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餃子コミュニケーションズ
ジャンボ餃子というものを買った。いつもは、味の素 ギョーザ 12個入り 398円だから。そうだね、3倍の出費をした。それから3日置いて、テリテリとした赤色の箱を開いてみると、意外にもジャンボではない餃子が現れて。こりゃ買い物失敗ね、ときみと笑い合って、それで、きみと台所に立った。
点がいくつかあれば円が描ける。と、いつかの数学の時間に習ったような気がする。だから、とりあえず点を打って、きみがその点に傷ついてくれたら、私、それならいいなと思っていた。で、先に傷つけられた。気づかないフリが大きく膨らんで、ガス抜きを忘れたフリをして、爆発した。やっちゃった。祈っていて、そうじゃなければいいなって。で、その祈りが裏目に出て、結局そうだったかと落胆したわけ。信じていたから、騙されたと思った。勝手に信じていただけなのに。ね
油を引いて、まるく並べて、隙間をつくるようにと書いてあったけれど、フライパンが小さいからぎゅうぎゅう詰めになっちゃって、水を入れて、蓋を閉めて、待つ。タイマーが鳴って、蓋を開けて、水が引くのを待って、それから、油を回すように掛けて、表面の皮がパリパリになるまで、また待つの。
きみだけに伝えたかったことが幾つもあって、でも、何も伝えられなくて、とりあえず餃子を焼いていた。きみが、餃子を食べるという行為のために時間を費やすように、私も、きみとのこれからのために時間を費やしてきたよ。全てのことが嘘になっちゃって、愛は損でいいなんて、そんなふうに誤魔化せなくてごめんね。
ジャンボ餃子が焼き上がったころ、フライパンにまるく並べた餃子は、本当にジャンボになっていて、それが嬉しくて、ジャンボだね、ときみと笑い合った。信じるということは、裏切られる覚悟があるということ。10個の餃子を、きみが6個食べて、私が4個食べた。小さなことは、譲ることにした。次に裏切られたら、そのときはそのときに考えることする。大人になったね、と言われたら、きみが私を大人にさせたの、と皮肉で返して、それで、きみの腕の中で静かに眠りにつくよ。また、平然と夜が明けて、きみとの生活がたとえ雑になったとしても、細く長く続けばいいなと思う。
だからね、また、ジャンボ餃子、食べようね
約束
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