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詩/短歌

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恋することについて

恋することについて

恋をしなさい
と父は言った。
君はますます輝いて
傷ついた心の痛みも
君を輝かせる。

恋なんて
しなくていいよ
と母は言った。
恋をしたらお前はお前でなくなる
お前はどんどん傷ついて
そして誰かを
どんどん傷つける。

西向きの埃っぽい部屋で
冬の陽に当たりながら
コーヒーを煎れる父を見る
震える白い指から香りが立ち登る。
けたたましい声
鵯が窓ガラスの母の影を横切る
庭に向けられた母の鋭い目は

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見たことのないもの

見たことのないもの

見たことがあるものはなんだか落ち着く
ああ、それ知っている。
見たことのないものは落ち着かない
身の置きどころに困って
どこに座ったらいいですか?ってなる。
そのうち誰かが
ここですよ
と教えてくれる。
そうなると落ち着くけれども
馴染みのものになるけれども
あっという間に古くなる
誰かに教えてもらっただけなのに知っている気になる
ほんとうは私なにも知らないけれど。
ハラハラドキドキ時にイライラ

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コロナ禍のいつもの私13 日記

コロナ禍のいつもの私13 日記

9月4日(土)
夏の暑さを冷ます涼しい雨が降っている。
一瞬 
カーッと晴れ蝉が一斉に鳴き出した。
行ってしまう夏に必死にしがみついているみたいだ

9月5日(日)
小刻みに揺れながら
猫がまばたき信号を送って来た
ゴハン ゴハン ゴハン
私はちょっと意地悪して
解読出来ないふりをした
ゴハン ゴハン ゴハン
このあと私の左足に傷三つ出来ました
猫をじらしてはいけません。

9月6日(月)
茶色に

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