レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』7

「現行のシステムは欠乏と互いに対する恐怖の上に成り立っている。それはより一層の欠乏と恐れる対象を作り出してきた。だがそれは、利他主義や相互扶助や団結により、そして恐怖ではなく愛や希望により動機付けされた組織や個人の行動により、毎日、緩和される。それは、いわば影の内閣のようなものだ。もし選出されてパワーを与えられたなら、もっと何かをする用意のあるもう一つのシステムだ。災害は、世の中がどんなふうに変われるか、あの希望の力強さ、気前の良さ、あの結束の固さを浮き彫りにする。相互扶助がもともと私たちの中にある主義であり、市民社会が舞台の袖で出番を待つ何かであることを教えてくれる。
世の中はそういったものを土台に築けるし、またそうする事は、平常の生活では苦悩や貧困や孤独の原因となっている昔からの分裂を縮め、危機的な状況の下では殺される恐怖や機に乗じた犯罪を軽減する。これは唯一実現可能なパラダイスだが、決して安定した、完全な形で存在することはないだろう。それは深刻な問題や苦しみへの対応と言う形でのみ出現する。パラダイスを作る事は、私たちの宿命である。これまで文学の中などで語られたパラダイスは、せいぜい永遠のバケーション程度のもので、意味のないものだった。"地獄の中のパラダイス"は即興的に作られる。私たちはそれを状況に即して作るが、その過程で、私たちの強さや想像力が求められ、たとえコミュニティーに巻き込まれている時でも、私たちは自由な創案を発揮できる。地獄の中に作られた、こういったパラダイスは、私たちに何ができ、私たちが何になるれるのかを教えてくれる。」

「災害も公的機関や社会構造を崩壊させ、個人の生活を一時停止させ、その向こうに横たわるより広い眺めを見えるに任せることがある。私たちがすべき事は、門扉の向こうに見える可能性を認知し、それらを日々の領域に引き込むよう努力することである。」

人類全体が、人間とはどんな生き物なのか、何のために生きているのか、生きている意味は何か、深いレベルで問い直す時が来ていることを改めて感じる。それは個人的な問いであり、同時に、社会的生き物である人類という類の問いであり、この問いにすべてが集約される時代を僕たちは生きている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?