『グローバル・グリーン・ニューディール』13

今や人類は終盤、あるいは新たな始まりー願わくばこちらでありたいーの苦しみの中にいる。グリーン・ニューディールは、私たちに集団としての声と、皆が共有する共通の使命感を与えてくれる。今、どうしても必要なのは、この「筋書き」を力強い物語に変え、それによって前進することだ。

今後襲いかかってくる気候変動の危機を乗り切るのに、人類が必要としている姿勢ではないか。未知のものに直面しても真っ向から対峙し、押し倒されても再び立ち上がろうとする勇気あるレジリエンスだ。しかしこれから私たちが迎えようとする明日は、過去に経験してきた明日のようにはいかない。甘い言葉で社会のグリーン化を語り、グリーン・ニューディールによって今まで通りの生活様式が守れるかのように言う人がいたら、決して信用してはいけない。人類の明日には激甚化するあまたの気候事象が待ち構えており、私たちのコミュニティーや生態系、あらゆる生物が共有する生物圏に甚大な損害をもたらす事はもはや不可避なのだ。

私たちは未知のフロンティアに足を踏み入れつつある。自然は再び野生に戻り、私たちは不確実性を甘受してーそれがもたらす脅威にその都度適応しながらー生きていく術を学ばなければならない。自然をなだめ、人間に役立つように形を変えると言うこれまでの考え方は、一切捨て去ることだ。私たちは再び団結し、集団の力を奮い起こし、知恵を働かせて生きる術を身に付け、自らの奥深くにレジリエンスを根付かせなければならない。そうすれば宇宙のこの小さな青いオアシスで生き残り、人類と仲間の生物を待ち受ける未知の未来へと進んでいくことができる。

EUは2030年までに再生可能エネルギーの比率を32%にし、エネルギー効率を32.5%向上させ、温室効果ガスの排出を45%削減するのに加え、2050年までにはCO2排出量ほぼゼロにすると言うものである。
新たに出されたIP CCの報告書によれば、世界各国の経済が12年以内に脱炭素化を達成しなければ、地球の気温は1.5度以上上昇するリスクが高いと言う。そうなれば地球が6度目の大量絶滅へと真っ逆さまに落ちていく事は避けられないと言うのだ。
EUはやるべき事業の長いリストを抱えた状態から、「経済的・社会的改革のビジョン」を明確に示すところまで前進し、EUの新時代の始まりを告げようとしている。
歴史の重要な岐路である現在、いくつもあるグリーン・ニューディールのストーリーラインをまとめて、首尾一貫した経済的・哲学的な物語へと高める必要がある。それは種としての集合的アイデンティティーを作り出し、人類を新たなグローカルな活力ある世界観へと導いてくれる物語である。

人類史において大きなパラダイムの転換はインフラ改革であり、それによって私たちの時間的/空間的位置づけから経済的モデル、ガバナンスの形態、認知、そして世界観そのものまでが一変する。経済と社会を管理し、動かし、動力を提供するための新しい通信技術、新しい移動/ロジスティクスの形、そして新しいエネルギー源が1つに集合することで、私たちの周囲の世界に対する見方が変わるのだ。
20万年に及ぶ人類史の大部分にあたる狩猟採集社会の原始的なインフラは、それぞれ驚くほどよく似た物語を持っており、人類学で言う「神話的意識」と、部族によるガバナンスを特徴としていた。やがて10,000年前に濃厚が始まり、その後シュメールやインダス川流域、中国の長江流域で大規模な灌漑農業のインフラが登場したことにより、「神学的意識」と中央集権的な統治国家が誕生した。さらに19世紀に登場した第一次産業革命のインフラは、「イデオロギー的意識』と国内市場や国民国家による統治形態を見出した。続いて20世紀の第二次産業革命のグローバルインフラは「心理的意識」を生み出し、グローバル市場やグローバル・ガバナンス機関の端緒を開いた。そして21世紀に現れた第三次産業革命のグローカルインフラにより、「生物圏意識」と平等な討議集合体(ピア・アセンブリー)によるガバナンスが生まれつつある。

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