見出し画像

知られずに、消えゆくものたち。

「127万」ー。この数字が意味するものを、知っているだろうか。

2025年に70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者245万人で、そのうちの半数127万社が後継者未定だとされている。127万社は日本企業全体の1/3に該当し、今後失われる可能性のある中小企業の数だ。

画像1

2020年に休廃業や解散の可能性がある企業は、5万件を超える可能性があるという。昨今のコロナの影響も大きいだろう。

もちろん、廃業するべく廃業する会社もある。赤字の企業や、変化に対応できなかった会社などだ。しかし、廃業可能性がある会社の半数以上が、実は黒字と言われている。つまり、事業を通じて世の中に価値を生み出してきた会社なのだ。独自の技術や製品を持ち、人材を有している。会社や事業は、築き上げるのには時間がかかるが、廃業するのは一瞬だ。時間をかけて、大切に築き上げてきたものたちが、今も一瞬で、失われ続けている。

そして、さらに大切なことがある。それは、創業者や事業に携わってきた人々の「想い」が受け継がれないことだ。過去から脈々と受け継がれてきたものが、未来につないでいきたかったはずのものが、誰にも見向きもされずに、ひっそりと消えていくー。それがとても悲しく、恐ろしい。

日本は人口減少社会だ。だから、受け継ぐ人の数も少なくなる。そして、開業率も5%台と世界的に低い水準だ。また、就職活動や転職活動において、どの企業に勤めるかを考えても、どの企業を受け継ぐかを考える人はまずいないだろう。つまり、事業を承継するということは、働く世代の選択肢にすら入っていない。

仕方がない側面もある。会社の社長という役職は、とにかくリスクが大きい。借り入れに対する個人の連帯保証が求められるためだ。僕は元銀行員だったから内実も多少分かるが、金融機関が本来取るべきリスクを避け続けているせいで、中小企業の社長にしわ寄せが行っている。事業に失敗したら人生が終わる、なんてリスクがあれば、気軽にチャレンジすることは難しいだろう。

状況を変えるには、状況に飛び込んでいく「勇気」が必要だ。勇気とは、あえて危険をおかす能力であり、苦痛や失望をも受け入れる覚悟を持つことでもある。安定した場所を飛び出し、約束されたものを捨て去り、覚悟の上であえて危険をおかす。とても難しいことだが、自分を信じ、未来の可能性を信じて進むことでしか、未来は切り拓けない。

受け継いで欲しい人と、受け継ぎたいと思った人が、お互いの手を取り合えたら、それはすごく素敵なことだ。誰かの想いが、誰かに受け継がれ、また新しい誰かへと受け継がれていくー。その先にこそ、豊かな未来があると僕は信じている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?