データの落とし穴

今回はデータと向き合うときの考えなくてはならない落とし穴について書いてみようと思います。バレーをしたことがない人には難しい記事になってしまうかもしれませんがお付き合いいただければ幸いです。

早速ではありますが例題です。
次に対戦するチームのエースは直近の5試合で5チームと対戦し、スパイクを殆どクロス側に打ってきています。その選手の打力は恐ろしく強力でリベロの真正面以外では殆ど弾いてしまいます。クロスといってもコースは広くリベロ一人で守り切れる広さではありません。決定率は60%を超えていて、配球率も50%近くありこの選手の攻略なしで勝つことは難しいです。この時、あなたがアナリストならブロックにはどのコースを抑えるように指示しますか?

抜け道がないように細かく書きましたがポイントは…
・相手はクロスへのスパイクが多い
・レシーブでのディフェンスはほぼ不可能
ということです。皆さんならどんな判断をするでしょうか。

正解を言ってしまうと判断できないが正解です。

この設問に対して皆さんは相手エースを強力なクロスヒッタースパイカーだと想像し、クロス締めブロックの指示を考えた人も多いのではないでしょうか?ですが、そんなことはどこにも書いていません。むしろ次のようなストーリーも考えられるのではないでしょうか?
リーグ前半、相手チームエースはストレートヒッターでストレートを中心に約75%の決定率を残していました。しかし中盤でブロックストレート閉めで対応したチームがエースのコースをクロスに絞らせ得意のストレートを封じることで決定率を60%程度に抑え込みました。そこからの4試合、各チームはこの戦術をマネして60%程度に抑え込み続けた。

さてこのストーリーの場合クロス締めにした場合どうでしょう。得意のストレートに打てるようになったエースは再び75%程度決めてくる可能性が出てしまいます。かと言って、クロスヒッターという可能性がないということではないのでストレートを閉めることが正解とも限りません。つまりこの情報からでは正解は判断できないということになります。

では実際にはこの状況の時、アナリストはどうするのでしょうか?それはデータで立てた仮説を映像で確認することです。アナリストが数字やグラフ、グラフィックスデータだけを見て戦術を考えていると思っている方も多いかもしれませんが実際は殆どの時間を映像を見ることに費やしてます。データに出てきた現象がどうして起きたのか、自分の立てた戦術が本当に機能するのか、データの落とし穴に嵌まっていないか、こういった確認作業こそがアナリストの本質であり最も重要な部分だと私は考えています。是非、アナリストの普段は表に出ないこんな仕事が裏にあることを考えながらバレー観戦していただけたら嬉しいです。

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