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画家 ジョルジュ ルオーとショパンと私の意外な共通点

私が世界で1番好きな曲。
それは、ショパンの即興曲第三番です。
大好きすぎて、一日中無限ループでこの曲を聴いている時があるほど。
何度聴いても飽きないし、聴くほど好きになる。

この曲は、ショパンの生徒でパトロンでもあった、エステルハージ伯爵夫人に献呈されました。
私はお気に入りの音楽ができた時、必ず誰に献呈されたかを確認します。
誰に献呈されたかは、その曲がいい曲であることの次に重視する程、私にとって大切。
どういった経緯で、なぜその人に献呈されたのか、当時の作曲家に思いを馳せる時間が好きなんですよね。言わば、ただの妄想なのですが。
それに、献呈って言う響きが、何だか格好良くて。
作品を献呈することに憧れを感じています。
もしもいつか、自分の作品が認められたなら、世界中の音楽家たちに自分の絵を献呈するのが私の夢です。

そんな即興曲第3番。
Google先生で調べていると、衝撃的な事実が発覚。
続く幻想即興曲はショパンが自分の死後、楽譜を燃やして欲しいと言ったのに、友人が勝手に発表・出版したと言うではありませんか。

もう、はっきり言ってあり得ない行為です。
自分がショパンの立場だったら…2回死んだも同然。決して許されることではありません!
同じく創造する者として、ショパンが本当に不憫でならない。
音楽を演奏する際、よく「楽譜通りに」「作曲者の意図を理解」なんて言いますが、ショパンの思いを汲むなら、この曲は演奏しない方がいいのでは?

と同時に、私は決意したのです。
自分の作品でこの世に残したくない物は、意地でも残さない!
決してショパンの二の舞にはならないと。
それ以来、納得できない作品は、すぐに上から違う絵を描いて全て消すようにしています。
お陰で、現在手元にある絵は3枚のみ。

そして、つい最近。
私と同じような行動をする画家がいたことが判明。
二十世紀のフランスを代表する画家 ジョルジュ ルオーです。
ルオーは超完璧主義者で、一度描いた絵(しかもお店に飾ってあるやつ)を何度も描き直して、数年かけて完成させる程の徹底ぶり。
挙げ句、お店に飾ってあった自分の作品を
「納得できない!売りたくない!」
と言って300枚程燃やしたそうです。(燃やすまでに色々と経緯はありますが…)
その時、世間から変人扱いされたのですが、私はルオーの気持ちがすっごく分かります。
と言うより、表現者は皆そうなのでは?
「この程度でいいや」なんて気持ちで作った作品、良い物のはずがないですよね。

音楽家 ショパンも完璧主義者。
「完全なものだけを出版する」と言っていた彼ですが、死後、無許可の楽譜が街に溢れてしまい、そんな状況を嘆いた友人が、残された楽譜を公式な遺作集として発表しました。
その中の一つが、この幻想即興曲。
この曲を未発表にした理由には諸説あり、憶測が憶測を呼んで色んな説が出回っていますが…
私は、献呈したデステ夫人への、ほんのお礼や挨拶だったのではないかと思っています。
だから、発表しなかった。

と言うのも、私も友人や自分の作品に興味を持って欲しい方がいた場合、過去の小さな習作に手を加えて、メッセージを描いて渡しています。
所謂、ちょっとした献呈と言うやつでしょうか。
ちなみに、習作とは英語でエチュード。
音楽で言うと練習曲にあたります。
(いや、フランス語だったかも)

習作なので、それはそれは実験しまくりで…
本作で描きたい技法なんかを試してみたりする訳です。
それが上手くいったり、綺麗に描けた場合、私はプレゼント用として習作を取っておくのですが、お渡ししたあとも、誰にどんな作品を送ったのかコピーは必ず手元に残します。
だってお渡し後、相手方からせっかく良い反応があっても「どんな作品渡しましたっけ?」じゃ話しにならないですよね。
そこには、作品を見せつけてやろうなんて思いは全くなく、あるのは相手へのお気持ちのみ。
「日頃の感謝」や「こんなテイストの絵を描いてます」とお伝えしたいだけなのです。
それに、過去の習作から新たなヒントを見出す可能性もありますしね。

それが私の死後、「アンナ ブラックの未発表の作品」と言われ勝手に発表されたり、「原本持ってまーす」なんてオークションに出された日には、穴があったら入りたいどころか、二度と出てこれないくらい恥ずかしい…
そもそも、売る気のある作品は必ず世に発表してから誰かに譲ります。すでに売ることが決まっていたとしてもです。
かなり個人的な依頼だとしても、良い作品が描けたら、私ならやっぱり一旦は発表したい…1人でも多くの人に自分の作品を知ってもらいたいので。

自分がルオーやショパンと同じだなんて、烏滸がましいですが…
幻想即興曲が未発表な理由って
「プレゼントだから発表する気がなかった」
の一言に尽きる気がしています。

ショパンの友人がこの曲を発表後、しばらく経ってからオークションに原譜が出されたようですが(それをルービンシュタインが落札)、私の予想では、楽譜と一緒にデステ夫人へ手紙も送られていたと考えます。
その内容は恐らく、日頃の感謝の気持ちや、この曲は発表用に作ったものではないこと、今度良い作品が書けたら、正式に貴方に献呈しますと言ったところでしょうか。
実際夫人は、1836年に出版されたアンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズを献呈されています。
結果、楽譜ではなく、ご都合の悪いこの手紙の方が燃やされてしまったと言うのが、私の推理。

ちなみにこの原譜。
ショパンの友人は原譜の存在を知らなかったと言われていますが、私は知っていたと思いますね。
デステ夫人と友人はグルです!
なーんて、ちょっと妄想が過ぎるでしょうか。

でも、色々な考えや憶測があっていいんですよ。
「謎」って、作品をより美しく魅せるんです。
その作品に謎があればある程、美しい。
レオナルド ダヴィンチの未完作「モナリザ」も、未完と言う謎が、作品の美しさを際立てているのですから。

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