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The Planet Magazine Wombat

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ライアル・ワトソン博士によるとWombatとは世界で一番役立たずの動物だそうです。20世紀に4冊だけ丸い地球のプラネットマガジンWombatは雑誌として講談社から刊行されました。…
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2020年7月の記事一覧

『グローバル・グリーン・ニューディール』15

今日、化石燃料文明を崩壊させているのは市場の力である。しかも崩壊は溝のスピードと範囲で進んでおり、化石燃料エネルギーは、これまで起きたどんな経済崩壊とも異なるカーボンバブルを生じさせている。
各部門が次々に化石燃料と決別し、よりクリーンな再生可能エネルギーやグリーン技術と結びつくことで、化石燃料文明からの脱却が加速している。臨界点は2023年に来るとの予想もあれば、2035年になると言う予想もある

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『グローバル・グリーン・ニューディール』14

気候変動の問題に直面する若い世代は、不安をかき立てられると同時に、新たな意識に目覚めつつある。すなわち、地球が数え切れないほどの活動の相互作用、水圏、岩石圏、大気圏、生物圏、磁気圏の連合した動きや、地球の概日リズム、概月リズム、概年リズムや季節の変化による時間的変動、そして地球上に生息する多種多様な生物が途切れることなく触れ合い、影響しあうことがもたらす自然の律動に組み込まれていると言うことだ。

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『グローバル・グリーン・ニューディール』13

今や人類は終盤、あるいは新たな始まりー願わくばこちらでありたいーの苦しみの中にいる。グリーン・ニューディールは、私たちに集団としての声と、皆が共有する共通の使命感を与えてくれる。今、どうしても必要なのは、この「筋書き」を力強い物語に変え、それによって前進することだ。

今後襲いかかってくる気候変動の危機を乗り切るのに、人類が必要としている姿勢ではないか。未知のものに直面しても真っ向から対峙し、押

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『グローバル・グリーン・ニューディール』12

グリーン・ニューディールにおける官民連携を成功させる別の道もある。それは25年の実績のある「エネルギーサービス企業(ESCO)」と言うビジネスモデルだ。「パフォーマンス契約」と呼ばれるものに基づいて利益を確保する革新的なアプローチであり、資本主義の基本原理である売り手と買い手と言うK基板そのものをひっくり返す、常識と相容れない事業手法である。
パフォーマンス契約では、売り手と買い手からなる市場を

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『グローバル・グリーン・ニューディール』11

インフラを民営化するグローバル起業か、年金基金による公共インフラの構築への直接投資か、と言う問題をなぜこれほど詳細にわたって掘り下げてきたのかについて、個人的な話をさせてもらいたい。第1章では、Googleがトロントでスマートインフラの民営化や構築、管理をを 目指して進めているプロジェクトを紹介した。このスマートインフラは、最終的にはトロント都市圏に住む全ての人々の動向を監視するものだ。不安をかき

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『グローバル・グリーン・ニューディール』10

何千万もの労働者が自分たちの年金を国の未来に投資する事は、組織労働者を可能な限り守り、労働者の団結権を守り、年金基金の安定した運用収益を確保するだけでなく、気候変動問題に正面から取り組むことも可能にする。さらには、各国で出現しつつあるグリーン時代のインフラ改革に伴う大きなビジネス機会と雇用の創出も加速されるのだ。

考えておくべき厄介な問題がある。インフラはその性質上、すべての市民が利用する公共財

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『グローバル・グリーン・ニューディール』9

アメリカを始め世界各国では、それぞれの地域に合わせたグリーン・ニューディールのインフラの構築と拡大に必要な資金をどこから調達するのかが、ますます差し迫った問題になりつつある。グリーン・ニューディールについて考える時、この壮大なビジョンと物語を構築する上で必ずぶつかる最初の障害は、「巨額の財政支出」の問題だ。他でもない地球上の生命の存続がかかった危機的状況にある今でさえ、否定論者はそんな金銭的余裕は

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『グローバル・グリーン・ニューディール』8

今からわずか5年か10年後、石油の需要がピークに達し、中東から北アフリカ一帯で大混乱が起きることを想像してみていただきたい。
われわれは今や「変曲点」に到着している。すなわち、新たに代替エネルギーのプロジェクトを建設し運営する方が、既存の従来型発電所を維持するよりコスト効率が良いケースもあると言うことである。
このようなレポートが出されている現在、化石燃料関連の座礁資産問題は、気候変動に関する議論

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『グローバル・グリーン・ニューディール』7

これから始まるのは「レジリエンスの時代」であるグリーン・ニューディールのインフラはレジリエンスの時代のために設計されている。
今や地球上を覆い、年々激化している異常気象に抗って、人類が生き延びる希望をもたらしてくれるものなのである。
この新しい世界において、国家安全保障とは軍事的脅威より、破滅的な異常気象から人間を守ると言う意味に変わる。すでに国防総省、米軍及び周辺は任務の再検討を進めており、重要

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『グローバル・グリーン・ニューディール』6

2017年7月、ロイヤル・ダッチ・シェルのCEOベン・フォン・ ブールデンは、ブルームバーグのインタビューに答え、電気自動車が20世紀の内燃自動車にとって代わり始める2020年代後半には、世界の石油需要はピークを迎える可能性があると述べた。

『グローバル・グリーン・ニューディール』5

原発の建設を受注していた東芝が、当初合意した予算を40億ドル超過し、総工費は120億ドルになるとの見通しを発表したのだ。サンアントニオ市とCODlSは相当額の損失を被りつつも、原発新設計画から撤退することを決めた。こうして風力発電へと大きく門戸は開かれたのだ。結果的には、これは賢明な判断だった。現在、原子力発電施設の建設と運転に係る均等化発電原価(LCOE)はメガワット時あたり112ドルだが、前

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『グローバル・グリーン・ニューディール』4

人類はかつてない大いなる「気づき」を経験しつつある。自分たちを1つの「種」とみなし、自然のリズムやパターンがこれまでとは異質なものになりつつあるこの地球上で、どんな共通の運命をたどるのかについて考え始めているのだ。

死へと至る第二次産業革命から脱却して、生命を肯定する第三次産業革命と進むための新しい道が既に敷かれている。

世界の電力部門の長期経済予測によれば、2050年までに中国の電力供給

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