遠い。第二次大戦の爆撃から、洪水、竜巻、地震、大嵐に至るまで、惨事が起きたときの世界中の人々の行動についての何十年もの綿

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